儚くも強く、
水無月七日、躑躅―fragility
ひとつ、また家が消える。
「行っちゃったなあ…」
しずかな声ゆれる風、木洩陽やわらかな横顔が青い。
おだやかな哀惜ゆれる道、たたずんだ樹影に訊いた。
「さびしい?」
「うん…」
隣こくり頷いて、視線すこしだけ近くなる。
すこし前もっと近かった瞳に見つめて、すこし微笑んだ。
「それでも、ここが好きでしょう?」
ひとつ、ひとつ家が消えてゆく。
それでも離れられない想いに隣が笑った。
「好きだよ、そっちもだろ?」
「うん、」
笑い返して大樹の翳、青い道ゆく車影が遠のく。
トラックはしらすエンジン音もう聞こえない、そうして消えてゆく一軒に君が言った。
「だから最後までいるよ、だから…」
しずかな声ゆれる風、青葉あわく光る。
頬ふれる風ほろ甘く渋く涼ませる、その掌そっと掌つなぐ。
「最後までいるよ、おんなじに、」
同じ、だから今も共に見送る。
こんなふう送る六月の道、朱色しずかに夏が咲く。
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6月7日の誕生花ツツジ
水無月七日、躑躅―fragility
ひとつ、また家が消える。
「行っちゃったなあ…」
しずかな声ゆれる風、木洩陽やわらかな横顔が青い。
おだやかな哀惜ゆれる道、たたずんだ樹影に訊いた。
「さびしい?」
「うん…」
隣こくり頷いて、視線すこしだけ近くなる。
すこし前もっと近かった瞳に見つめて、すこし微笑んだ。
「それでも、ここが好きでしょう?」
ひとつ、ひとつ家が消えてゆく。
それでも離れられない想いに隣が笑った。
「好きだよ、そっちもだろ?」
「うん、」
笑い返して大樹の翳、青い道ゆく車影が遠のく。
トラックはしらすエンジン音もう聞こえない、そうして消えてゆく一軒に君が言った。
「だから最後までいるよ、だから…」
しずかな声ゆれる風、青葉あわく光る。
頬ふれる風ほろ甘く渋く涼ませる、その掌そっと掌つなぐ。
「最後までいるよ、おんなじに、」
同じ、だから今も共に見送る。
こんなふう送る六月の道、朱色しずかに夏が咲く。
躑躅:ツツジ、花言葉「節度、慎み」赤いツツジ「恋の喜び」
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