萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

THE NARROW ROAD TO OKU

2019-02-25 23:35:04 | 文学閑話散文系
ROAD TO OKU 敬愛をこめて
文学閑話:鬼怒鳴門 キーン ドナルド博士



キーン先生が亡くなられた、

松尾芭蕉「奥の細道」を読むんなら?って訊かれたら、
ドナルド・キーン訳『おくのほそ道 THE NARROW ROAD TO OKU』がおススメと自分は答えます。
講談社学術文庫から『英文収録 おくのほそ道』として発刊されているんですけど、ソレです。

たとえばタイトル『奥の細道』を「Road to OKU」にしているトコ。
これが「Road of OKU」じゃないってトコが日本語というか・やまとごころってヤツの表現がすごいなと。
たとえば「光」を表現するにも「beam」にするのか「gleam」なのか「shine」なのか?
この3つは光の風景が全く違うワケで・ソレをちゃんと訳してくれている。

そうした訳し方から「奥の細道」の情景がはっきりわかる、
ソレダケではなく講談社学術文庫『英文収録 おくのほそ道』はキーン先生の解説も載っているのでカナリ解りやすい。
この一冊からだけでもキーン先生の日本愛がナマハンカじゃないんだなってコトが伝わってきます。

「日本語と日本文学を正しく教えられる人が育ってほしい」

そんなふう仰っていたキーン先生はまた、日本の大学入試問題にも疑問を呈されていました。
たしかに・センター試験からして文学力を問うというよりクイズみたいになっちゃってるし、笑
そーゆー試験問題に自分も受験生当時おんなじ疑問を持ったので、そこらへんも親しみカンジます。

キーン先生は太平洋戦争のとき、日本兵の手紙をチェックする担当を務めたそうです。
そこに綴られている日本兵の想いに、当時ご自身も青年だったキーン先生は上官の命令に背いたのだとか。
本来は処理しなくてはいけなかった手紙たちを、密かに保管して隠していたそうです。
手紙を遺していった誰かの父親で息子で夫で恋人たち、その想いを宛先に届けたいと。

その手紙はキーン先生が任務中の隙に発見され、処分されてしまったそうです。
そのことを「今も心残りだ」と日本に帰化された時の講演でも話されていました。

太平洋戦争後、日本は敗戦国として様々な日本否定に曝されたんですけど、
そんな中でも日本文学を愛し日本を助けようとしてくれた学者サンもいました。
学問を通して救済と敬愛に平和を願おうとした研究者たち、その姿こそ学者の本分だと。
ノーベル博士の目指したコト鑑みても、ノーベル文学賞はそういう学者たちに贈られるべきだろー思います。

そんな一人だったキーン先生の死は、大先輩で恩人で恩師が消えた空虚感です。
そうしてまた、懐かしくなります。


撮影地:富士山×山中湖@山梨県山中湖村2013.10、八島湿原@長野県2018.8

PVアクセスランキング にほんブログ村
にほんブログ村 写真ブログ 山・森林写真へにほんブログ村
純文学ランキング
著作権法より無断利用転載ほか禁じます
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

早春の森、福寿草

2019-02-25 19:26:00 | 写真:花木点景
早春ひらく、森あわい光ためて。
花木点景:フクジュソウ福寿草×モノクロ


雪まだ残る森の底、春さきがける福寿草の光はモノクロが映えるかなあと、笑
撮影地:払沢の滝@東京都檜原村2017.3

PVアクセスランキング にほんブログ村
にほんブログ村 写真ブログ 山・森林写真へにほんブログ村
純文学ランキング
著作権法より無断利用転載ほか禁じます
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする