はるかな約束に、

師走十一日、白薔薇―Innocent Promise
頬ふれる、冷たい朝とひとつの香。
「あ、この花よ?」
大叔母ふわり微笑んで、息ひとつ凛と白い。
まだ明るんだばかりの庭、霜柱さくり踏んで花を見た。
「ん…いいかおり、」
声こぼれて甘く澄む、唇かすめて香らせる。
おだやかで静かな初冬の朝、たたずんだ花にアルト微笑んだ。
「でしょう?斗貴子さんはこの香が好きだったのよ、」
祖母の従妹が微笑む、その口もと皺ひとつ柔らかい。
見つめてくれる瞳まっすぐ聡明で、はるかな面影に笑いかけた。
「僕も好きです、」
好き、ただ素直な想い香があまい。
ひそやかな静謐あざやかな庭、アルトの追憶そっと微笑んだ。
「やっぱり似ているのね、なつかしいわ、」
なつかしい、そう微笑んで面影やわらかい。
写真でしか知らない、それでも声が眼差しが遠い少女を映しだす。
今たたずむ木洩日の底、白皙やさしい横顔に笑いかけた。
「なつかしいのは、祖母と僕が似ているからですか?」
似ている、そんなふう父も教えてくれた。
その父も知らない時間のひとは、瞳あざやかに微笑んだ。
「そっくりよ、こんなおばあさんが少女に戻されそうなくらいにね?」
アルトほがらかに笑ってくれる、その瞳が僕を映す。
ほがらかに凛と澄んだ朝の底、見つめる追憶に花を見た。
「祖母の手紙にもありました、子どものころから好きって、」
「いちばんのお気に入りだったわ、特によく手入れしてたもの?」
語りかけてくれる庭、ふれる木洩陽やわらかに甘く澄む。
香る花びら穏やかな光の色、素朴な願い微笑んだ。
「僕も大切にします、花も、庭も、」
小春日和のまんなかで、あなたの花が咲く。
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12月11日誕生花シロバラ白薔薇

師走十一日、白薔薇―Innocent Promise
頬ふれる、冷たい朝とひとつの香。
「あ、この花よ?」
大叔母ふわり微笑んで、息ひとつ凛と白い。
まだ明るんだばかりの庭、霜柱さくり踏んで花を見た。
「ん…いいかおり、」
声こぼれて甘く澄む、唇かすめて香らせる。
おだやかで静かな初冬の朝、たたずんだ花にアルト微笑んだ。
「でしょう?斗貴子さんはこの香が好きだったのよ、」
祖母の従妹が微笑む、その口もと皺ひとつ柔らかい。
見つめてくれる瞳まっすぐ聡明で、はるかな面影に笑いかけた。
「僕も好きです、」
好き、ただ素直な想い香があまい。
ひそやかな静謐あざやかな庭、アルトの追憶そっと微笑んだ。
「やっぱり似ているのね、なつかしいわ、」
なつかしい、そう微笑んで面影やわらかい。
写真でしか知らない、それでも声が眼差しが遠い少女を映しだす。
今たたずむ木洩日の底、白皙やさしい横顔に笑いかけた。
「なつかしいのは、祖母と僕が似ているからですか?」
似ている、そんなふう父も教えてくれた。
その父も知らない時間のひとは、瞳あざやかに微笑んだ。
「そっくりよ、こんなおばあさんが少女に戻されそうなくらいにね?」
アルトほがらかに笑ってくれる、その瞳が僕を映す。
ほがらかに凛と澄んだ朝の底、見つめる追憶に花を見た。
「祖母の手紙にもありました、子どものころから好きって、」
「いちばんのお気に入りだったわ、特によく手入れしてたもの?」
語りかけてくれる庭、ふれる木洩陽やわらかに甘く澄む。
香る花びら穏やかな光の色、素朴な願い微笑んだ。
「僕も大切にします、花も、庭も、」
小春日和のまんなかで、あなたの花が咲く。
白薔薇:シロバラ、花言葉「純潔・清純、深い尊敬、無邪気・素朴、
恋の吐息、相思相愛、約束、少女時代」
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