冬の朝、陽だまりの君に
師走二十三日、寒菊―luminous intensity
可憐、けれど寒風に咲く。
あわく甘く、清廉に香らせて。
「洗濯機って、ありがたいわね、」
シーツ翻って君が笑う、ほころんだ口もと皺が深い。
あの深さだけ笑ってきた、その瞳に微笑んだ。
「そうだな、今なら川を好きになれるかい?」
問いかけた口もと朝陽が冷える、この寒風こそ懐かしい。
もう遠くなった川のほとり、洗濯もの抱えていた少女が笑った。
「あのころも好きだったわ、夏は特にね?」
ほら君が笑う、遠い追憶そのままだ。
今は銀色あわく光る髪、けれど変わらない朗らかな瞳に縁側を立った。
「でも冬は、君の手はあかぎれだらけだった、」
からん、庭下駄からり霜を踏む。
指先しんと浸される風、エプロン姿の手をとった。
「あらあら、照れるわ?」
メゾソプラノ笑ってカーディガン翻る。
冷えた手つないだまま見つめて、妻の指輪そっとふれた。
「あかぎれの痕、残ってるんだな、」
結婚指輪やわらかに光る指、付け根あわく朱が残る。
もう遠くなった幼い冬の時、それでも傍にいる笑顔がほころんだ。
「もう痛くないわ、」
「うん、」
頷いて見つめる真中、妻の眼もと皺やわらかに畳む。
あの日も君は笑って、かすかな甘い香ゆるく澄みきった。
「僕こそ、だよ?」
想いひと言、でも朗らかな瞳ほころんでくれる。
こんなふう出会った日も微笑んで、この明るさに自分こそ救われた。
「ありがとう、」
微笑んで、寒風かろやかに眼差し明るい。
そうして想い続けた果ては、清廉にも甘やかな陽だまり光る。
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12月23日誕生花カンギク寒菊
師走二十三日、寒菊―luminous intensity
可憐、けれど寒風に咲く。
あわく甘く、清廉に香らせて。
「洗濯機って、ありがたいわね、」
シーツ翻って君が笑う、ほころんだ口もと皺が深い。
あの深さだけ笑ってきた、その瞳に微笑んだ。
「そうだな、今なら川を好きになれるかい?」
問いかけた口もと朝陽が冷える、この寒風こそ懐かしい。
もう遠くなった川のほとり、洗濯もの抱えていた少女が笑った。
「あのころも好きだったわ、夏は特にね?」
ほら君が笑う、遠い追憶そのままだ。
今は銀色あわく光る髪、けれど変わらない朗らかな瞳に縁側を立った。
「でも冬は、君の手はあかぎれだらけだった、」
からん、庭下駄からり霜を踏む。
指先しんと浸される風、エプロン姿の手をとった。
「あらあら、照れるわ?」
メゾソプラノ笑ってカーディガン翻る。
冷えた手つないだまま見つめて、妻の指輪そっとふれた。
「あかぎれの痕、残ってるんだな、」
結婚指輪やわらかに光る指、付け根あわく朱が残る。
もう遠くなった幼い冬の時、それでも傍にいる笑顔がほころんだ。
「もう痛くないわ、」
「うん、」
頷いて見つめる真中、妻の眼もと皺やわらかに畳む。
あの日も君は笑って、かすかな甘い香ゆるく澄みきった。
「僕こそ、だよ?」
想いひと言、でも朗らかな瞳ほころんでくれる。
こんなふう出会った日も微笑んで、この明るさに自分こそ救われた。
「ありがとう、」
微笑んで、寒風かろやかに眼差し明るい。
そうして想い続けた果ては、清廉にも甘やかな陽だまり光る。
寒菊:カンギク、花言葉「繊細、けなげな姿、真の強さ、忍ぶ恋」
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