※R18(露骨な表現はありません)
約束、愛であわせて

secret talk9 愛逢月act.4―dead of night
帯解けの色、こぼれだす。
瑠璃色の帯はやわらかに解かれ、床に川が流れおちる。
うつくしい青紫の色彩は木目を流れ、掌から絹は落ちていく。
解かれた帯に白い衿ゆるまれて、そっと淑やかな手が衣のあわせ押えてしまう。
その掌をふたつながら捉えると、長い指に絡めながら英二は羞む瞳に微笑んだ。
「隠さないで、周太…絶対の約束を結ぶんだろ?」
「…はい」
素直に答えて長い睫が伏せられる。
気恥ずかしげな睫にあわい光きらめく、まばゆい貞淑が目を奪う。
自分と同じ23歳の男、それなのに初々しい清楚が見つめる貌から立ち昇る。
―狂わされる、こんなのは
心の本音に、ひそやかな溜息こぼれてしまう。
薄紅そめあげる肌は艶めいて、血潮から羞んでいる純潔が輝きだす。
洗練された筋肉のラインは華奢な骨格にしなやかで、少年のままの肢体が衣透かして見惚れてしまう。
見つめる視線に気恥ずかしがる心と体を白い薄絹に隠す、その清楚な艶に長い指をのばした。
「…あ、」
かすかな躊躇いの声、けれど指は白い衿にかけられ衣は肌すべる。
くつろげられ肩からおとされる薄絹、なめらかな素肌がランプ映して淡く光りだす。
白いベッドの上、しなやかな裸身が夜に晒されていく、恥らう吐息が唇こぼれて血潮は肌を染めあげる。
絡めとる白い衣をぬきとり、艶やかな床に薄絹の雲ひろがりゆく。そこに高峰の雲海を見つめて英二は微笑んだ。
「周太、見て?…周太の浴衣、雲海みたいだよ。帯は海と似てる…きれいだ、」
「…ん…」
言葉に短く答えて、薄紅の微笑が見つめてくれる。
もう何も纏わぬ裸身があわいランプに艶めかせて、自分の腕のなか横たわす。
これから望むまま、この肌に心に想い刻みこむ時間は始まっていく。それが幸せで英二は綺麗に笑いかけた。
「周太、絶対の約束をするよ?…来年の夏は北岳草を一緒に見に行く、その約束だよ?」
北岳草、世界に一ケ所にしか咲かない花。
北岳、この国の第二峰「哲人」の名を持つ高潔な山。
そこに氷河期から悠久の時に抱き続ける、白い小さな花が咲く。
冷厳の時代を超えても可憐に咲いた純白は、この恋人とよく似て愛しかった。
あの花を抱く山懐を、自分も備えて恋人を永遠に抱き続けていきたい。そんな願いに恋人の唇は、そっと披かれた。
「北岳草…必ず、見せて?お願い、英二」
穏やかな声が約束を告げて、黒目がちの瞳が微笑んだ。
この瞳に恋して自分の全ては始まった、この恋愛への想い綺麗に微笑んで、英二は誓いのキスをした。
「約束する、周太…だから離れないで、」
想い籠めて重ねた唇に、オレンジの吐息あまやかに触れる。
やわらかな温もり優しくて、愛しいまま唇を深く重ねて想いの熱を唇の奥へと注ぎ込む。
ためらう羞みに熱からめて恋し愛する想いを伝えてしまう、この心ごと繋ぎ留めたくて、自分の帯に指を掛ける。
直ぐ解かれていく結び目に、抱きしめる肌を求めて口づけるごと、浴衣の衿とけて肩が露になっていく。
「きれいだね、周太は…全部、キスしたい」
「…っ、あ…え、いじ…」
言葉と触れる唇に、愛しい唇から吐息こぼれだす。
耳元、首筋、鎖骨、胸元なめらかな素肌をたどり、腰へと唇を辿らせる。
そして若草の繁みにふれて、やわらかな花芯を唇と舌とでふくんだ。
「…あっ」
声が上がり、のけぞる喉がむこうに見える。
咥えこみふくむ肌はふるえて、それでも少しずつ固く存在を増す。
抱き寄せた腰は怯えたよう竦んで、それでも逃げずに唇と舌を受けとめ、委ねて動じない。
この信頼と想い幸せに微笑んだまま、もういちど唇に含んでキスすると静かに解放した。
「周太、気持ち良かった?…こういう口でするのはね、フェラって言うんだよ?俺以外にさせたら、絶対ダメだよ?」
「…はい、」
気恥ずかしげに答えて、黒目がちの瞳が見つめてくれる。
すこし潤んだ瞳が愛しくて可愛い、見つめながらサイドテーブルに長い指伸ばして英二は、冷たいコップを手に取った。
ガラスの縁につけた唇に水滴ふれて、冷たいレモンの香が喉をおりていく。
飲みこんでほっと息つくと、愛しい声がちいさくつぶやいた。
「…えいじもしてほしい?」
いま、なんとおっしゃいました?
今の言葉は幻聴だろうか?
この自分が求める望みが生んだ、幻が喋ったのかも?
そんな想いと見つめた視界の真中で、潤んだ黒目がちの瞳が見つめて訊いてくれた。
「あの…えいじもいまの、してほしい?」
「…してくれるの?」
ほんとうに?
そんな信じられない想いに訊き返す、その先で長い睫が恥ずかしげに伏せられる。
すこし厚い唇かみしめ羞んだ薄紅が少年の肢体を染めあげて、吐息のあと言葉は伝えられた。
「ん…えいじがそうしたかったら…ね」
「周太、」
名前を呼んで抱き寄せて、愛しい瞳を覗きこむ。
ゆるく長い睫はあげられて、見つめ返す黒目がちの瞳は恥らいにも熱ふくむ。
ひどく恥ずかしそうな瞳は貞淑まばゆい、こんな綺麗な目に自分の快楽へ奉仕させてしまう?
それが酷く背徳的で罪悪感を見てしまうのに、甘すぎる誘惑に堕ちたくて仕方ない。
―なんか、すごくいけない感じだけど。でも、してほしいな
それはしてもらったら、さぞ嬉しくて堪らない。
きっと興奮してしまう、ちょっと鼻血噴かないか心配だな?
そんな色々を考えながらも微笑んで、少年のままの恋人へと英二は問いかけた。
「すごく嬉しいよ、周太?でも本当に良いの?」
「ん…うれしいって思ってくれるなら…してあげたい、」
恥ずかしそうなトーンが答えて、赤い貌が微笑んでくれる。
こんな貌されたら嬉しくて仕方ないのに?
「うれしいよ、でも、周太は仕方とか解かるの?」
「ん、…わからないけど、でも…」
質問に長い睫が恥ずかしそうに伏せられる。
すこし言いよどんだ唇、そっと開かれると羞んだまま言ってくれた。
「おしえて?…どうしたら英二がきもちよくなるか、おしえて?」
そんなお願いうれしすぎます。
こんなこと「おしえて?」なんて言ってもらえるなんて?
こんなの本当に「美少年に性のレッスン」本番って感じだろう?
こんな幸せなことあっていいのかな?そんな想いに鼻から口許に手を当て、その掌を見ると血痕は無かった。
掌に笑って少年の肢体を抱きしめると、そのまま反転して英二は下から恋人を見上げて笑いかけた。
「教えるよ、周太、」
「…はい、」
恥ずかしげな微笑が上から見おろしてくれる。
この視点は初めてになる、いつも英二が上から覆い被さっているから。
こんなことも幸せで嬉しくなる、きれいに笑いかけた英二に黒目がちの瞳は微笑んで、そっと首筋にキスしてくれた。
「…ぁ、」
吐息こぼれて、首筋に感覚が滲みだす。
ぎこちない唇はゆっくり肌すべっていく、その初々しいキスに、萌える。
見つめる先でやわらかい黒髪ゆれて肌ふれる、その表情を見たくて長い指からませ前髪をかきあげた。
「…ん?」
かきあげた前髪に顔をあげて、黒目がちの瞳がこちらを見た。
その瞳は貞淑な恥らい滲んで頬は赤い、清楚な色香と深い艶がまばゆく見つめてくれる。
あまりに初々しい貌、無垢のまばゆさに自制心が半分折られて心ときめいた。
―こんな貌でしてくれてるんだ?
かわいい、どうにかなりそうに可愛い。
こんな貌は絶対に他には見せられない、こんな無意識の誘惑は強すぎる。
そんな思いに心配がまた大きくなる、こんな貌は他ではどうか見せないでいて?
「可愛いね、周太…こんなこと、他のヤツには絶対しちゃダメだよ?」
「…はい」
恥ずかしげに頷くと俯いて、そっと唇が肌ふれる。
やわらかな温もり肌おりていく、ゆらめく髪くすぐらす皮膚に血が逆流しそう?
すこしの感触にも悦びが肌ふるわす、ぎこちない唇の熱を見つめ、幼けない愛撫に身を委ねていく。
―こんな子供みたいな相手に、感じるなんて
吐息まじりに思う本音に、心が喜んでいる。
途惑うような掌が肌ふれて、拙くて優しい唇と舌が肌をなぞっていく、その全てが嬉しい。
初々しい純潔が自分を求めて、無垢な性愛が懸命に与えようとする快楽に支配されていく。
悦ぶまま見つめる想いの真中で、やわらかい黒髪が腰の下へとふれて鼓動が心を打った。
「…っ、ぁ、」
こぼれた吐息の向こう、体の芯が温もりに呑まれた。
あまい熱が包みこむ、やわらかに舐められていく感覚が背すじを奔らす。
ぎこちない愛撫、けれど甘やかな悦楽こみあげる溜息に英二は微笑んだ。
「…周太、きもちいいよ…きもちよくて変になりそうだ」
「…ん…」
唇ふれさせるまま答えて、あまく絡まる熱が心奪う。
この無垢な恋人が今、自分の体を悦ばせようと唇を動かしてくれる。
ぎこちない唇が愛しくて幸せなまま、ふれる黒髪を長い指に絡めて掻きあげた。
「しゅうた…っ、ぅ…かわいいね、…もっときもちいいこと、してくれる?」
「ん…はい…」
そっと唇離れて、黒目がちの瞳が見つめてくれる。
自分の腰を抱きしめて首傾げさす薄紅の貌、無垢のまま羞んだ眼差しが愛しくて、求めたい。
そして自分も与えてあげたい、その願い微笑んで英二は無垢な恋人を見上げた。
「おいで、」
笑いかけて身を起こし、長い腕伸ばして初々しい体を抱き寄せる。
見上げてくれる唇が濡れて扇情させられる、そのままに唇キス重ねながら、そっと恋人の中心を掌にくるんだ。
「…っ、」
キスのはざま吐息こぼれて、掌のなか震えてしまう。
やさしく握って動かす、その掌に張りが伝わって英二はサイドテーブルから小さなパッケージをとった。
キス離れて、薄いプラスチックを唇くわえて封を切る、またキスに唇かさねながら指に中身とりだした。
それを掌のなかへ纏わせて、ボトルの液体を掌に温めてから丁寧に塗り付けた。
「…っぁ、」
キスの唇から吐息こぼれて、しなやかな肢体が身悶える。
長い睫ふるえ披いて黒目がちの瞳が見つめる、これから何が始まるの?そんな不安の眼差しに微笑みかけた。
「周太、俺のこと気持ちよくしてくれる?」
「…はい、」
素直に頷いてくれる頬は薄紅はなやいで、恥らう瞳は潤んでいる。
初々しい貌に惹かれて「教えたい」想い強くなる、そのままに自分の長い脚を開き、その狭間へと細やかな腰を導いた。
ふれあう互いに恋人の長い睫が伏せられる、その瞳へと英二は綺麗に笑いかけた。
「周太、俺に入って?…俺のこと周太が抱いて、気持よくしてよ?」
言葉に黒目がちの瞳が大きくなって、額まで薄紅昇らせる。
そんなのはずかしい、そう声が聞えそうな含羞の貌は、けれど素直に頷いてくれた。
「…はい……おねがいします」
おねがいします、だなんて可愛い。
いつもは自分が周太の上に乗って体内に導き入れる、でも今回は周太が英二を抱いていく。
もう周太を受入れることは初めてじゃない、けれど身を委ねて「抱かれる」ことは初めて、そして周太も「抱く」ことは初めて。
この「初めて」は自分と周太と両方の初体験、この共にする瞬間への喜びに英二は綺麗に笑いかけた。
「もう準備してあるから、入れてみて?」
「…はい、」
恥ずかしげに頷いて、そっと細い腰を寄せてくれる。
ぎこちない指が奥の窄まりなぞり、微かにふるえる熱が門に当てられる。
ふれる熱の感触に肩で吐息こぼれだす、すこし速い鼓動が心叩いて、英二は唾を飲んだ。
―抱かれるの、こんなに緊張するんだ…
初めての緊張に、体へ力が入りそう?
けれど稚い恋人のため体を緩めておきたい、その想いに深呼吸ひとつで英二は力を抜いた。
自分の体が脱力に和らいでいく、弛緩した筋肉を感じて英二は無垢な恋人に微笑んだ。
「おいで、周太、」
「はい…、っ、」
素直な頷きと同時に、熱が押し入った。
「…っぁ、」
押し入られる感覚に喉が逸らされ、息吐かれる。
吐息の向こうから遠慮がちに熱は入りこむ、押し開かれる鈍痛が這い上る。
ぎこちない腕に腰を抱きあげられて、ゆっくり細い腰ふれる腿に沿うまま近よせられ、深み挿しこむ。
熱くて、ひどく甘い痛覚のなか見上げる恋人は、眉間に快楽の途惑い香らせて黒目がちの瞳が潤みだす。
「…ぁ…えいじ、…っ、」
求めるような困惑の声に、甘く蕩かされる。
こんな声をされたら狂わされる、そんな想い微笑んで指を伸ばし、細い腰を両掌で抱え込んだ。
「ほら周太…うごかしてみて、ゆっくりひいて、挿して?…っ、ぁ、」
両掌で動かした細い腰に、思わず吐息こぼされる。
ぎこちない動きの腰、けれど初々しい律動に逆に奪われてしまう。
全身の上をなめらかな肌が動く、無垢な少年の不慣れな責めあげに脊髄から快楽が奔りだす。
「…っぁ…、し、ゅうた、きもちいいよ…っ…ぁ、ん…」
零れだす声が、自分の声より甘い。
こんな声を自分が出すなんて?そんな途惑いのなか体内に膨らみを感じだす。
その感覚に両掌の細い腰を、すこし速いトーンに動かさせた。
「…ぁ、っえいじ、」
「きもちいい?周太…ほら、こうして速くすると…ね…きもちよくなれる…、っ」
恋人の体が自分のなかで動いていく。
脹らんだ熱が深奥を擦りあげ、感覚が内から意識を犯させ浸しだす。
すこしずつ自主的に動き出す細い腰に身を委ね、そっと英二は体に力を入れた。
「…ぅぁ…っ、」
自分で入れた力に感覚が鋭くなって、吐息こぼれだす。
吐く息が深くなる、体の中から突き上げられて快楽に呼吸が乱れていく。
体内の熱に翻弄されだす、責められる淫靡のまま唇からは、あまやかな声が零れだした。
「ぁ…っぅ…しゅ、うた…っぁ、ぁ…っ、ん…」
こんな声が自分の唇から零れる?
こんな感覚が自分の体を支配する?それが信じられない。
そして身を持って思い知らされる、同じに受容れる事も「抱く」と「抱かれる」の差は大きい。
こんなこと自分が赦すだなんて考えたことがなかった、誰かに自分の体を任せるなど嫌忌だった。
それなのに今、稚い少年のような体に全てゆるして、させるがまま感覚に恋を見つめて吐息こぼれだす。
「…え、いじ…きもちい、い?」
聴いてくれる声が煩悶に愛おしい。
可愛くて愛しくて、やわらかな黒髪を見上げて華奢な肩に腕をまわした。
「…っ、きもちいいよ、しゅうた…っ、ぁ、」
「ほんとにきもちいい?…ちゃん、と…できてる?」
見つめて訊いてくれる貌が一生懸命で、無垢のまま艶めかしくて、愛しくなる。
こんな純粋なセックスが自分に施されていく、その現実が体の芯を貫いて溺れだす。
「できてるよ?…っぅ…おいで周太、おれを、だきしめて…」
しがみつくよう少年の肩を惹きこんで、腰から腹に素肌ふれあい温もり交わされる。
ふたつの体温のはざま中心がくるまれ、なめらかな肌に揺らされるまま雫こぼれる自覚が襲う。
ぎこちない腕が肩を腰を抱いてくれる、体の芯が熱く甘く蕩かされて、深く快楽が滲みだす。
少年の吐息と微熱に揺らがされる視界、頬ふれる黒髪ゆらめく彼方に薄闇の天井が映りこむ。
―こんな景色をいつも、周太は見ている…
今、この瞬間を抱かれて見上げる天井、すこしずつ強くなる抱擁の腕、艶めいていく吐息の聲。
ゆらぐ熱に犯され溺れていく体と心、今、初めての感情に染めあげられ血潮の熱がめぐりだす。
こんな景色をいつも見て、こんな感覚を奔らせて、いつも恋人は自分に抱かれてくれていた?
そんな思考にまたひとつ理解と想いが生まれだす、身を委ねる意味と祈りと感情が解かりだす。
こんな想いを自分は知らなかった。愛しさに狂わされそうな想いごと、英二は自分を抱く愛しい体を抱きしめた。
「っぁ…しゅうた、おれをだいてるよ?…おれをあじわって、かんじて?…っ、」
感じてほしい、自分のこと。
そして抱くことを感じてほしい、大人の男としての体験を与えたい。
本当なら女性で経験することだろう、けれど周太は英二としか体交わさない。
それが嬉しくて、だから敢えて女性の代わりに抱かれることすら歓びになってしまう。
「えいじ……ぁ、」
呼んでくれる名前、オレンジの吐息が熱い。
見おろしてくれる悩乱の貌に恥らい揺れて、その瞳の熱に貫かれる。
うかされる熱愛しいまま唇ふれて、求めてくれる眼差しに微笑んだ。
「かわいい、しゅうた…ぁ…だくの、も…きもちいい、だろ…?」
「ん…っ、きもちい……」
素直に応えてくれる声、微熱に艶めく。
見つめてくれる瞳の深みから、大人びた熱情が愛でるよう自分を映す。
こんな瞳は初めて見る、少年の羽化するような眼差しに熔かされていく、意識ほどかれ熱くなる。
こんなふうに抱かれて無垢から愛される、その酷く甘すぎる幸福に微笑んだ向こう、微熱の声が問いかけた。
「えいじ…これでだいじょ、ぶ?」
心配そうな質問に、瞳の幼さが映される。
やっぱりまだ少年、同じ齢でも心は稚い恋人が切なくて、愛しいまま綺麗に笑いかけた。
「っ…だいじょうぶ、しゅうた…じょうずだよ、かんじすぎてへんになりそ……おいで?」
吐息の硲に微笑んで、誘うよう体を濃く添わせて腰をゆらす。
その声に縋るよう愛しい声が、切なげに訴えてくれた。
「えいじ、…っ、ぁ、もう…」
黒目がちの瞳が潤んで見つめてくれる、その貌は羞恥と快楽に薄紅そまる。
この稚い恋人が、この自分の体で「大人の男」がする行為を覚えてくれる。
こんなことまで自分が全て教えてあげられた、その悦びに英二は綺麗に微笑んだ。
「おいで、周太?…ひいて、深く、いれて?…」
「はい…」
素直に頷いて、言われた通りに細い腰は動く。
大きくスライドする熱に責められて吐息こぼれる、犯される感覚が背すじ震わす。
この体の奥深くに愛しい少年を受けとめ、受容れて、ずっと永遠に抱いていたい。
そんな願いのまま委ねる体の上、求めるよう細い腰は動き、しなやかな体が大きく震えた。
「あっ…ぁ、ぁ…っ、」
切ない声あがって、恋人の体は動きを止める。
その腰を深く惹きこんで、英二は体に力を入れた。
「ぁああ…っ、ぁ、え、いじ…」
力尽きるよう少年の体ゆらいで、なめらかな肌から力が抜ける。
しなだれる熱に全身が覆われる、深く入れられた内に熱の鼓動が波打っていく。
肌ふれる熱と内こみあげる熱に、芯から膨れあがる熱が重なる肌のはざま、迸った。
「っ、あぁっ…っ」
声、喉つきあげて脊髄を奔る。
重ねた肌に滴らす熱が、少年と自分に絡まり肌繋ぎあわす。
身の内に納めたままの熱と自分の芯に拍動が熱い、肌から蕩かされ奪われる。
「…ぁ、しゅうた…、っ」
すがるよう抱きしめた背中、あわい雫の気配が温もりに濡らす。
抱きしめてくれる肩は吐息にゆらいで、快楽の名残り波打つまま熱と凭れこむ。
初々しい肩に唇よせてキスの刻印をする、舌ふれる汗の甘さに薄紅の痕を残して、愛しい顔に頬よせた。
まだ溺れたままの快楽に乱される吐息のまま、英二は綺麗に微笑んだ。
「…っは……ぁ…、しゅうた…っ、…きもち、よかったよ…」
「ぁ…ほんとう?」
吐息に訊いてくれる、潤んだ瞳には瑞々しい羽化の自信が明るく羞んでいる。
この自分を抱いて「大人の男」としての体に自信を抱いた、そんな喜びが明るく見つめてくれる。
そんな瞳うれしく見つめて、自分の肌覆う少年の背中を静かに撫でた。
「…ほんとうだよ、…周太に抱かれて、おかしくなりそうだった…こんなこと初めてだよ、周太?」
撫でる背中を滲ます汗を、ランプの光が濡らして淡い。
見つめてくれる瞳は無垢なまま微笑んで、そっと唇を重ねてくれた。
くるんでくれる唇はオレンジ香らせて、ついばむようなキスから熱すべりこみ、恋がふるえた。
―キスが…熱くなってる
あまやかな熱は静かなままに、けれど前より鮮烈な微熱が唇ふさいでくれる。
どこか大人びたような熱に蕩かされる、こんなに自分の体が恋人を大人に近づけた?
そんな想い目映いままキスは離れて、黒目がちの瞳が気恥ずかしげに微笑んだ。
「英二…すごくきれいだった、よ?」
キスの唇が微笑んで、羞みながら自分を見つめてくれる。
無垢な恋慕は変わらない、けれど抱いた相手へ求める微熱の気配に、大人の男は艶まばゆい。
こんな瞳で見つめてくれる、ずっと求めてほしかった願いが充たされた?この喜びに英二は綺麗に微笑んだ。
「周太…犯されるのは俺、これが初めてだよ…?」
この自分が誰かに犯される。
そんなこと誰にも許さなかった、この自分の体に相手を入れるなんて許せない。
それはパートナーの光一にすら拒む、この先、光一を抱くことはあっても抱かれることは無い。
けれど、この少年のまま無垢な恋人には自分を与えたかった、この身で「大人の男」の経験をさせてあげたかった。
その願いを今遂げられた、嬉しくて英二は綺麗に笑いかけた。
「俺のこと抱いたのは、周太が初めてだよ?…これだけは他の誰にもさせない、周太だけだ、」
これは本当だよ?
この身この心を抱かせて犯させるのは唯ひとり、君だけ。
そう見つめた先、潤んだ黒目がちの瞳から涙ひとすじ伝う。
ほら、こういうときなら涙見せてくれるんだ?嬉しくて笑いかけた英二に、愛しい声は微笑んだ。
「ん…ありがとう、英二?」
気恥ずかしげな瞳が見つめて、すこし微笑んでくれる。
やさしい無垢な笑顔うれしくて、抱きしめて英二は綺麗に笑いかけた。
「初めてをあげたよ、周太。だから約束してよ、来年の夏は一緒に北岳に登る約束を、絶対に守ってよ?」
来年の夏、一年後への約束。
この一年後にも幸せな時間を共にする、その約束をどうか結んで?
(to be continued)
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