萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

卯月二十八日、梅桃― twilight of the morning

2021-04-30 00:51:10 | 創作短篇:日花物語
曙光、花咲く実りへ
4月28日誕生花ユスラウメ


卯月二十八日、梅桃― twilight of the morning

朝陽が昇る、木洩日に慕わしい。

「教授、おはようございます、」
「おはようございます、」

微笑んでたどる時間、あいさつ交わす学生たち初々しい。
あの時間どれだけ今は経たのだろう?透ける樹影たどる道、キャンパスが響く。

「おう、1限から?」
「2限だよ、その前に図書館ちょっとさ、」
「あの演習のテキスト買った?」

ソール敲く道、弾んだ声たち聞こえてくれる。
毎春から一年いくども聴くだろうな?若葉やわらかに薫る風、あちらの声が笑う。

「シラバスよりも、だったろ?」
「うん、講義のほうが良かった。取って正解だな、」

講義取得の話題、これは新学期ならではだな?

「サークルは決まった?」
「うーん、ワンゲルもいいけどTUSACやっぱりなあ」

ああ、サークル部活動なら新入生だろう?
こんな会話はるかな時間、この隣たしかに君はいた。

『なあっ、あんたアルパインやってんだろ?一緒に行くぞ、』

面影そっと響いて笑う。
あんな時間を自分も生きた、その涯に今ここを歩む。
けれど「結実した」ともう言える?

「ん…途中だな?」

微笑んだ言葉ほら、背すじ静かに伸ばす。
すこし上げた視線に花が映る、その先はるかな空が青い。

「青いなあ…」

青く深く高く、そうだ、この涯はまだ遠い。


梅桃:ユスラウメ、花言葉「輝き、郷愁、ノスタルジー、貴び」

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