幸せを輪にして、
霜月十六日、白詰草― promise
黄金ふる、秋染める森に大地の星。
「わぁ、きれい!」
習字カバン提げた君が走る、かたこと硯が文鎮が鳴る。
ならんで踏み出して草が匂う、ほろ甘い涼んで、それから落葉ほろ甘い。
「ほんと、いっぱい咲いてるねっ!すごーいっ、」
ソプラノきらきら弾んで立ち止まる、赤いスニーカーに小花が白い。
ちいさな花あふれる緑一面、かすかな甘い香へ座りこんだ。
「すごいねえ、ずーっと咲いてるね?」
「この奥までずっと咲いてるよ、」
答えながらスニーカーのくるぶし、草の香そっと冷たい。
頬ふれる風かすかに甘く冷たく額かすめる、朱色かたむく木洩日に言った。
「ほら、日暮れまで時間ないぞ?探すんなら早くしろよ、」
秋は日暮れが早い、森なら尚更すぐ暗くなる。
そんな午後かたむく光の森、幼馴染は肯いた。
「うんっ、がんばるね、」
黒目がちの瞳くるり笑って、ちいさな指が緑に埋もれる。
横顔まるい頬ふわり照らされて、睫きらめく底まっすぐ花を映す。
―ずいぶん真剣だな?
見つめる真ん中、まるい頬やわらかに薔薇色そまる。
こんなに一生懸命なのは何故だろう?
「なんでソンナに見つけたいわけ?」
「ん?」
尋ねた先、横顔がふりかえる。
朱色やわらかな木洩陽の底、黒目がちの瞳すこし細めた。
「ひみつ、」
細めた瞳ちょっと笑って、また草花へかがみこむ。
小さな花と緑の葉かきわけて、横顔あわく木洩陽に浮かぶ。
「ふーん、ひみつなんだ?」
問いかけて、それでも横顔ちょっと笑って振りむかない。
それだけ大事な「ひみつ」で大切なのだろう?
―しかたないなあ、つきあってやるか?
心裡ひとりごと、ほら指先もう葉をかきわける。
白い小花のもと葉を数えて、唯ひとりの横顔ふりむかせたくて。
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11月16日誕生花シロツメクサ白詰草
霜月十六日、白詰草― promise
黄金ふる、秋染める森に大地の星。
「わぁ、きれい!」
習字カバン提げた君が走る、かたこと硯が文鎮が鳴る。
ならんで踏み出して草が匂う、ほろ甘い涼んで、それから落葉ほろ甘い。
「ほんと、いっぱい咲いてるねっ!すごーいっ、」
ソプラノきらきら弾んで立ち止まる、赤いスニーカーに小花が白い。
ちいさな花あふれる緑一面、かすかな甘い香へ座りこんだ。
「すごいねえ、ずーっと咲いてるね?」
「この奥までずっと咲いてるよ、」
答えながらスニーカーのくるぶし、草の香そっと冷たい。
頬ふれる風かすかに甘く冷たく額かすめる、朱色かたむく木洩日に言った。
「ほら、日暮れまで時間ないぞ?探すんなら早くしろよ、」
秋は日暮れが早い、森なら尚更すぐ暗くなる。
そんな午後かたむく光の森、幼馴染は肯いた。
「うんっ、がんばるね、」
黒目がちの瞳くるり笑って、ちいさな指が緑に埋もれる。
横顔まるい頬ふわり照らされて、睫きらめく底まっすぐ花を映す。
―ずいぶん真剣だな?
見つめる真ん中、まるい頬やわらかに薔薇色そまる。
こんなに一生懸命なのは何故だろう?
「なんでソンナに見つけたいわけ?」
「ん?」
尋ねた先、横顔がふりかえる。
朱色やわらかな木洩陽の底、黒目がちの瞳すこし細めた。
「ひみつ、」
細めた瞳ちょっと笑って、また草花へかがみこむ。
小さな花と緑の葉かきわけて、横顔あわく木洩陽に浮かぶ。
「ふーん、ひみつなんだ?」
問いかけて、それでも横顔ちょっと笑って振りむかない。
それだけ大事な「ひみつ」で大切なのだろう?
―しかたないなあ、つきあってやるか?
心裡ひとりごと、ほら指先もう葉をかきわける。
白い小花のもと葉を数えて、唯ひとりの横顔ふりむかせたくて。
白詰草:シロツメクサ、花言葉「約束、私を想って」
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