分岐
第83話 辞世 act.35-another,side story「陽はまた昇る」
雪がふる、音みんな消し去って。
「湯原、今なら痕跡は残らないよ?」
深い声そっと響く雪の夜、黒い空しずかに純白が舞う。
街燈の光きらきら銀色ふる掌の上、その中心で拳銃にぶい艶は黒い。
「俺も伊達も無理強いはしないけど、ただチャンスは今だと思う。岩田さんも凄腕だから隙はそうないよ、今日の後はもっと警戒するだろうし、」
聴き慣れた声は落着いている、でも底ふかく硬い。
こんなとき冷静だけではいられない、その声にめぐらせた視線に鼓動が疼く。
どうして今、こんなことになっている?
「…周太、」
母の声かすかに自分を呼ぶ、すこし震えている。
その貌ダッフルコートの背にも透かして見えるようで、ただ見つめる拳銃に静かな声は続けた。
「岩田さんは執念深くて有名なんだ、狙った標的は絶対にしとめる人だよ。もし今を逃せばまた狙われると思う、」
淡々、おだやかに告げられる声に解からない。
どうして今こんなことになるのか?拳銃ひとつ見つめ問いかけた。
「箭野さん、どうしてここまで…伊達さんもどうして、」
問いかけ見あげた先、制帽の翳に瞳は深く優しい。
ただ前より黒々と静かで、なにか哀しい眼ざしは微笑んだ。
「さっき言った通りだよ、俺は勝山さんのことで赦せないし今も湯原を撃とうとしたろ?俺こそトリガー弾きたいのが本音だよ、このひとは赦せない、」
こんなこと箭野が言うなんて?
―優しい箭野さんがこんなに、どうして…これは現実のこと?
疑問と見つめる雪の先、つもりゆく冷厳の底に紺色の肩うずくまる。
あの片手に光るのは手錠、そして繋がれるロープの傍ら制服姿が口開いた。
「…湯原、俺はこの男だけは赦せない、」
低い声そっと雪に徹る。
白つもりだす制帽の翳、まっすぐな視線が周太を見た。
「この男が命令に背けない気持ちは解かる、警察組織は、特にSATはそういう場所だからな。それでもこの男は殺しすぎだ、」
穏やかな沈毅が言葉を紡ぐ。
その一言しずかに重たく厚い、そんな声に拳銃たずさえた手が言った。
「伊達の前のパートナーは自殺か他殺なんだ、表向きは事故死だけどね、」
そんなことが?
「…どうして?」
問いかけた真中、雪中の紺色の肩かすかに揺らぐ。
俯いた顔は影深く見えない、その隣で沈毅な瞳すこし笑った。
「内部告発しようとしたんだ、」
雪の闇おだやかに声が徹る。
頬なぶる風しずかに冷えてゆく、ただ静寂に声は続けた。
「頭の切れる正義感が強い人だったよ、自殺でも他殺でもこの男に追いこまれて死んだことは変わらない、」
告げられる言葉のむこう闇が深い。
突きつけられた証言の隣、俯いた顔があげられた。
「伊達、推論で俺を処刑するつもりか?」
「推論じゃありません、残念ながらな、」
ばさり即答して視線は射すくめる。
制帽の翳まっすぐ見つめて、沈毅な声は言った。
「運転席に遺されてた缶コーヒー、飲み口に睡眠薬が塗られてたんだよ。あんたがやった缶コーヒーだろ?」
雪ざっと吹きつける、けれど誰も動かない。
白紗かかる夜の底ただ声は続けた。
「缶コーヒー2本買うあんたの姿が自販機の監視カメラに残ってた、画像データーはコピーも保管してある。世間に公表できるようにな、」
冷たい雪風に低い声が徹る、その言葉に今までが解かる。
なぜ伊達は自分を気にかけてくれたのか?見つめるまま岩田の声が言った。
「たしかに俺がやった缶コーヒーかもしれない、それで自殺すれば当てつけ」
「自殺なら内服薬だ、本人が死ぬ気なら錠剤でも粉薬でも呑む、」
遮って声、低く徹る。
街燈の下ふきつける銀紗に声は続いた。
「でも睡眠薬は缶コーヒーの飲み口に塗られてた、缶はプルリング開けば薬しこんだってバレるからな。味方のフリで油断させて飲ませたんだろ?」
突きつける声、その言葉に鼓動そっと軋みだす。
きっと父も同じだった、そう想えて、だから声がでた。
「…その方も信じていたんです、だから生きてください、」
信じていた、だからこそ生きてほしい。
ただ願う想いに低い声が斬り返した。
「無駄だ湯原、この男はまた繰りかえす。湯原警部補のあと何人殺したと思う?」
白紗のむこう跪いた男すこし揺らぐ。
繋がれたロープ締めあげる手は低く微笑んだ。
「俺のパートナーは睡眠薬で自動車事故にみせかけ殺された、SATの任務と関わりがない死だろ?そうやってSATの隊員だと解からないよう殺すんだ、事故死なら警察官であることもバレない、SATに入るとき履歴書ごと消えてるからな。だからマスコミには公務員の死としか書かれない、」
語られる声は静かで、静かな分だけ怒りが深い。
その語る罪も浅くなくて、咬まれてゆく鼓動から声おしだした。
「…どうしてそんな、なぜ?」
なぜ?
問いかけた雪の底、紺色の制服姿は動かない。
跪いたスラックス黒く凍えて、それでも立てない姿に低い声が言った。
「こいつらの粛清のやり方なんだよ、SATの隊員であることも警察官であることも否定してプライドごと殺すんだ、」
プライドごと殺す、それは「理由」も消してしまう?
気がついて雪ふる風に問いかけた。
「それは…事件性を否定するためですか?警察官だと解からなければ殺される理由も消えるから、」
「正解だ湯原、やっぱり鋭いな?」
低い声すこし笑ってくれる。
いつもの褒めてくれるトーン、けれど罪人のロープ離さない手が哀しい。
優しい男だと知っている分だけ今が哀しくて、それでも見つめる街燈のした沈毅な声は告げた。
「だが湯原警部補は射撃のオリンピック選手だ、警察官だと世間が知っている。だから所轄の応援要請中に殉職させたんだ、射撃選手の名誉を奪うために、」
知っている、だからこそ奪える。
「…そんなに、なぜ…班長?」
なぜそこまでしたのだろう、なぜ父にそこまで?
解からなくて見つめた真中、俯いた頭を伊達がつかんだ。
「答えろ岩田、なぜパートナーにそこまでやれたのか話せ、」
ぱさり、制帽が落ちて顔あらわになる。
髪つかまれ上げられた顎は鋭い、やつれた唇はすこし微笑んだ。
「嫉妬だ、」
ただ一言、けれど全て解けだす。
十四年に辿った父の軌跡、それから祖父が遺した痕。
それら二つただ一言に結晶して喉から押しだされた。
「岩田さん、その嫉妬は…父が射撃を好きじゃないから憎かったんじゃありませんか?岩田さんには大事だからこそ、」
ただ命令だけで殺したんじゃない、プライドのためだ。
だからこそ父は「警察官」として殺された、いま解ける想い声にした。
「好きで欲しいのに手に入らないから嫉妬して、でも持ってる本人は何でもない顔して…僕も同じです、一生懸命に好きだからこそ嫉妬して、悔しい、」
自分も同じだ、ずっと嫉妬している。
―僕も英二に嫉妬してる、最初からずっと、
唯ひとり想った相手、だからこそ嫉妬も苦しい。
憧れて追いつきたくて、認められたくて努力して、その分だけ相反する想いせめぎあう。
そんな時間ずっと過ごしてきた自分だから解かる、想いマフラーそっと押し下げ微笑んだ。
「僕もたくさん嫉妬します、だから解かるんです…あのひとも同じですね?」
だから祖父も父も消されてしまった、奪われた。
還らない哀しみ抉られる、その願いたい十四年まっすぐ見つめて告げた。
「嫉妬は相手が死んだらもっと苦しいです、勝ち逃げされるんですから…だからこそ岩田さんは生きてください、」
勝つ、負ける、本当はそんなことどうでもいい。
ただ「認めて」ほしいだけ、そう見つけた十四年に微笑んだ。
「生きて苦しんでください、後悔いっぱいしてください…嫉妬の数だけ苦しんで後悔して、生きてください、」
父が最期に願ったこと、その本当の意味は「後悔」だ。
だからこそ告げるべきことがある、今ようやく辿りついた結論を声にした。
「岩田さん、父が傷つけたこと謝ります。父に悪気が無かったとしても傷つけたのなら…ごめんなさい、」
もうしわけありません、じゃなく「ごめんなさい」を贈りたい。
ただ願いごと頭下げて、ゆっくり上げた視線に窶れ顔がこちら見る。
雪の紗幕ごし鋭利な眼じっと見つめて、その乾いた唇そっと微笑んだ。
「…ごめんなさい、か、」
掠れそうな声、でも確かに聞こえた。
声に見つめた先で捕縛された制服姿はしずかに告げた。
「…警察を辞めても気をつけろ、あのひとは簡単じゃない、」
忠告してくれている?
そんな言葉に見つめ直した街燈のした岩田は続けた。
「俺が消えても次がいる、辞めた後も気をつけてくれ…おまえは生きろ、」
生きろ、
その一言どれだけ想い籠るのだろう?
想い見つめる雪風は冷たくて、だけど瞳の底ふかく熱は燈る。
にじみだす視界に顔ひとつ見つめる、やつれた顎、削がれた頬、けれど光ひとつ温かい。
白くとけてゆく闇の底、ゆるやかな光の一滴こぼれて痩せた頬つたって、その唇が微笑んだ。
「伊達、俺を連行してくれ、」
(to be continued)
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周太24歳3月
第83話 辞世 act.35-another,side story「陽はまた昇る」
雪がふる、音みんな消し去って。
「湯原、今なら痕跡は残らないよ?」
深い声そっと響く雪の夜、黒い空しずかに純白が舞う。
街燈の光きらきら銀色ふる掌の上、その中心で拳銃にぶい艶は黒い。
「俺も伊達も無理強いはしないけど、ただチャンスは今だと思う。岩田さんも凄腕だから隙はそうないよ、今日の後はもっと警戒するだろうし、」
聴き慣れた声は落着いている、でも底ふかく硬い。
こんなとき冷静だけではいられない、その声にめぐらせた視線に鼓動が疼く。
どうして今、こんなことになっている?
「…周太、」
母の声かすかに自分を呼ぶ、すこし震えている。
その貌ダッフルコートの背にも透かして見えるようで、ただ見つめる拳銃に静かな声は続けた。
「岩田さんは執念深くて有名なんだ、狙った標的は絶対にしとめる人だよ。もし今を逃せばまた狙われると思う、」
淡々、おだやかに告げられる声に解からない。
どうして今こんなことになるのか?拳銃ひとつ見つめ問いかけた。
「箭野さん、どうしてここまで…伊達さんもどうして、」
問いかけ見あげた先、制帽の翳に瞳は深く優しい。
ただ前より黒々と静かで、なにか哀しい眼ざしは微笑んだ。
「さっき言った通りだよ、俺は勝山さんのことで赦せないし今も湯原を撃とうとしたろ?俺こそトリガー弾きたいのが本音だよ、このひとは赦せない、」
こんなこと箭野が言うなんて?
―優しい箭野さんがこんなに、どうして…これは現実のこと?
疑問と見つめる雪の先、つもりゆく冷厳の底に紺色の肩うずくまる。
あの片手に光るのは手錠、そして繋がれるロープの傍ら制服姿が口開いた。
「…湯原、俺はこの男だけは赦せない、」
低い声そっと雪に徹る。
白つもりだす制帽の翳、まっすぐな視線が周太を見た。
「この男が命令に背けない気持ちは解かる、警察組織は、特にSATはそういう場所だからな。それでもこの男は殺しすぎだ、」
穏やかな沈毅が言葉を紡ぐ。
その一言しずかに重たく厚い、そんな声に拳銃たずさえた手が言った。
「伊達の前のパートナーは自殺か他殺なんだ、表向きは事故死だけどね、」
そんなことが?
「…どうして?」
問いかけた真中、雪中の紺色の肩かすかに揺らぐ。
俯いた顔は影深く見えない、その隣で沈毅な瞳すこし笑った。
「内部告発しようとしたんだ、」
雪の闇おだやかに声が徹る。
頬なぶる風しずかに冷えてゆく、ただ静寂に声は続けた。
「頭の切れる正義感が強い人だったよ、自殺でも他殺でもこの男に追いこまれて死んだことは変わらない、」
告げられる言葉のむこう闇が深い。
突きつけられた証言の隣、俯いた顔があげられた。
「伊達、推論で俺を処刑するつもりか?」
「推論じゃありません、残念ながらな、」
ばさり即答して視線は射すくめる。
制帽の翳まっすぐ見つめて、沈毅な声は言った。
「運転席に遺されてた缶コーヒー、飲み口に睡眠薬が塗られてたんだよ。あんたがやった缶コーヒーだろ?」
雪ざっと吹きつける、けれど誰も動かない。
白紗かかる夜の底ただ声は続けた。
「缶コーヒー2本買うあんたの姿が自販機の監視カメラに残ってた、画像データーはコピーも保管してある。世間に公表できるようにな、」
冷たい雪風に低い声が徹る、その言葉に今までが解かる。
なぜ伊達は自分を気にかけてくれたのか?見つめるまま岩田の声が言った。
「たしかに俺がやった缶コーヒーかもしれない、それで自殺すれば当てつけ」
「自殺なら内服薬だ、本人が死ぬ気なら錠剤でも粉薬でも呑む、」
遮って声、低く徹る。
街燈の下ふきつける銀紗に声は続いた。
「でも睡眠薬は缶コーヒーの飲み口に塗られてた、缶はプルリング開けば薬しこんだってバレるからな。味方のフリで油断させて飲ませたんだろ?」
突きつける声、その言葉に鼓動そっと軋みだす。
きっと父も同じだった、そう想えて、だから声がでた。
「…その方も信じていたんです、だから生きてください、」
信じていた、だからこそ生きてほしい。
ただ願う想いに低い声が斬り返した。
「無駄だ湯原、この男はまた繰りかえす。湯原警部補のあと何人殺したと思う?」
白紗のむこう跪いた男すこし揺らぐ。
繋がれたロープ締めあげる手は低く微笑んだ。
「俺のパートナーは睡眠薬で自動車事故にみせかけ殺された、SATの任務と関わりがない死だろ?そうやってSATの隊員だと解からないよう殺すんだ、事故死なら警察官であることもバレない、SATに入るとき履歴書ごと消えてるからな。だからマスコミには公務員の死としか書かれない、」
語られる声は静かで、静かな分だけ怒りが深い。
その語る罪も浅くなくて、咬まれてゆく鼓動から声おしだした。
「…どうしてそんな、なぜ?」
なぜ?
問いかけた雪の底、紺色の制服姿は動かない。
跪いたスラックス黒く凍えて、それでも立てない姿に低い声が言った。
「こいつらの粛清のやり方なんだよ、SATの隊員であることも警察官であることも否定してプライドごと殺すんだ、」
プライドごと殺す、それは「理由」も消してしまう?
気がついて雪ふる風に問いかけた。
「それは…事件性を否定するためですか?警察官だと解からなければ殺される理由も消えるから、」
「正解だ湯原、やっぱり鋭いな?」
低い声すこし笑ってくれる。
いつもの褒めてくれるトーン、けれど罪人のロープ離さない手が哀しい。
優しい男だと知っている分だけ今が哀しくて、それでも見つめる街燈のした沈毅な声は告げた。
「だが湯原警部補は射撃のオリンピック選手だ、警察官だと世間が知っている。だから所轄の応援要請中に殉職させたんだ、射撃選手の名誉を奪うために、」
知っている、だからこそ奪える。
「…そんなに、なぜ…班長?」
なぜそこまでしたのだろう、なぜ父にそこまで?
解からなくて見つめた真中、俯いた頭を伊達がつかんだ。
「答えろ岩田、なぜパートナーにそこまでやれたのか話せ、」
ぱさり、制帽が落ちて顔あらわになる。
髪つかまれ上げられた顎は鋭い、やつれた唇はすこし微笑んだ。
「嫉妬だ、」
ただ一言、けれど全て解けだす。
十四年に辿った父の軌跡、それから祖父が遺した痕。
それら二つただ一言に結晶して喉から押しだされた。
「岩田さん、その嫉妬は…父が射撃を好きじゃないから憎かったんじゃありませんか?岩田さんには大事だからこそ、」
ただ命令だけで殺したんじゃない、プライドのためだ。
だからこそ父は「警察官」として殺された、いま解ける想い声にした。
「好きで欲しいのに手に入らないから嫉妬して、でも持ってる本人は何でもない顔して…僕も同じです、一生懸命に好きだからこそ嫉妬して、悔しい、」
自分も同じだ、ずっと嫉妬している。
―僕も英二に嫉妬してる、最初からずっと、
唯ひとり想った相手、だからこそ嫉妬も苦しい。
憧れて追いつきたくて、認められたくて努力して、その分だけ相反する想いせめぎあう。
そんな時間ずっと過ごしてきた自分だから解かる、想いマフラーそっと押し下げ微笑んだ。
「僕もたくさん嫉妬します、だから解かるんです…あのひとも同じですね?」
だから祖父も父も消されてしまった、奪われた。
還らない哀しみ抉られる、その願いたい十四年まっすぐ見つめて告げた。
「嫉妬は相手が死んだらもっと苦しいです、勝ち逃げされるんですから…だからこそ岩田さんは生きてください、」
勝つ、負ける、本当はそんなことどうでもいい。
ただ「認めて」ほしいだけ、そう見つけた十四年に微笑んだ。
「生きて苦しんでください、後悔いっぱいしてください…嫉妬の数だけ苦しんで後悔して、生きてください、」
父が最期に願ったこと、その本当の意味は「後悔」だ。
だからこそ告げるべきことがある、今ようやく辿りついた結論を声にした。
「岩田さん、父が傷つけたこと謝ります。父に悪気が無かったとしても傷つけたのなら…ごめんなさい、」
もうしわけありません、じゃなく「ごめんなさい」を贈りたい。
ただ願いごと頭下げて、ゆっくり上げた視線に窶れ顔がこちら見る。
雪の紗幕ごし鋭利な眼じっと見つめて、その乾いた唇そっと微笑んだ。
「…ごめんなさい、か、」
掠れそうな声、でも確かに聞こえた。
声に見つめた先で捕縛された制服姿はしずかに告げた。
「…警察を辞めても気をつけろ、あのひとは簡単じゃない、」
忠告してくれている?
そんな言葉に見つめ直した街燈のした岩田は続けた。
「俺が消えても次がいる、辞めた後も気をつけてくれ…おまえは生きろ、」
生きろ、
その一言どれだけ想い籠るのだろう?
想い見つめる雪風は冷たくて、だけど瞳の底ふかく熱は燈る。
にじみだす視界に顔ひとつ見つめる、やつれた顎、削がれた頬、けれど光ひとつ温かい。
白くとけてゆく闇の底、ゆるやかな光の一滴こぼれて痩せた頬つたって、その唇が微笑んだ。
「伊達、俺を連行してくれ、」
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