萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

夏富士花園

2018-08-25 23:26:37 | 写真:山岳点景
夕霧のぼる最高峰、夏花ゆれる。
山岳点景:富士山


富士山も花園になるポイントあり・りあるシークレットガーデンってカンジです、笑
撮影地:山梨県富士吉田市2018.8

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葉月雑談、車窓に秋

2018-08-24 22:22:08 | 雑談
車窓は夜、
ガラスの黒に車内が映る、
誰もナントナクお疲れ気味、
仕事そのほか事情ソレゾレ一日が終わり、
それぞれ帰る窓、アタリマエなんだけど灯りの数が前とは違う。

半年前の車窓は街中、住宅街とビル街きらきらしくて、
今は夜の黒にまばらな灯り、
さびしいと言う人もいるだろうけど、ワリと自分は好き。笑
だって虫の声が聞こえる。


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板葺屋根の夕

2018-08-24 11:18:00 | 写真:建築点景
夕暮れる宿場町、屋根ほのぼの並ぶ風止めの石。
建築点景:妻籠宿


妻籠宿つらなる古民家の道、惹きこまれる建築にツイ立ち止まります、笑
撮影地:長野県木曽郡妻籠宿2017.5

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葉月二十三日、松虫草―Mourning

2018-08-23 23:59:10 | 創作短篇:日花物語
零から生まれて、
8月23日の誕生花


葉月二十三日、松虫草―Mourning

夢を見る、あの花の草原。

「はいっ、息すってーはいてっ!」

声に呼ばれて喉ひらかれる、肺ひろがる。
息ふかく鼓動ずきり軋んで、それでも瞑った瞼は青い空と、それから。

「あとちょっとだよーっ、がんばって呼吸っ!」

声が喉を肺をひろがらす、呼吸する。
体ふかく軋んで痛覚めぐらす、それでも青い空と白い雲と、ゆれる花の光。

「ハイっ、生まれたよ!」

声、それから微かな声。

「…ぁ、」

ちいさな響き空気ふるえる。
ふるわす空気ふくらんで湧く、響く、声が湧く。

「元気な男の子ですよっ、おめでとうございます!」

笑いかける声、その声より響く初めての声。
ちいさくて微かで確かに響く、初めて声ふるわす温もりに花が光る。

「ほら、抱っこしてあげよう?おかあさん、」

私が呼ばれる、あたらしい呼び名で。
呼び名くれた温もり頬ふれる、雫つたう首もと響く声。

「ああ元気だねえ、こんな元気な産声そうないんだよ?」

笑いかけてくれる声に瞼ひらいて、その真ん中ちいさな唇が泣く。
初めて泣いている唇やわらかな温度、ちいさな耳、ちいさな指かすかな黒子。

「…ほくろ、」

ちいさな爪ちいさな指、その黒かすかな一点。
ちいさな丸い黒い点ひとつ薬指、どうして忘れられるのだろう?

『な?ちょうど結婚指輪で隠れるだろ、』

あなたが笑った、薬指ひとつ黒い点。
隠される黒子どれだけ幸せだったの?

「ああ本当だ、かわいい黒子があるね?」
「あら、かわいい。ソリティアリングしてるみたい、」

マスクごし医者の瞳が笑う、看護師の瞳やわらかに微笑む。
誰も見つめて微笑んで、やっぱり幻じゃない薬指に唇ひらいた。

「このほくろ…この子の父親も同じでした、」

私の声が告白する、あなたの形見。

こんなこと教えられて何想うだろう、どう聞いたろう?
また哀れまれるのだろうか?想い見つめる分娩台、やわらかな声が笑った。

「すてきな遺伝ね、パパの愛も命もつないだ印だわ、」

あなたの印、しるし?

「すてきな…しるし、ですか?」
「ええ、すてき。ソリティアリングみたいだもの?」

やわらかな声が笑ってくれる。
その言葉に初めての声が響く、泣いている温もりに声こぼれた。

「…この子を産んでいるあいだずっと、花を見ていたんです…山の花、」

あの花が草原に咲く、青い空と白い雲が近い。
まだ近い記憶の映像、けれど遠くなった風光に看護師の瞳が訊いた。

「山の花、ご主人が好きだったお花?」
「はい…」

うなずいて顎そっと温もりふれる、ちいさく響く声ふれる。
初めての声まだ慣れない喉、それでも精一杯の響きに声が笑った。

「ご主人からのブーケね、あなたと息子さんをお祝いするために、」

やわらかな声ほころんで告げる、その言葉に花こぼれだす。
花きらめく光の山の空、その麓たたずむ産院のベテランは告げた。

「さあ、お部屋に戻るしたくしましょう?あなたも息子さんもすこし眠らなくちゃ、眠って起きたらお母さん時間スタートよ?」

スタート、出発。
また始められるのだろうか?

「すたーと…できますか、わたし…」

疑問こぼれだす唇ふるえだす、顎ふれる温もり泣き声ふれる。
泣いている声ひとつだけ寄りそって、そんな分娩台に穏やかな声が言った。

「もうスタートしちゃってるわねえ、もうお母さんになっちゃったんだもの?息子さんが生まれた瞬間に、ね?」

もうスタート、もう始まってしまった。

そうかもしれない、だって今この胸に温もり一つ泣いている。
泣いている唇ちいさな頬、ちいさな手ふれる胸もと小さな温もり。
ちいさくて小さくて、けれど幻じゃない確かな温もりが私を抱きしめる。

「わたし…っ」

視界ゆるんで滲んで温かい。
瞳こぼれる熱やわらかに頬つたう、雫ゆるやかに顎おちる。
こぼれて熱あふれて伝わる雫、その一滴そっと小さな温度ふれた。

「あら?ボク、ママの涙ぬぐってるのね。赤ちゃんの時からイケメンね、」

やわらかな声ほがらかに笑う、ちいさな指ふれる頬から雫ほどける。
ちいさな温もり肌ふれて一滴こぼれて、ぬぐってくれる薬指に涙ひとつぶ光る。


松虫草:マツムシソウ、花言葉「朝の花嫁、敏感、魅力、風情、私はすべてを失った・無からの出発、健気、不幸な愛・叶わぬ恋、再起」

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安曇野、庭回廊

2018-08-23 05:24:18 | 写真:建築点景
安閑の蔭、日向の庭。
建築点景:安曇野等々力家住宅


安曇野にある旧家は庭園も見事、古樹の風格がカッコよかったです、笑
撮影地:長野県安曇野市2010.4

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安曇野、水車風光

2018-08-22 10:26:25 | 写真:建築点景
透ける水瀬、苔に時めぐる水車
建築点景:安曇野万水川


安曇野は清流の里、黒澤明監督「夢」のロケ地でも有名ですが・単純に好きです、笑
撮影地:長野県安曇野市万水川2010.4

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葉月休日2、閑話

2018-08-21 23:58:05 | 雑談
また真夏日に逆戻りだった今日、ソレでも湿度は低めでドッカ秋の気配で、
やっぱり日暮れ早くなったなーなんて思う夜の窓は秋の声、虫の音すだく旋律の庭。
やっぱり庭のある家ってイイ、アグリカルチャーバンザイ。笑

今日は甲子園決勝で、
めずらしく県立高校が勝ち上がって、しかも農業高校で。
自分も県立出身だから他県トハイエやっぱり応援したくなるわけで。
とはいえ考えちゃったのが→相手チームすげー戦い辛いだろうなあ…思ったり。
それでも大差つけて優勝したアタリ鉄のメンタルすげえなーそれも実力だろう。

なんて書くと甲子園観ていたんだなー思われそうだけど、
ここんとこオツカレ貯蓄いっきょ大放出らしく・昼寝しちゃってた今日の午後で、笑
いちどオヤツ時間に目は明いたけど、昼寝二度寝へと墜ちこんで気がついたのは夕方だった。

あー決勝見逃しちゃったじゃん、
ってヤヤがっかり起きたんだけど、結果を見て・眠りこんだことも良かったのかなあーとも。
ソンナカンジ眠りこんだ原因は干した布団イイ感じすぎたベッドのせい←晴天ほどよい乾燥空気のオカゲ。

そんなこんなダラダラノンビリ休日2日め、悪戯坊主やっぱりゴキゲン。
くっついて歩き、くっついて眠り、今もやっぱり傍らの椅子まるまりウトウト中。
そんなこんなで昨夜の続き写真でも↓


そんなこんなで夜更かしそこそこ寝ます、笑「嬉しい」13ブログトーナメント
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安曇野、光蔭小路

2018-08-21 20:03:20 | 写真:建築点景
古代棲む山里、ふりつもる木漏日の道。
建築点景:安曇野等々力家住宅


古代氏族の安曇氏が拓いた安曇野は古樹×古民家が多くて不思議な空気感、なんか好きです。笑
撮影地:長野県安曇野市2010.4

何でもどうぞ、カンでもどうぞ。 9ブログトーナメント
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第85話 春鎮 act.64 another,side story「陽はまた昇る」

2018-08-21 08:52:26 | 陽はまた昇るanother,side story
rolling from their mountain-springs 懐あふれて、
harushizume―周太24歳3月下旬


第85話 春鎮 act.64 another,side story「陽はまた昇る」

ぱちり、

爆ぜたのは、焚火だろうか呼び声だろうか?
今この雪に爆ぜたのは?

「んっ、ごめんよ周太?」

テノール透って幼馴染の手、携帯電話ぱちり開く。
その明眸かすかに細めて、涼やかな口もと微笑んだ。

「国村です、どの山ですか?」

朗らかなトーン、けれど微かに硬い。
雪白の横顔すっと空を仰いで、そんな雪の視線に息ひとつ呑んだ。

―もしかして遭難事故の連絡…どうして、光一、

雪空あおぐ横顔に鼓動が軋む、疑問どうしてと絞めつける。
この幼馴染は今朝に警察官を辞した、その午後に繋がれた電話にテノール笑った。

「そうですね、最後のご奉公ってヤツきっちりヤりますよ?」

ぱちり、幼馴染の手が携帯電話を閉じる。
涼やかな唇ふっと靄くゆらせて、白い吐息に笑った。

「ごめんね周太、ちっとオシゴトになっちまった、」

底抜けに明るい眼きれいに笑ってくれる。
怜悧な瞳はるかに澄んで、そんな幼馴染に微笑んだ。

「僕こそごめんね光一…あの、気をつけて帰ってきて?」
「きっちり帰ってくるよ、」

雪白の頬からり笑って、慣れた肩が登山ザック背負う。
白銀の森に青い登山ウェア立ちあがる、その長身につられ立ちあがった。

「あのっ、光一、」
「ん?」

青い肩くるり振りむいてくれる。
雪ふる黒髪の笑顔ほがらかで、すこし鼓動ゆるめられ微笑んだ。

「さっき光一が訊いてくれたこと僕、きちんと考えるから…ありがとう光一、」

やさしい言葉じゃない、言ってくれたことは。
易しくないからこと優しいと解る、そんな発言者は明眸にやり笑った。

「また続き、聴かせてよね?」

笑って登山グローブの手さらり掲げて、澄んだ瞳が明るい。
その掌に自分も手さしだして、ぱんっ、掌かさね敲きあって登山靴は歩きだした。

「みやたっ、招集だよ!」

テノール透って青い背まっすぐ歩きだす。
細身だけれど広やかな背中きれいで、白銀の舞いふる青に祈った。

「無事で…どうか、」

無事で帰ってきて、どうか。

ただ祈り見つめる真中、青い登山ジャケットに雪が降る。
白銀また濃やかになる森の底、青色のむこう深紅色まぶしい。

―英二と行くんだ光一は…遭難救助に、

あの深紅色と幼馴染は駆けてゆく。
白い森あざやかな赤い色、あの背中ずっと見つめた時間がまばゆい。

「…ぶじで、」

唇こぼれる祈り、深紅色の長身ただ見つめている。
視界ふる雪に青色も映る、深紅色のかたわら華奢なベージュのコート姿が佇む。

「ワルイね美代っ、宮田ちっと返してもらうよ?救助コールきちまったからねえ、俺の車よろしくね美代、」

テノールほがらかに雪を透る、青い長い腕が女の子に掌のべる。
華奢な横顔も手さしだして受けとめて、マフラーはためく濃桃色に雪がふる。

「光ちゃん今朝もう退職したんでしょ?なのに救助の連絡が来たの?」
「月末まではイチオウ在職だからね、地元民だしさ?焚火の後始末よろしくね、」

雪風きらきら声が伝う、青と濃桃色に白銀きらめく。
向かいあう二人は明るくて、けれど深紅色ひとつ見つめてしまう。

―英二が行ってしまう、まだなにも…話せていないのに、

明るい二人のむこう、白銀ひとり佇む深紅色。
風さらすダークブラウンの髪が白皙を隠す、今、あなたはどんな貌しているだろう?

―僕が言ったこと英二どう想って…なにも話してもらってない、のに、

英二が生きたいように生きていいんだ、どんな英二でも僕はずっと。

そう僕が告げた想い、あなたに聴こえているだろうか?
その本音を知りたい、向きあわせてほしい、それとも望んでくれないのだろうか?
いつものよう何も話してくれないのだろうか、ついさっき、幼馴染が言ったように。

『ソウイウスレチガイってアイツはね、たぶん埋めらんない男だよ?』

話してくれない、そういうひと。

そういうひとを僕は受けとめられるのだろうか?
そういうひとを受けとめることなんて、出来るのだろうか?

「マッタクの超過勤務だよねえ、ほら?さっさとドア開けな、」

雪のむこう、あなたの車に幼馴染が笑う。
助手席の扉ノックする青い腕、あんなふうに僕は笑えない。

―行ってしまう英二…任務だから遭難救助だからあたりまえ、だけど、

あなたは任務に向かう、山岳救助隊員だから。
そんなこと解っている、そんな姿まぶしくて好き、そんな横顔が好きだ。

けれど、行ってしまうなら言葉ひとつ残してほしい。

そんな願いは僕の我儘だろうか?
それとも他に僕は?

「…っ、」

とくん、

鼓動ひっぱたいて登山ザックひきよせる。
ざらり雨蓋のファスナーひらく、ペンとりだして手帳ひらいた。

「ほら宮田、おまえの携帯が呼んでるよ?黒木だろうけど出てやんな、」

ばたん、

雪に空気ふるえる、あなたの車の扉が閉じる。
もうじき走り出してしまう、それでも雪のはざまペン走らせた。

「待ってっ、」

じりっ、引き破ったページ手に足が動く。
雪さくり登山靴が沈む、右足首じわり引き攣れる。
捻挫まだ痛む、それでも雪を駆けて懐かしい車の窓、拳にぎりしめた。

こんっ、

「…、」

ガラスごしダークブラウンの髪ふりむく、イヤホンマイク着けた白皙が見あげる。
切長い瞳まっすぐ自分を映して、運転席のパワーウィンドウ動いた。

「八丁橋で国村さんがいます、救助要請ですね?」

下がるガラスに低い声が徹る、きれいな低い懐かしい声。
話す相手は僕じゃない、それでも見つめてくれる瞳に紙切れ一つさしだした。

「…、」

声がでない、それでも手はメモ差しだす。
受けとってくれるだろうか?願う真中、端整な唇は通話する。

「行きます、大ダワから落ちましたか?」

きれいな低い声は話し続ける、けれど切長い瞳まっすぐ僕を映す。
僕を見つめて、そして登山グローブの掌さしだしてくれた。

「、」

かさり、

さしだされた掌にメモ一枚、小さな折紙にして載せる。
この意味あなたに伝わる?想い見つめる真中、切長い瞳が微笑んだ。

「わかりました、」

端整な唇たんたん話しながら、掌の折紙かるく握りしめる。
そして登山ウェアの胸ポケットにしまった。

―受けとってくれた、

受けとってくれた、あなたの胸ポケットに入れてくれた。
けれど、このまま忘れられてしまうだろうか?

「あの件は断ってもらえますか?今日中に戻れるかわからないので、」

きれいな低い声すこし笑っている、電話の相手なにを話すのだろう?
言葉つい拾ってしまう真中で端整な唇は微笑んだ。

「はい、行ってきます、」

微笑んで通話を終えて、携帯電話そのまま胸ポケットしまいこむ。
イヤホンマイク着けたままの白皙ふりむいて、端整な瞳きれいに笑った。

「行ってきます、」

笑いかけてくれる瞳に僕が映る。
映したまま濃やかな睫そっと瞬いて、イヤホンマイクの横顔は前を見た。

さくり、

雪一歩さがって、エンジン音が雪ゆらす。
タイヤチェーン唸り銀色ちりばめて、雪の森を四輪駆動車は走りだした。

「…いってらっしゃい、」

言えなかった言葉こぼれて、視界やわらかに熱あふれだす。
ゆるやかに揺れて滲んでゆく雪の森、明るい声が微笑んだ。

「おかえりって言いたいね、周太くん?」

ほら、優しいんだ君は?

「美代さん…僕は、」

声こぼれて熱あふれだす、喉やわらかに温もり締められる。
伝えたい想い告げたい心、あふれて温められて言葉にならず瞳こぼれた。

「ん、無理に話すことなんてないよ?だいじょうぶ、」

ソプラノ朗らかに笑ってくれる、ほら君は優しい。
こんな君だから好きになった、好きなぶんだけ喉あふれだす熱の痛み。
そんなこと全て見つめてくれる大きな瞳は微笑んで、桃色の唇やわらかに口ずさんだ。

「やさしいウソなんていらないよ?周太くんの心のまんまでいてね、泣き虫もすてきだよ?」

澄んだソプラノがうたう、なつかしい言葉やわらかに鼓動ふれる。
この言葉を知るはずもない唇、けれど告げてくれた実直な瞳に微笑んだ。

「ありがとう美代さん…泣き虫でいさせてもらう、ね、」

微笑んで熱あふれてしまう、瞳ゆらせて頬こぼれて涙になる。
雪の森むきあった温もり、ふれそうな心、隠す涙、仮面のはざま。
面影あふれて熱うつろうまま追いすがる、そんな僕でも赦されるなら?

『行ってきます、』

戻ってくる、それとも帰ってくる?
帰ってくるのは時間、記憶、感情、幸せ、それとも幻?

『周太、』

呼んでくれた声、瞳、深紅色の背中。
ただ幸せな幻、けれど瞬いても消えない唯ひとつの赤。

※校正中
(to be continued)
【引用詩文:William Wordsworth「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey, 」】

第85話 春鎮act.63← →第85話 春鎮act.65
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葉月休日、閑話

2018-08-20 19:07:08 | 雑談
月曜だけど休日一日、トリアエズだらだら。笑

どこ行く予定もなく、
ぼーっと溜めこんだブルーレイ観たり、
ヒサシブリ近所のスーパーマーケットぶらり買い物したり、
ソコのおいしーと聴いていた○○丼弁当を買ってみたり(実際おいしかった、満足)

あらーひさしぶりねー、
とご近所さんに声かけられてヒサシブリ立ち話したり、
ヒサシブリ会ったワンコは相変わらず可愛くて癒されてみたり、笑

雨ふったり止んだり涼しい一日、庭もどことなく秋の気配にトマトの色づき遅くなり、
午後になっても朝顔まだ咲いているアタリ夏も終わりだなあ実感して、
ソンナコンナ日没も早い窓は秋近し。

秋が来るなあ、夏が終わるなあ、

なんて実感アラタメテ・今夏なんだか忙しかった実感が来た。
そこらへん写真フォルダ開くと冬→今まで忙しかったなあ実感する。

去年は雪山→夏山ケッコウ写真あるんだけど、今シーズン山景色は昨年比減で、
ヨウスルニ引越し+公私アレコレ昨年比増だったワケで、
時間ソレダケ山には枠とれなかったワケなんだけど、

ソレでも少ない時間の枠、少ない分だけ山時間なんだか濃いような?

なんて思ったり実感あらためて、去年までの写真アラタメテ見返してみたり、
山写真にならんで多い建築写真あらためてモノクロ版UPしてみたり、
そんなことしていると今日までの時間アラタメテ感謝して、笑
で、気づく、

あー悪戯坊主こんなに留守番させているんだなあ…

山に行く時間分だけ悪戯坊主は留守番猫、
ソレは山じゃなくても外出すれば同じなんだけど、笑
どっちにしても今日一日、悪戯坊主は幸せオーラもふもふにして傍ら眠っている。

あー寝ているとカワイイなあ、悪戯モードの時は白チビ悪魔だけど。笑

なんて幸せもふもふ撫でながら、のんびり×モライモンビール昼酒してみたり、
ソンナだらだらながらも・たまにメールチェック×公モードそっこー対応して、
そんなこんな過ごして一日今ここで、半分眠りながら起きながら暮れた窓かすかに虫が秋の声。

そんなこんな幸せ提供してくれたアクビ顔ちょっと面白かったので貼っておきます、笑


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