「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・12・06

2013-12-06 07:45:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

「とても人間のすることじゃない、あれは畜生のすることだと私たちはよく言うが、人間は無益な殺生をするが、畜生はしない。
 獅子は猛獣として恐れられても、腹さえいっぱいなら他を殺して食うことがない。また明日のために貯えないから、弱い毛ものは強い毛ものが満腹しているのを見定め、ゆうゆうとその前を通って無事である。自然界はこうしてバランスを保ってきた。
 昭和五十四年八月九日号に、私は原爆で非業の最期をとげた人の写真を請うて載せてもらった。あれは人間のしたことで、人間だけがすることで、畜生ならしないことである。
 人が動物を高等と下等に分けて、人類を高等の極におくのは、自分がその一員だからにすぎない。
                          [Ⅰ『サル年にちなんでいう』昭55・1・24]」

(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集-」新潮社刊 所収)

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