今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「大東亜戦争は侵略戦争でないというのはちとムリである。せまい日本にゃ住みあきたという歌が昔からある。日本人は広い海外に進出したいとかねがね願っていた。はじめ北米南米に移民したが、排日で移民はできなくなったから満州へとめざすようになった。五族協和というのは美名で、支配下におきたかったのである。
めでたく満州国建国にこぎつけたが、建国一周年のニュース映画では、満州国皇帝溥儀(ふぎ)の面前で、まず大日本帝国万歳次に天皇陛下万歳、最後に満州帝国万歳をとなえていた。
そのあとハルノートをつきつけられてやむなく勝算おぼつかない日米戦に突入した。それによって欧米の旧植民地が皆々独立したのは日本のおかげだが、その発端は侵略である。あれはうそから出たまことみたいな独立で、うそから出ようと独立は独立だから感謝している国はあろうが、だからといって発端を打消すことはできない。
[Ⅷ『ひとくち話 戦争まで』平6・5・19/26]」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集-」新潮社刊 所収)
「大東亜戦争は侵略戦争でないというのはちとムリである。せまい日本にゃ住みあきたという歌が昔からある。日本人は広い海外に進出したいとかねがね願っていた。はじめ北米南米に移民したが、排日で移民はできなくなったから満州へとめざすようになった。五族協和というのは美名で、支配下におきたかったのである。
めでたく満州国建国にこぎつけたが、建国一周年のニュース映画では、満州国皇帝溥儀(ふぎ)の面前で、まず大日本帝国万歳次に天皇陛下万歳、最後に満州帝国万歳をとなえていた。
そのあとハルノートをつきつけられてやむなく勝算おぼつかない日米戦に突入した。それによって欧米の旧植民地が皆々独立したのは日本のおかげだが、その発端は侵略である。あれはうそから出たまことみたいな独立で、うそから出ようと独立は独立だから感謝している国はあろうが、だからといって発端を打消すことはできない。
[Ⅷ『ひとくち話 戦争まで』平6・5・19/26]」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集-」新潮社刊 所収)