今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から、昨日の続き。
「辞書や事典を私たちは信じすぎる傾きがある。なかには辞書にない言葉なら存在しないと言いはるものさえある。私は辞書にない言葉はなるべく使わないことにしているが、たまには使う。
葉書一枚『まんそく』に書けないというとき、東京ではまんぞくと濁らないでまんそくと澄んで言った。こう言うといかにも『まんそく』に書けない感じが出る。ついこの間まで言ったが、これはたいていの辞書には出てない。したがって間違いだと言われるからもう書かない。こうして語彙(ごい)の一つは減るのである。
(『読売新聞』昭和60年3月6日夕刊)」
(山本夏彦著「とかくこの世はダメとムダ」講談社刊 所収)
「辞書や事典を私たちは信じすぎる傾きがある。なかには辞書にない言葉なら存在しないと言いはるものさえある。私は辞書にない言葉はなるべく使わないことにしているが、たまには使う。
葉書一枚『まんそく』に書けないというとき、東京ではまんぞくと濁らないでまんそくと澄んで言った。こう言うといかにも『まんそく』に書けない感じが出る。ついこの間まで言ったが、これはたいていの辞書には出てない。したがって間違いだと言われるからもう書かない。こうして語彙(ごい)の一つは減るのである。
(『読売新聞』昭和60年3月6日夕刊)」
(山本夏彦著「とかくこの世はダメとムダ」講談社刊 所収)