「リンゴを切ると変色するという常識」
リンゴを切ると茶色く変色する。これは常識である。しかし、米国のFDAでは遺伝子組み換えにより、切っても茶色くならないリンゴの販売を許可する動きがあるようだ。
人は常識というものを稀に鬱陶しいと思うことがあるようだ。例えば玉ねぎを切ると涙が出る。山芋をすり下ろすと手がかぶれるというのもそうだろう。
それを何故鬱陶しく思うのか、僕は時々疑問に思う。玉ねぎの涙の原因はアミノ酸が混合し硫化アリルが生成されるからなのだが、この硫化アリルには抗菌作用がある。いわゆる生体防御機能だ。山芋で手が痒くなるのは、シュウ酸カルシウムのせいだが、これも生体防御のために存在する。
では、リンゴが茶色くなるのはというと、ポリフェノールの酸化によるものだが、リンゴは切られることで酸化し、抗菌作用を持つ。やはり、カビや病気から防ぐための生体防御機能なのだ。
植物は無駄なことをしない。その植物が変化することには必ず意味がある。そしてその多くが生体防御機能なわけだ。この機能を無効にすることで、その植物に何が起きるかには、人はあまり興味がなく、その機能を停止することで得られるメリットにしか目を向けない。
そうした考えが、どれだけ我々の食文化を危険に晒して来たのかは計り知れない。食品添加物、農薬、化学肥料。そのどれ一つ取ってもメリットばかりが謳われ、それにより狂って行く生態系については無視して来た。
その最たるものが遺伝子組み換え作物である。
遺伝子組み換えリンゴ。茶色くならないことで、カットリンゴが食卓を多く飾ることになるだろう。食品工場や飲食店でも使用されることになるだろう。安全を強調しながら流通されてゆくその食品。
生体防御機能を無効にすることで起こりうるデメリットを押し込めて、開発業者だけが利益を得て、消費者の健康を奪って行くやもしれぬというのに、相変わらず、米国のFDAは呑気に構えているようだ。
※参考記事
「茶色にならない初の遺伝子組み換えリンゴ、米当局が販売認可検討」
http://jp.wsj.com/…/SB1270643581828325442320458021387065005…