6月8日は、Aionさんのお宅を訪問させていただきました。AionさんにはGerman Physiksの会で何度かお目にかかっておりましたが、昨年末、 漸く、拙宅オフにお越しいただきました。その際、ご一緒していたGRFさん、パグ太郎さんが今回も参加です。向かったのは渋谷の松濤。高級の中でも超のつく住宅街で、少し緊張もしましたが、始まってみれば、穏やかな時間が流れることとなりました。一方でこの界隈は、学生自分に下北で飲んで徘徊し、翌朝まで過ごしたことが懐かしまれる場所でもあります。緊張と懐かしさが混在したまま、神泉駅を後にしました。
私が一番の到着でやがてパグ太郎さんが来られました。GRFさんはご自宅の用件が長引いたようで、途中から参加、との連絡が入りました。Aionさんは広大なリビングルームでシステムを組まれています。目を引くのは何と言ってもApogeeの平面型スピーカーですが、他の機器含めて、Aionさんの拘りが伝わってくる構成でした。それらが雑然とではなく、家具のように収まっているのは、オーナーのセンスに依るところかと思います。いきなり音出しではなく、ゆったり歓談してから、オフ会へ移行しました。
本日の個人的目玉Apogee Divaです。Apogeeのスピーカーをリアルに見るのは、実は、今回が最初だったと思います。平面スピーカー自体、なかなか見る機会、聴く機会がありません。大田区YさんのDALI Dacapo、KikiさんのQuad ESLなどが思い出されます。スケール感は随一で、我々の背を余裕で越えています。このSPを受け入れられる部屋が、まず難しいでしょうね。オール、リボン型というのも珍しいです。修理が気になるところですが、現在でも部品が作られているそうです(その場所がオーストラリアと聞いてさらにびっくり)。
デジタル再生の中核はエソテリックのセパレート式でP-02X、D-02Xの組み合わせです。後者はChronosのクロックと共にラックの中に納まっています。一方、アナログの最上流はImmediaのRPM2です。SPIRAL GROOVEの前身のようですね。カートリッジはLyraのHelikon、フォノイコライザーはVendetta ResearchのSCP-2Cの組み合わせです。初めて名前を聞く機器も多かったですが、いずれもAionさんの目に適った機器群です。出どころは多様ですが、銀と黒で揃えられていて、整然と並んでいたのが印象に残りました。
プリアンプです。事前に紹介いただいていた機種から、ゴールドムンドMimesis 2に変更となっていました。Aionさんもかなりのウェルフロート使いです。
ここから先が、更に拘りの世界となります。部屋の特性を把握し、修正するためイコライザ群です。DEQXのHDP-4の他に、ツィータ向けにSonata Op.1というイコライザも併用されています。ツィータの左右差(個体差?)を補正する為、とのことです。鑑賞の途中で、パソコンの画面にて、部屋の特性を測定した結果を見せていただきました。補正のパターンをいくつか記憶できるようでした。私も安価な製品でトライしたことがありましたが、現在は外しています。
パワーアンプもゴールドムンドで、こちらはマルチアンプの構成です。ミッドレンジ/ウーハーをMimesis 28MEが、ツィータをMimesis SR mono 2 Evoが受け持っています。鳴らしにくいとされるApogeeを御するための必然だったでしょうか。
さて、音楽鑑賞です。Aionさんからは事前に「私の好きな音楽」という、有難いテーマをいただいていました。ややもすると音に行きがちなオフ会ですが、私にとっては、ホストの皆さんが好きな音楽を共有するのが最大の愉しみです。以前の会話から、Aionさんがクラシックにお詳しい様子でしたので、クラシック中心を想像していましたが、ジャンルを跨いで多方面の音楽を聴かせていただきました。Aionさんとは世代的にも近いので、いわゆる懐メロも重なります。いい意味で先入観が崩れました。オフ会の面白いところだと思います。
一口にクラシックと言ってもジャンルは様々ですが、Aionさんのお好きな領域は、やはり稀有でした。出だしはフランスのバロックから。シャルパンティエは初めて知り、モンテヴェルディは名前くらいは・・・のレベルでしたが、一旦、音楽が流れれば大丈夫です。解説はパグ太郎さんのphilewebの日記に譲りたいと思いますが、ここでしか聴けない、Aionさんの好きなクラシック像を提示いただきました。平面スピーカーが鳴らす音場表現、個々の楽器の粒立ち感が、室内楽の再生にピッタリはまっていたと思います。
記憶が曖昧ですが、音楽の起源の話題になり、マニアックな音源もご紹介いただきました。西洋の歴史にも詳しいAionさん、パグ太郎さんの会話からは、置いてきぼりでしたが・・・。祈りなのか、音楽なのか、その境界を彷徨うような不思議な感覚でした。
一通りクラシックを聴いた後、カジュアルな路線へ転じました。Aionさんが自ら「ピアソラフリークです」との宣言があり、こちらはアナログで聴かせていただきました。私が勝手に持っているピアソラ像(と言っても、ヨーヨーマ、リベルタンゴという断片的なものですが・・・)を見事に打ち崩していただきました。濃くとドロドロしたピアソラをご紹介いただきました。
続いて邦楽ですが、ここは昭和歌謡一択です。この辺りでGRFさんもタイミング良く?登場されました。ゲストそれぞれの青春時代に合わせた選曲、流石でした。矢沢永吉の「Yes My Love」懐かしいですね。確かにAionさんの言われる通り、コカ・コーラのCMで使われていました。アン・ルイスの「六本木心中」は85年頃にヒットしていた記憶があります。スキー場でもよくかかってました。全般的にLyraのカートリッジ、Helikonに切れを感じました。ロック系に向いている印象を受けました。若かりし頃の加山雄三、布施明をGRFさんも楽しまれたことと思います。
この日の1枚は、これに尽きるのではないでしょうか。オーディオオフ会で「みちのく一人旅」を聴くのは、勿論初めてです。沁みますねぇ。Aionさんの原点、堪能させていただきました。この後、私も三田寛子の「初恋」を登板して、パグ太郎さんが選曲しづらい状況を作ってしまい、すみませんでした。それでも、最後はしっかりとベートーヴェンの難しい弦楽四重奏で締めていただきました。
平面スピーカー=音場表現のイメージを持って臨みましたが、実際に聴くサウンドは音場に限らず、音の細かさ、低域の力感など、聴きどころが多かったように思います。ジャンルを跨いで楽しめる、とても説得力のある音でした。そして、お部屋の大きさを活かした音造りですね。広大なリビングだからこそDIVAが活きますが、裏でのご苦労は想像を超えるものがありそうです。オーディオ経験、スキル、そして何よりAionさんの拘りがサウンドにつながっているのだと思いました。ステサンでしか知らなかったApogeeの音を実際に聴けてよかったです。
オフ会の後は、ご近所のイタリア料理店で感想戦となりました。皆さんの会話のレベルに着いて行くのが大変でしたが、美味しいシチリアの白ワイン、見事な料理と共に楽しませていただきました。既に関東地方は梅雨入りしていましたが、この日は晴れ間が広がりました。お昼から夜まで爽やかな時間が流れました。散会後、夜風を浴びながら、半分学生気分で渋谷までのんびりと歩きました。すれ違う若者を見て、30年の経過を感じた次第です。Aionさん、GRFさん、パグ太郎さん、この度はありがとうございました。