もう一つの鳥取市の近代建築も旧鳥取県立図書館のすぐ近くにありました。

五臓圓ビルです。
大正から昭和初期に最も栄えた中心商店街の智頭街道と二階町通りの交差点にある鉄筋コンクリート造3階建のビル。鳥取市内で現存最古の本格的な鉄筋コンクリート造建築です。1931(昭和6)年に建てられ、施工は旧県立図書館と同じ大阪の新〈アタラシ〉工務所ですが、設計者は不詳です。

一階は薬局の店舗、二階は住居、三階はレストランと喫茶になっていました。

昭和18年の鳥取大震災では建物に影響を受けませんでしたが、昭和27年の鳥取大火では内部を全焼しました。

江戸時代から続く薬種商森下家は藩政時代よりこの地で代々「石見屋」の屋号で生薬等の商いを営んでいた老舗です。初代の頃、僧より伝授された「三心五臓圓」という滋養強壮の家伝薬と各種生薬を代々扱い、日露戦争後は家庭用医薬を、大正には西洋医薬も卸小売する薬種商となり、現在まで営業を続けています。


建物の北角がR状にカーブしています。


建物外側の地面は小さなタイルで覆われています。

平成22年1月には国登録文化財に指定されました。


スクラッチタイルと大理石を張ったモダンで豪華な外観は、智頭街道商店街が最も繁栄した昭和10〜20年代には、街のシンボルとして輝いていたそうです。
いつまでもその姿を残してほしい鳥取の近代建築でした。
2017年青春18春の旅(6)に続く。