6月15日と7月12日に、京都市北区上賀茂狭間町にある深泥池(「みどろがいけ」、昔は「みぞろがいけ」と呼ばれたこともあります)観察会に行きました。
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京都盆地の北端、松ヶ崎と上賀茂の中間あたり、山の麓から湧き出る地下水が、鴨川扇状地の堆積物によってせき止められ、およそ1万年前までに、湿地と池となりました。中程には水生植物が浮き島を作っています。氷河期から続いている池で、その時代の植物が今も生存している貴重な池です。
池には多様な植物が生育しています。ミツガシワやホロムイソウのような寒冷地に分布する植物や、ジュンサイのような各地に自生する植物、タヌキモやモウセンゴケのような食虫植物、オオミズゴケ、ハリミズゴケ、ヌマガヤ、イヌノハナゴケといった高層湿原(ミズゴケ湿原)の構成種が共存しています。約60種ものトンボが生息しており、これは、日本に分布するトンボが約200種いるなかでその4分の1以上が分布していることになります。また、フナ、ヨシノボリ、スジエビ、クサガメ、ニホンイシガメなどの池に生息する動物や、ヒドリガモやルリビタキを始めとして、晩冬期を中心に170種の野鳥の飛来が確認されています。1930(昭和5)年には、日本で初めてミズグモが発見されるなど、希少動物にとっての数少ない生息地でもあります。
1927(昭和2)年6月14日に、植物群落が「深泥池水生植物群」として国の天然記念物に指定され、その後、1988(昭和63)年に「深泥池生物群集」として生物群集全体に対象が広げられました。また、2002(平成14)年に発刊された京都府レッドデータブックには「要継続保護」として掲載されています。
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6月の観察会では、ジュンサイの実物と花の写真を見せてもらいました。花は紫色、水面に浮かんでいる楕円形の葉の下の水中に新芽があり、これがヌルヌルの粘液で覆われていて、食用にされるところです。深泥池のジュンサイは、北大路魯山人が「京の洛北深泥池の産が飛び切りである」と評したものでした。北大路魯山人はこの池の西側、上賀茂神社の社家の家に産まれました。
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池の南西端から水が流れ出る場所があります。雨がたくさん降って池の水量が増えると堤防を越えて水が流れ出るようになっています。
池に流れ込む川はなく、池の水は湧き水と雨による水だけで、弱酸性が保たれていますが、東側の「妙」の山の頂上にある松ヶ崎浄水場の貯水池の水道管が老朽化して、水道水が池に流れ込み、アルカリ性が強くなってきました。ジュンサイはアルカリ性の水には弱く、ほとんど見られなくなった時期もありましたが、水道水の流入を止めたことによって、再び初夏から秋にかけて水面に見られるようになってきました。
7月の観察会では、ヒメコウホネについて聞きましたが、花の咲いている場所は岸からは遠かったので、写真でしか見ることができませんでした。代わりに、近くに咲いていたのはタヌキモの花でした。金魚藻のような水中の葉から水面上に伸ばした茎に小さな黄色い花を咲かせていました。水中の茎には丸い粒状の塊(捕虫嚢)がたくさんあり、水圧を変化させることによって水中の動物プランクトンなどを水と共に吸いこみ、栄養にする食虫植物です。
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ジュンサイの葉と、所々に突き出しているタヌキモの花。