次々とホテルや宿泊施設に浸食されている京都と同じように、奈良でも新たにホテルを建設しようとする動きが起こっています。しかも、それは自然豊かな奈良公園の中の県有地なのです。
2017年6月18日に奈良のホテル建設予定地を現地の方達の案内でウォッチングしに行きました。
近鉄奈良駅から県庁の前を通り東に進んで行くと、大きな邸宅地が広がる名勝奈良公園の一帯に入って行きます。この先、右側の一帯が登大路町の吉城園(よしきえん)周辺地区で、奈良県がホテルやパーティー会場を整備する計画を立てています。
この道の両側全てを含む広大な土地で、知事公舎、興福寺塔頭世尊院、国際奈良学セミナーハウス、きんでん健康保険組合奈良保養所、青少年会館、副知事公舎、奈良県警本部長秘書官宿舎、吉城園主棟・茶室があります。
江戸期の寺院、大正期の知事公舎、吉城園、昭和初期の副知事公舎など、学術的に貴重な建物群なので、調査保存管理が必要なのに、壊されて高級ホテルが建てられる、にぎわいの地区にしようと、開発が計画されています。東京の不動産開発大手、森トラストが担うのだそうです。
もう一箇所は、奈良公園の南端付近にある約1.3ヘクタールの県有地、奈良市高畑町「裁判官官舎跡地」で、かつて志賀直哉ら文人が集まった実業家の邸宅がありましたが、今では大正期の庭園だけが残っている地です。浮見堂のある池の南側、
この森のある一帯です。
塀に囲まれていますが、隙間から覗いて見ると自然のままの庭がありました。鹿が入っていないので、ムササビや野鳥など多くの動植物が生息していると思われ、学者による環境影響評価が行われる必要があると言われていました。
ここの事業者、東京の大手不動産ヒューリックは、京都でも南禅寺参道の無鄰菴、瓢亭横にホテルを建てようとしています。
住民達は「豊かな自然を壊すな」と、「奈良公園の環境を守る会」を結成。建設中止や見直しを求める約4万4千人分の署名を集め、2018年12月、建設差し止めを求め奈良地裁に提訴しました。「国指定の名勝」「文化財保護法」「古都保存法」「歴史的風土特別保存地区」「奈良市風致地区条例、第一種風致地区」に指定され、厳しい規制で守られてきたこの地に、宿泊施設の建設を認めることは許されないと主張しました。
しかし、2019年2月26日、住民の反対を無視して、奈良県とヒューリック株式会社は奈良公園の木々を伐採し、高級リゾートホテル建設工事に着手しました。奈良公園の木々が次々と伐採され、富裕層を対象にした高級リゾートホテル建設に向けて、工事が開始されました。
壊された自然環境は二度と元には戻せません。奈良公園は「国の名勝」で「都市公園」です。万人に向けてオープンであるべきこの場所に、富裕層を対象としたホテルは本当に必要なのでしょうか?