wakabyの物見遊山

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僕の読書ノート「定年前と定年後の働き方(石山恒貴)」

2024-11-23 08:04:59 | 書評(その他)

 

私は、今年の9月に60歳で定年退職になり、10月からは同じ会社で再雇用によるエキスパート社員として働いている。このような働き方が最善なのかどうかはわからない。収入の面と自らのスキルの活用という面では、ある程度理にかなった働き方だとは思うが、定年後に他にどんな働き方があるのか知りたいと思い本書を読んでみた。

本書の章の構成と、私なりに気になった点を下記に記したい。一つの組織内での働き方を提案している第3・4・5章より、より多様な形態での働き方を提案している第6章以降がおもしろかった。

第1章 シニアへの見方を変えるーエイジズムの罠

・これまでの日本の実態では、50代以降のシニアの働き方を補助的なものとしか考えていなかった。それを象徴する言葉が「福祉的雇用」である。企業はシニアが職場の戦力として中核になるとは、さらさら考えていない。しかし、社会的責任としてシニアを雇用する必要がある。そこで、本当は職場でさほど必要とされていない業務を作り出し、しぶしぶシニアを雇用する。これが、これまでの福祉的雇用の意味だった。これからの日本社会では、一刻も早く福祉的雇用の考えを脱し、シニアを職場の中核と考える必要がある。結晶性知能も流動性知能も定年前後の60代では高く維持され、明確に低下していくのは80代以降だとする研究も示されている。定年年齢の60歳以降に急にシニアの能力が衰えるという見方は非現実的である。

第2章 幸福感のU字型カーブとエイジング・パラドックス

・幸福は、ハピネス(感情)、サティスファクション(生活評価)、ウェルビーイング、エウダイモニアという4つの言葉で使い分けられている。エウダイモニアとはアリストテレスが唱えた考え方であり、観照的生活を意味し、哲学者のためのような生活であり、善を目指して生きることなのだという。言い換えると、人生における意義や目的を考えながら生きるということになる。本書の結論は、エウダイモニアの実現こそが、シニアの働き方思考法なのである。

・幸福感は年齢にともなってU字型カーブを描く。つまり、シニアから加齢にともない幸福感が高まっていく。シニアになり加齢していくと、様々な喪失や衰えがあるはずなのに、幸福感が高まっていくことは矛盾(パラドックス)と受け取れるので、エイジング・パラドックスと呼ばれる。エイジング・パラドックスを説明する様々な理論の中に、シニアの幸福感を高める働き方思考法を実現するヒントがあると考えられる。

第3章 エイジング・パラドックスの理論をヒントに働き方思考法を考える

(SSTとSOT理論の説明があるが省略)

第4章 主体的な職務開発のための考え方ージョブ・クラフティング

(ジョブ・クラフティングの説明があるが省略)

第5章 組織側のシニアへの取り組み

(組織からシニアへの権限移譲の大切さの説明があるが省略)

第6章 シニア労働者の働き方の選択肢

・シニアが何をしたいかという選択は、個人が自由に行えばいいと考える。何もしないという選択肢ももちろんある。

・定年後の仕事のあり方には、現職継続、転職、起業の他に、時間や場所に縛られない柔軟な就業形態であるフリーランスという選択肢が付け加わる。

・さらに、モザイクという考えを選択肢に加えることができる。現役世代は、家計を支える観点からも、フルタイム労働でしっかり収入を確保したいというニーズが強い。しかしシニアには、働きたい時間、働きたい場所だけで働くというニーズもある。そこで各人の就労をモザイク的に組み合わせ、それによって複数人でひとり分のフルタイム就労に相当する仕事に対応するという発想である。

・モザイク型就労が進んでいくと、フルタイムで働く従来型の現職継続、転職、起業、フリーランスにくわえて、モザイク型の現職継続、転職、起業、フリーランスという選択肢が誕生する。たとえば、現職継続の場合、定年再雇用の際には、週5日ではなく、週2~3日だけ働く、午前だけ働く、といういうようなモザイク型現職継続が可能は企業はすでにある。そうなると、もっと選択肢は増える。モザイクの組み合わせである。モザイク型現職継続+モザイク型フリーランス、モザイク型転職+モザイク型フリーランスなどの組み合わせだ。シニアの働き方の選択肢は、より多様化が進んでいくと思われる。

・フリーランスの区分の一つにギグワークがある。デジタル・プラットフォームを利用した単発の仕事がギグワークと呼ばれるようになった。リモート性や裁量性の高いギグワークとして、スキルシェアサービスがあり、スポットコンサルティング(ビザスクなど)、得意なスキルのシェア(ココナラなど)、講師スキルのシェア(ストアカなど)などがある。

・モザイク型フリーランスとして、オンライン・リモート副業がシニアの新しい選択肢になり得る。副業については「本業は雇用+副業も雇用」という組み合わせだけでなく、「本業は雇用+副業は業務委託契約(=フリーランス)」という組み合わせが一般的である。オンライン・リモート副業は大別すると、中堅・中小企業の経営者の相談相手となるメンター型と、一定の期間(たとえば3か月や半年)を目途に具体的に定めた目標をプロジェクト的に達成していくタスク型に区別できる。オンライン・リモート副業の普及を先駆的に推進してきた企業が、「JOINS」である。

第7章 シニアへの越境学習のススメ

・越境学習、つまりアウェイでの学習がシニアにとって有効だとしている。理由として、自分にとって意義ある目的が見つけやすくなること、多世代かつ多様な人々と対話をすることによって年齢・地位・役職の上下にこだわらないコミュニケーションができるようになること、葛藤を経験し自己調整できることの3つがあげられている。

・チャールズ・ハンディは、人生の役割として4つのワークを定義した。4つのワークとはそれぞれ、賃金を得るための活動である「有給ワーク」、家庭の様々な活動を行う「家庭ワーク」、社会や地域に貢献する「ギフトワーク」、多種多様な学習活動を行う「学習ワーク」である。越境学習におけるアウェイの場とは、この4つのワークの中で、自分がアウェイと感じられる場はすべからく該当する。

・シニアの越境学習の場の事例として、「はちおうじ志民塾」、「八王子市市民活動支援センター」、「川崎プロボノ部」が紹介されている。同様の組織は、それ以外の各地域にもあるのだろう。

第8章 サードエイジを幸福に生きる

・シニアの働き方にとっては「個人事業主マインド」が重要だという。個人事業主マインドとは、雇用されているか否かに拘わらず、個人事業主のような気持で働いていくことだ。そのためには収入は細く長く考える、働き方は組み合わせる、蓄積してきたスキル(専門性)を重視することが大事だという。

・そのようは働き方思考の醸成や専門性・スキルを棚卸するために、シニアがキャリアコンサルタントや教育機関を活用することも望ましい。筆者が関わってきた団体がいくつか紹介されている。「シニアセカンドキャリア推進協会」は、シニアのセカンドキャリアに関するセミナーや研修、勉強会を実施している。「ライフシフト社」は、80歳まで現役で活躍するために、シニアに様々な研修プログラムを提供している。「フリーランス協会」は、自分のキャリアを自律的に歩みたいと考える全ての人のためのインフラとコミュニティづくりを目指す団体である。「インディペンデント・コントラクター協会」は、インディペンデント・コントラクターと呼ばれる専門性の高い期限付きの業務を請負契約によって働く人々の場づくりの団体である。


僕の読書ノート「山と溪谷 2024年3月号」

2024-06-01 08:14:36 | 書評(その他)

 

特集の「歩いて治す膝痛」を読みたくて購入した。私は山に登って下山するとき、必ずと言っていいほど右膝が痛くなる。なんとか膝が痛くならないようにする方法はないものかと以前から考えていた。本書を読んでみると、痛みには、膝周りに外傷や病気がある「急性疼痛」、それ以外の「慢性疼痛」の2つに分類され、後者の中で普段の生活には支障がない場合は、筋力の向上や、負荷の軽減によって改善できるということである。

第1部の「歩いて体をつくる」では、膝痛に効くトレーニングの方法が提案されている。1つ目は山歩きトレーニングで、まずは「裏山トレーニング」で登り下りを繰り返す。例えば、標高差50m程度の山を4~5往復するのを週2~3回行うと、月に2000mの山を往復したのと同じ登下降量になる。それに慣れたら、「低山トレーニング」で、例えば標高差400mの山を月5回登り下りすることで、月間2000mの往復になる。そして、2段階のトレーニングの後に、憧れの山を登山するという流れだ。個人的には、こんなに頻繁にトレーニングはできそうにないので、「裏山トレーニング」を月2回程度行うことから始めてみるか。

2つ目には、日常トレーニング&ストレッチで、下半身の部位別に、週3回のトレーニングと毎日のストレッチの方法が提案されている。自分の弱いと思われる部位・筋肉から試してみたい。

3つ目には、登山時に行う膝痛予防&対処術で、登山の前に体を温めたり、登山の途中の歩き方や、登山の途中でできる手当てが説明されている。

第2部の「負荷を減らして歩く」では、膝への負荷を減らすための、「正しい歩き方」や「道具の活用法」が紹介されている。「正しい歩き方」では、登りも下りも、体軸や膝をまっすぐ伸ばすことが基本になっている。「膝痛予防・対策グッズ」としては、インソール、トレッキングポール、サポートタイツ、膝サポーター、キネシオテーピングテクニックの利用が提案されている。私もすでにトレッキングポールや膝サポーターは利用しているが、他のグッズも追々使ってみたい。


僕の読書ノート「横浜・川崎・鎌倉凸凹地図」

2024-04-13 07:51:28 | 書評(その他)

 

もともと、その土地を散歩して気晴らしするのが好きだったが、近年は土地の高低や、川の流れを意識して歩いている。土地の高低が気になるようになったのは、中沢新一氏による「アースダイバー」の影響であり、川の流れが気になるようになったのは、岸由二氏や柳瀬博一氏による「流域思考」の影響である。土地がどのような形をしているか、そのまとまり方によって、生物の生態系や、人の社会・文化や精神性が形づくられるということである。そして、人の手によって開発された後でも、その痕跡や影響は残り続けるのである。

本書は、土地の高低が緑色から黄色へと色分けされており、傾斜のきついところは黒い影のように塗られている。また、川については支流や暗渠も含めて詳細に書かれている。城跡・古墳などの旧蹟や寺社もしっかり書かれている。一方、現在の建築物などはその名称の記載がかなり省かれていて、地形や歴史的遺物を見せることに特化している。したがって、本書をガイドとすることで、今までよくわからなかった川筋(暗渠)をたどることができたし、これからの散歩がとても楽しくなりそうである。

一点、難点をあげるとしたら、文字のフォントが小さいことである。おそらく本書を利用するような読者層は、シニアの方が多いと思われ、そうした人たちは老眼が進んでいる場合が(私も含めて)多いだろう。もう少し文字が大きかったら見やすかったのに、というのが一つ残念な点である。


僕の読書ノート「上高地ハイキング案内(山と溪谷社 (編集))」

2022-10-08 06:58:58 | 書評(その他)

11年ぶりに家族で上高地に行くことになったので、買ってみた。山と渓谷社が出してるだけあって、山好き向けの作りになっている。よくある観光ガイドのような、食べ物、土産、おしゃれな店などの紹介は少なくて、上高地の土地、自然、歴史、歩き方などを中心にまとめられている。もちろん、旅に必要な、交通機関や宿泊等の情報もちゃんと載っている。

そしてキレイな写真が満載である。とくに上高地をとりまく山々を高いところから俯瞰して撮った写真は位置関係がよくわかって有用なうえ、美しい。写真が見開き2ページに掲載されていて、次の見開き2ページには写真に関連した解説文が書かれているという構成もいい。そんな、いいことづくめのガイドである。今私たちが見ている上高地の風景は、地球のダイナミックな物理的活動の間のつかの間の静寂だということがわかる。少しだけ、上高地のうんちくを下記に引用しておきたい。

1万2000年以上前、かつて飛騨(岐阜)側に流れ下っていたという古梓川が火山活動で堰き止められた。そこに誕生したのが、上高地湖という堰止湖。そして、5000年という歳月を通して、堆積が続き上高地の平坦な地形が生まれた。

大正池は、大正時代に起こった焼岳の噴火により梓川が堰き止められてできた。焼岳の山腹で目をひく大きな地溝(亀裂)は、噴火に伴う地震の3回目にできたらしい。焼岳の標高1800m地点に長さ270m、幅35mの大亀裂が生じ、大音響とともに噴煙と泥流が噴出。流れ出た泥流の勢いは、梓川を越えて霞沢岳の麓に衝突してはね返ったほどの勢いがあったという。

涸沢の紅葉シーズンは、国内の山岳紅葉を代表する風景だ。涸沢の紅葉を見た人は、「涸沢の紅葉を見ずして穂高を語ることなかれ」とか「冥土の土産に....」と口にするという。


僕の読書ノート「クロワッサン特別編集 終活読本」

2022-05-28 11:50:08 | 書評(その他)

両親や家族が亡くなったら何をすればいいのか、ふだんから何を準備しておけばいいのか、そして定年が近づいてきた自分の終活として何をやればいいのか、ざっと知識を得たかったので、書店でよさそうな本を探してみた。亡くなった後の手続き類が詳しく書かれた本や、記入式の終活ノートのような本は多く出ている。一方、本書は、終活について広く浅く、全体がつかめて、カジュアルな雰囲気でまとめられているので、こういったことを初めて知りたいという私のような読者に向いているよい本だと思った。両親にも見てもらいたいと思って、amazonで注文して贈った。まさに、両親とは終活の相談をしている最中なのだ。もちろん、お互いに安心して長生きしてもらうことが目的だ。

本書の全体監修をしているのは、終活カウンセラーの武藤頼胡(よりこ)さんである。構成は、1章:ものを残す・手放す、2章:財産の相続手続き、3章:葬儀・墓をどうする?、4章:心も整理する、の4つの章からなっている。どれも、着実に考えておかないといけないことばかりだ。

すぐにできそうなことを引用してみた。ものの整理として、「使う/使わない、好き/嫌いで置き場所を分ける。使っていないものは段ボールにまとめておいて、1年くらい経ったときに一度も使っていなければ捨てる。使っていないけれど好きなものは、目に留まるところに飾ってもよい

パソコンのファイルの整理として、「ダウンロードしてどこに保存したか忘れてしまったファイルは、ダウンロード・フォルダーに入っている可能性がある。ここを確認していらないファイルはゴミ箱に移す。ゴミ箱も空にする」

早めに知っておいたほうがいいことがある。認知症になってから書いた遺言書は無効になってしまう。そのため、両親のどちらかが認知症になったら、認知症でない親の遺言書を準備しておくことが大事である。