wakabyの物見遊山

身近な観光、読書、進化学と硬軟とりまぜたブログ

そのオスネコ、凶暴につき

2022-08-27 08:06:27 | 猫・犬

「どうして私は、まず動物たちとの生活のいやな面から筆をおこすのだろう?それはこのいやな面をどれくらいがまんできるかによって、その人がどれくらい動物を好いているかが、わかるからなのだ」

これは、動物行動学者コンラート・ローレンツの著書「ソロモンの指輪」の冒頭の文章です。この文章にしたがえば、私はそんなに動物を好いていないということになるのかもしれません。自分ではネコ好き、動物好きと思っていたのですが、そんなことを言ってられないほどのがまんできない動物のいやな面にさらされてしまったからです。

 

実家の飼いネコのことなのですが。去年の7月ごろ、実家の玄関前にいた生後1、2ヵ月くらいのオスネコとして保護されて、飼われています。だいぶヤンチャなネコでしたが、去年の夏や今年の2月ごろまでは私が訪問してもまだなんとか大丈夫でした。ところが今年の5月に行ったときには、いきなり右腕につかみかかって引っ掻かれて、着ていたシャツがボロボロになり、皮膚も引っ掻き傷で血まみれになり、夏になっても傷跡が残ったままです。最近は夜中になるとうなりながら2、3時間も徘徊を続けるということで、父が去勢させました。そして、8月に私が実家を訪問したら、やっぱり飛びかかってきて左手を引っ掻かれました。ネコの爪を切っておいてもらったのですが、それでも引っ掻き傷が残りました。危険なので、急遽ケージに収容してもらいました。私が近づくと、怒り狂って大きな怒声をあげています(上の写真)。こんな凶暴なネコになってしまうとは思いませんでした。

実家の家族によれば、家族にはこんな手出しをしたことがないと言います。それはそうでしょう。家族に手を出したら、追い出されてしまうことくらいはわかるのでしょう。ヤクザだって、身内に手を出したら、破門状が出されてこの世界では生きていけなくなってしまいます。

私もいろんなネコを見てきました(とは言っても10本の指におさまる程度ですが)。いつになっても人見知りするネコ、人たらしネコ、家の守り神のようだけど客人にも優しいネコ、ネコには絶対慣れないけど人の愛情が必要なネコ、神経質なネコ、人にもネコにもフラットなサバサバしたネコ、といろんな性格のネコがいましたが、ここまで攻撃的で排他的なネコは初めてです。

ネコには多様性があります。これだけいろんなタイプのネコがいるからこそ、人に飼われても、野良でも、この地球上でいろいろな環境に適応して繁栄してきたのだと思います。

そして思ったのは、育ちが影響しているだろうということ。飼いネコとして生まれたのなら、人に慣れ親しんでいるので、他人であってもそこまで攻撃的にはならないでしょう。一方、野良ネコとして過酷な環境で生まれたのなら、人は警戒すべき相手として反応するようになるのでしょう。生まれてから最初の時期は、周りの状況を感知しながら脳が最も可塑的に発達している時なので、環境によって性質が大きく変わってきそうです。

アビゲイル・タッカーの著書「猫はこうして地球を征服した」によれば、昔は、人類はネコの食糧だったそうです。ネコ科の動物たちは人類の祖先を洞窟に持ち込んだり、森のなかでガツガツ食べたり、内臓を抜いた死骸を巣穴に隠したりしていました。実際、ヒト属のものとされる世界最古の完全な形で残されていた頭蓋骨は、絶滅した巨大チーターのピクニック場のような洞窟だったらしいです。実家のネコには、そんな野生の血が濃く現れているのかもしれません。


僕の読書ノート「なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論(野村泰紀)」

2022-08-20 08:04:38 | 書評(生物医学、サイエンス)

宇宙論の最先端ではどこまでわかってきたのか、ブルーバックスでは類書がたくさん出ているが、究極の宇宙論の本が出たと思ったので本書を購入した。私にはまったくの専門外だが、ただただ興味が引かれた。そして、想像力の範囲を超えすぎているので、無機質な数字として受け入れるしかない世界であった。どういう理屈でそのような結論になるのか、説明があってもあまり理解できないところも多いが、我々素人はそういうところにこだわらず、わかったつもりでスルスル読み進めていったほうが楽しめると思った。

執筆者はカリフォルニア大学バークレー校教授で、バークレー理論物理学センター長の野村泰紀氏である。章ごとに、私なりのノートを書きとめたい。

第1章 現在の宇宙

・現在の宇宙は、エネルギー密度で見た場合、約69%が加速膨張を引き起こすダークエネルギーで占められ、物質は残りの約31%にすぎない。その物質も、約26%はダークマターと呼ばれる正体不明の物質であり、私たちの知っている標準模型の粒子は全エネルギー密度の約5%を占めるにすぎない。これらの粒子も、星や銀河として存在しているのは約0.4%しかなく、残りはガスかニュートリノである。宇宙のエネルギー密度の大部分は正体不明のものであり、我々が見ている星や宇宙は、ほんの一部しか占めていないのだ。

第2章 ビッグバン宇宙Ⅰー宇宙開闢約0.1秒後「以降」

・宇宙誕生38万年より前は、温度が高すぎて、原子核と電子がバラバラに飛びまわっており、光は電荷を持った電子に散乱され、まっすぐ進めなかった。誕生から38万年が経つと、温度が3000度以下になり、原子核と電子は現在のような原子の状態になり、光は散乱されなくなって直進できるようになった。この時点で、宇宙が光に対して不透明から透明な状態に変わった出来事を「宇宙の晴れ上がり」という。現在私たちが宇宙背景放射として見ているのは、この誕生後38万年の時点の宇宙から伝播してきた光(電波)なのである。

第3章 ビッグバン宇宙Ⅱー宇宙開闢約0.1秒後「以前」

・宇宙誕生約1~10分で温度が約1億度、10⁻⁶秒が約1兆度、10⁻¹²秒が約百兆度で、ダークマターの量はこの時期に決まったと考えられている。

・ダークマターの最有力候補の1つとされているのが、ウィンプである。ウィンプとは、特定の粒子を指すものではなく、私たちの知る粒子に働く弱い力(β崩壊を司る力)と同程度の強さの相互作用をする、安定な粒子の総称だという。ウィンプの質量は、陽子の質量の100~1000倍ほどである。ダークマターの直接検出実験や、ウインプを加速器で作る実験が、世界各地で行われている。ヨーロッパにある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、100を超える国から1万人以上の研究者が参加して、1兆円以上の資金を投じて行われている超国家プロジェクトである。

第4章 インフレーション理論

・ビッグバン宇宙論によれば、私たちのこの宇宙は、その初期にはほぼ完全に一様で超高温高密の世界だった。そして私たちやその周りの世界を構成する通常の物質は、反物質との対消滅を逃れたわずかな「残りカス」であり、現在の宇宙の全エネルギー密度の数%を占めるにすぎない。また、銀河、星、ひいては生命等を含む宇宙の全ての構造の起源は、宇宙初期に存在したたった10万分の1程度の密度揺らぎだった。

・宇宙はなぜここまで平坦なのかを説明するために、インフレーション理論が生まれた。宇宙は高温高密のビッグバンの状態になる前に、インフレーションと呼ばれる指数関数的、加速膨張の時代を経た。この爆発的加速膨張は、私たちが現在観察できる宇宙をほぼ完全に一様かつ平坦にしてしまう。インフレーションが起こった時期は宇宙誕生後10⁻³⁸秒から10⁻²⁶秒くらいの間だったと考えられている。

第5章 私たちの住むこの宇宙が、よくできすぎているのはなぜか

・相対性理論によれば、質量ゼロの粒子というのは、自然界で許される最大の速さで、常に動いている。そうした粒子として、光(電磁波)、重力子があり、速度は光速である。

・現在の宇宙のように空間が膨張、しかも加速的に膨張していれば、その空間の膨張の効果が光の伝播する効果に打ち勝って、AからのシグナルがBに到達できないという状況があり得る。このようなことが起こるのは、シグナルを発した時点のAB間の距離がある程度以上の場合となる。これを、「遠くの銀河は地球から光速より速く遠ざかっている」と表現することがあるが、「空間自体の膨張の速さは、物理的なシグナルの伝播と違って、光速に縛られることはない」と理解することができる。 

第6章 無数の異なる宇宙たちー「マルチバース」

・真空のエネルギー密度は、量子力学で理論的に予想した数値に対して、観測で見られた数値が120桁近く小さいという矛盾があった。ここで、宇宙はたくさん存在すると仮定する。異なる宇宙の種類が10¹²⁰以上あれば、その中のいくつかの宇宙はたまたま小さい真空のエネルギー密度、すなわちその内部に(我々の宇宙のような)構造が生まれ得る範囲の真空のエネルギー密度を持つだろうと考えられる。そして、銀河や星、生命といった構造はこのような「ラッキーな」宇宙にのみ生じ得る。

・これまで統合が難しかった電磁気力の量子理論と重力理論をまとめて記述できる、ほぼ唯一の完全な量子重力理論である超弦理論が、1980年代に提唱された。超弦理論では、時空の次元の数は、空間9次元、時間1次元の10でなくてはならない。これは、私たちが知覚する時空が4次元であるという事実と矛盾はしない。空間の中のいくつかの方向への広がりが、その大きさが知覚できるサイズよりはるかに小さかったならば、その方向に対応する次元は「小さすぎて見えない」ということになる。そうした次元を余剰次元という。余剰次元の大きさは、10⁻³⁴m程度と推定されている。原子核の半径が大体10⁻¹⁵mであることと比較しても、いかに小さいスケールかがわかる。

・時空では永久に加速膨張を続ける「背景」の中に、無数の泡宇宙が生み出し続けられている。その泡宇宙の種類は、超弦理論によると10⁵⁰⁰かそれ以上にも上り、それぞれの宇宙において、素粒子の種類、質量、真空のエネルギー値、空間次元の数に至るさまざまな性質が異なっている。私たちが住んでいる宇宙は、この無数の泡宇宙の1つにすぎない。

エピローグ~私たちの宇宙の将来

・私たちの住むこの宇宙の未来はどうなっていくのだろうか?私たちの銀河系は約40億年後にはアンドロメダ銀河と衝突、合体をして1つの大きな銀河になる。近傍の墓の銀河もこの巨大銀河にのみ込まれる。しかし、銀河の中の恒星同士の距離は非常に離れているので、恒星同士が衝突することはまずない。私たちの太陽は、50億年ほどもすれば燃え尽きて、白色矮星と呼ばれる小さな天体になってしまう。一方、私たちの銀河系から十分離れたところにある銀河は巨大銀河に吸収されることなく、宇宙が加速膨張を続けることによりどんどん遠ざかっていく。そして数百億年後に、それら全ての遠ざかる速さが光速を超えることになり、永遠に視界から消えてしまう。そして、このはるか後、およそ10²²億年後、この巨大銀河も重力により太陽質量の10¹⁵倍、半径300光年程度の巨大なブラックホールへ崩壊してしまう。そしてこれより先、宇宙にはこのブラックホールがのみ込めるものは何もなくなり、10¹⁰⁰億年かけてゆっくりと蒸発していくことになる。その後には、宇宙はただ加速膨張を続けるだけの「からっぽ」の空間になってしまう。マルチバース理論によれば、私たちの宇宙はどこかの時点で別の宇宙に崩壊してしまう。しかし、それがいつなのかは、現在の理論では計算できないという。

現代の宇宙論ではそういうとんでもないことになっていたのかと初めて知った。どんなに極端な値でも、無限といわずに、ちゃんと数字で表せるのである。読んでよかったと思う。


夏の雲が好き2

2022-08-13 19:57:59 | つぶやき

去年夏の「夏の雲が好き」に続いて、今夏も気になった雲の紹介をしたいと思います。

 

この雲は直線的に放射して見えます。後ろ側にある夕日からの光線でこう見えてるのでしょうが、それにしても不思議です。

 

これはめったに見たことのない三角形の雲。

 

なんでもない雲ですが、夏は、空の青さと雲の灰白色のコントラストが強くてこわい感じがします。

 

先日、茨城の実家に帰省するときに水戸線の車窓から見た雲。鬼怒川の向うのほうで積乱雲が発達しています。このあと、走る車窓から雲の観察を続けます。

 

てっぺんが平らになってきました。雲の上部が成層圏(10~12 km)にぶつかったようです。

 

さらにてっぺんが広がっていきます。


あつい夏におすすめしたい音楽・第2弾

2022-08-06 07:27:14 | 音楽

「あつい夏におすすめしたい音楽・第1弾」を、2018年8月4日にアップしてから4年が経ってしまいましたが、第2弾をご紹介したいと思います。 

 

1枚目が、2022年2月にリリースされたビーチハウスの8枚目のアルバム、ワンス・トワイス・メロディー。バンド名からして夏らしくて、軽いイメージがありますが、音はポップながら、けっこうシリアスでマニアックです。フランス人女性とアメリカ人男性がアメリカで結成したデュオで、ジャンルはドリームポップとよばれています。本人たちはそういうカテゴライズされることを望んでいないようですが。私は、シド・バレットを始め、サイケデリックなポップ・ロックがとても好みなのですが、最近はそういう方向性の音楽をドリームポップとよんだりするようです。

このアルバムのPVは、アニメーションと歌詞が付いていて、音と映像を楽しみながら歌詞も追えます。この夏、はまっています。

BEACH HOUSE - ONCE TWICE MELODY (LYRIC ANIMATION)

 

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ドリームポップという言葉ができる前から、ドリームポップ的な音楽を作っていたジョイジッパー。こちらは、ニューヨークの男女デュオです。このジャンルは男女デュオが多いんでしょうか。このジョイジッパーというタイトルのアルバムは、2000年にリリースされた1枚目のアルバム。CDに付いていた紹介文で、カヒミ・カリィが「聴いた瞬間に引き込まれてしまった!この1枚で退屈な夏は何処かへ消えて、それは忘れられない時間に変わるでしょう」と書いています。ヴェルヴェットアンダーグラウンドの1枚目のような甘美なイリュージョンが描かれています。

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このアルバムの後にも、2003年、2005年と、2枚のアルバムを出していたのですが、ここ15年以上音沙汰がありません。どうしたのでしょう?と思って、YouTubeを探していたら、こんなのが見つかりました。ロックダウン中の録画ということなので、比較的最近のもののようです。キャンプのテントの中で、息子さん?もいっしょに映っています。彼ららしい、ルー・リードばりの曲です。ニュー・アルバムが待ち遠しいです。

Joy Zipper - Chasing Time