wakabyの物見遊山

身近な観光、読書、進化学と硬軟とりまぜたブログ

東京散歩 その15-花に嵐のたとえもあるさ・・・

2021-03-27 13:36:28 | 東京・川崎

花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ 井伏鱒二)

「ポケットに名言を(寺山修司)」より

 

3年近くにおよんだ東京・市ヶ谷での勤務が3月末で終了し、神奈川県の職場に戻ることになりました。仕事が早めに終わったときに、ウォーキングをかねて近辺を散策した様子を「東京散歩」シリーズとして紹介してきましたが、 とりあえず今回で終わりにします。行きたかったけれど、まだ行けてなかったところ、例えば「東京カテドラル聖マリア大聖堂」などもありますが、機会があれば休日にでも行ってみたいと思います。また、まだブログで紹介していない場所の写真も残っていますので、ネタ切れのときにはひっぱり出してくることがあるかもしれません。

もう一つ「ポケットに名言を(寺山修司)」から、

人間わずか五十年、化転(けてん)のうちにくらぶれば、夢幻(ゆめまぼろし)の如くなり (織田信長)


哺乳類進化研究アップデート No.5ー哺乳類進化の研究法ー化石か分子か①

2021-03-20 22:26:29 | 哺乳類進化研究アップデート

今回は、トップジャーナルからの論文紹介ではなく、昨年、日本の学術誌に掲載された哺乳類進化の研究の進展についてまとめられた特集を紹介したいと思います。日本哺乳類学会が出している哺乳類科学という雑誌に掲載された下の3つの総説です。1つ目は特集の巻頭言、2つ目は古生物学(化石情報)による研究の進展、3つ目は分子系統学(ゲノム情報)による研究の進展についてまとめられています。もともと、古生物学はおもに大学の理学部の地学科(地球科学)、分子系統学は理学部の生物学科(生命科学)が細々と扱っている(お金になりませんので)研究分野で、お互いにあまり交流もないし、両者を併せて勉強する機会も少ないと思います。私自身、もともとどちらの分野もそんなに詳しくなく、最近になって「わたしは哺乳類です(リアム・ドリュー)」を読んで、哺乳類が「アフリカ獣類(アフリカ起源)」「異節類(南米起源)」「ローラシア獣類(ユーラシア、北米起源)」「真主齧類(ユーラシア、北米起源)」と、大陸ごとに分けられるのだと知って衝撃を受けたくらいです。これまでの常識であった形態による分類、ネズミはネズミとしてまとめておけばいいでしょ的な分け方は通用しないことが分かってきたのです(現在の分類法ではネズミは、真主齧類の齧歯目、ローラシア獣類の新無盲腸目、アフリカ獣類のハネジネズミ目とアフリカトガリネズミ目に分断されている)。今回は、私の勉強のためもあり、2つの研究分野それぞれの考え方、共通点、相違点などを確認してみたいと思います。

1.西岡佑一郎.哺乳類科学,60(2):249,2020「特集「哺乳類高次分類群の拡散―分子系統学と古生物学の最近の進展―」の企画にあたって」

2.西岡佑一郎,楠橋直,高井正成.哺乳類科学,60(2):251-267,2020「哺乳類の化石記録と白亜紀/ 古第三紀境界前後における初期進化」

3.長谷川政美.哺乳類科学,60(2):269-278,2020「分子情報にもとづいた真獣類の系統と進化」


まずは、1の巻頭言「特集「哺乳類高次分類群の拡散―分子系統学と古生物学の最近の進展―」の企画にあたって」から入っていきましょう。

哺乳類学における大きな課題の一つは、原生種、化石種含めて、それぞれの目が恐竜絶滅前(中生代)に出現したのか、絶滅後(新生代)に出現したのかということです。最近は、哺乳類のすべての原生目は新生代に出現したという意見が受け入れられているそうですが、中生代の哺乳類がどんな生き物だったのかといった知識はあまり周知されていないので、今回、真獣類(有胎盤類)全体の大進化をレビューすることになったそうです。

生物は、その根元に近づくほど形態的に分化(特殊化)していないため、祖先に近い種の分類学的な位置を正確に定めることが難しいといいます。形態学におけるこうした問題を解決したのが分子系統学であり、遺伝子の塩基やアミノ酸配列の中立的な変化に基づくゲノム分析は、形態的な手法と比べて生物の系統関係をより客観的かつ正確に示す手法として積極的に受け入れらてきました。しかし、塩基配列に基づく系統樹推定においても各分類群の分岐年代の推定には化石記録が必要不可欠であり、また絶滅種の形態は化石情報からしか特定・推定はできないということで、分子系統学と古生物学が互いに補い合っている関係が示されています。また、利用する遺伝子の種類や数、塩基配列長、系統樹推定法や塩基置換モデルの違いなど様々な条件により分析結果が大きく変わる点も分子系統学的分析の弱点の一つであるとしています。

次回は、2の総説ー古生物学(化石記録)からのアプローチーについて読んでいきます。


僕の読書ノート「いじめとひきこもりの人類史(正高信男)」

2021-03-13 21:36:40 | 書評(進化学とその周辺)

書店でたまたま見つけて、タイトルに惹かれて購入した。

いじめの起源についてこう述べている。野生の動物は不快と認識するものには近づこうとしないし、危険を感じれば逃げる。だから不快な社会的経験は起きない。人類はある時から遊動生活を捨てた生活を始めた時、共同体ができた時、社会的排除という不快な社会的経験が起きるようになったとしている。定住生活は地球上の様々な地域で、およそ5000年前、同時並行する形で始まった。そして、自分たちの共同体に所属するメンバーに向かって、共同体秩序維持の目的で「異人扱い」がなされるようになった時、いじめが始まったと考えられる。

野生の動物にいじめはないのだが、ある操作をするといじめが発生することが知られている。ニホンザルの社会は野生下においてはいじめはない。ところが、「餌付け」をするようになると、順位制が確立し、上位の個体による下位の個体へのいじめが起きるようになる。人間の共同体や定住生活に近い社会になっているのかもしれない。こうして集団の外で生活するようになった、ニホンザルは「ハナレザル」とか「ハナレ」呼ばれる。一方、人間社会においては、例えばキリスト教以前のヨーロッパ社会では、社会の外で生活するものは「森の放浪者、”人狼”」「ヴァルク」として認識されていた。こうした、一般社会の外で生きている人たちには、いわゆる発達障害と呼ばれている者が多い。ところが、人間以外で自然状態で生活している霊長類では発達障害というものは報告されていない。遺伝情報には異常があったとしても、外見や行動上ではまったく異常が見当たらないというのだ。発達障害とは違うが、人間にはダウン症という染色代の数が一本多いことによる遺伝的障害がある。ところが、同じような染色体異常があっても、サルでは何ら異常が見受けられないという。このように人間にしばしば見られる障害、とくに発達障害は人間に固有の生物現象であるという。

ここまではとても興味深く読んできた。しかし、本書の後半になると少し偏っているように感じた。昔から、共同体からいじめだされた放浪者「異人」として、日本では「職人」、ヨーロッパでは「ヴァルク」「バンディット」の存在が知られている。日本におけるこうした人たちとして、西行、親鸞、芭蕉、良寛、鴨長明、吉田兼好を例に挙げて、日本には昔から漂泊・ひきこもり文化が存続してきたと主張している。それはそれであるかもしれないが、こうした人たちは文芸等の才能に秀でていて強い信念を持って隠遁生活をしていたのであって、現代の「ひきこもり」で苦しむ人たちの多くが、毎日やる気が起きなくて無為に過ごしている現状とはかけ離れていると感じた。さらに、今日のコロナ禍による積極的なひきこもり生活や、社交不安緩和のためのCBD(カンナビジオール、大麻草由来の麻薬成分以外の成分)の効果が、発達障害やひきこもりの人たちにとって非常に期待できると強く推奨されていた。そういったことも役に立つ可能性があっていいのだが、もっと他に対応方法はないのか、在宅勤務とCBDだけで全て解決できるわけではないだろうと強く感じた。

さて、ここで重大なことをお伝えしなければならない。著者に興味を持ったのでネットで調べてみた。著者は2020年3月まで京都大学霊長類研究所の教授であった。そして、著者が実施したCBDの効果の臨床試験論文(2019年11月刊行)に捏造疑惑が持ち上がっているということを知った。朝日新聞DIGITALの2020年4月21日付で「京大元教授、大麻合法成分の論文データ捏造か 本人否定」のタイトルで記事が掲載されている。

該当する論文は「Nobuo Masataka. Anxiolytic Effects of Repeated Cannabidiol Treatment in Teenagers With Social Anxiety Disorders. Front. Psychol., 08 November 2019」である。

そもそも、臨床試験を開始する前に、大学や医療機関などの倫理委員会で承認を受け、公的データベースに登録することは必須となっている。この論文に書かれている倫理委員会と公的データベースの承認番号が架空のものらしい。試験内容も虚偽なのかどうかははっきりしていないようだが、架空の承認番号を書いている時点で、サイエンスとしてはアウトである。試験内容も捏造されていたとは信じたくないが、さっと読んでみたところ、どこの医療機関で試験が行われたのかが書かれていないという不明瞭さがあった。

上記の事案は、2020年4月に報道されているのだが、その後の2020年10月になって本書が刊行されている。このことを知っていたら、本書を読むことはなかっただろう。


横浜散歩 その8-入江川の下流部

2021-03-06 15:37:54 | 横浜

休日のウォーキングに時々、入江川緑道という入江川の上流部に行っているのですが、柳瀬博一氏が言うところの小流域地形というものを確認してみようという思い付きで、下流部にも行ってみることにしました(2021年2月28日)。横浜市のホームページによると入江川の延長は1.43㎞とされています。そんなに短いのかな?もう少しあるような気もしますが。

 

入江川の中流部である、大口駅南の線路を渡ったところから下流に向かってスタートします。

 

ずっとこんな感じのコンクリートの川岸に囲まれて、横浜線沿いを流れています。

 

国道1号線を越えます。ここで横浜線から離れていきます。

 

  

少し川幅は広がりますが、ずっとこんなかんじ。水は濁っていて、生き物の気配はナシ。川の水はゆっくり上流に向かって流れているように見えます。潮が満ちてきているタイミングでしょうか。

 

国道15号線を越えると、河口が見えてきました。ここまであっという間に着いてしまいました。やっぱり短い川です。

 

左から入江川が流れてきて、右側の運河に合流。埋め立てが行われる前は、ここが海に面した河口だったそうです。

 

そして、河口近くの運河には首都高速が走り、子安の船着場があります。ここには、遊漁船、プレジャーボート、あなご漁船などが停泊しているそうです。

昭和のバラックのような建物が運河にせり出していて、数十年の風雨や高波によく耐えてきたなというタイムスリップしたような風景が展開しています。

たくさんの筒のようなものを載せているのが、アナゴ漁船です。

 

埋立地をさらに海側に行くと、貨物線が通っていて、

 

工場地帯に突き当たり、進入禁止になっています。左が太陽油脂の工場、右がマツダの研究所です。

というわけで、入江川下流はあまりおもしろいところではありませんでしたが、河口部運河の船着場は不思議な情緒が残っている場所でした。