wakabyの物見遊山

身近な観光、読書、進化学と硬軟とりまぜたブログ

入江川に魚(ボラ?)の大群が遡上

2022-01-29 07:39:12 | バイオフィリア(身近な生き物たち)

地元の大口を流れる入江川で、おもしろいものを見ました(2021年1月23日)。

入江川は、横浜市神奈川区の大口などを流れて横浜港の運河にそそぐ約2.4 km(せせらぎ緑道も含めてか?)の短い川です。この上流に入江川せせらぎ緑道が整備されていますが、入江川本流とは堰によって隔たれています。よく、入江川せせらぎ緑道で魚や鳥を観察して、このブログで紹介していますが、今回は入江川本流のほうの話です。

この日は、普段あまり見ないカワウがいました。右は成鳥、左は幼鳥のようです。

 

成鳥のほうは羽をゆっくりパタパタやっています。水滴を落として羽を乾かすため?それとも何かのサイン?

 

別のところにも、カワウが2羽いました。

 

1か月前くらいから見るようになったオオバン。しかし、今日はたくさんいます。今日はちょっと、鳥たちが集結している感じで、いつもと違います。

 

そして、少し上流の水深が浅くて水が透明なところに行くと、なんじゃこれ!とビックリしました。魚の大群が遡上しています。

 

数万匹といった数がいそうな大群です。しかし、これを見ているのは私一人だけです。ここは住宅に囲まれていて、あまり人の目につきにくい場所なのですが、だれも気がついていないのでしょうか?

 

ほんとうは魚を捕まえて見てみないとわからないのですが。入江川にはボラが観察されるといわれていることと、ボラの幼魚の大群が遡上するのが日本のいくつかの川で目撃されたという報告があることから、この魚もボラだと思われます。あの高級食材カラスミが作られる魚です。

Google  Scholarで参考になりそうな学術論文を検索してみました。「永田誠一ら. 水産増殖. 43, 199-203(1995)」の論文によると、「ボラは全世界に広く分布し,その初期若魚(いわゆるバク)は12月頃から翌年の4月頃にかけて我が国沿岸に出現し,汽水域,河川に遡上し,生育してオボコとなる。その後成長段階に応じてイナ,ボラとよばれ,最後にトドとなり外洋に出て産卵する」と書かれています。確かにこの時期、川を遡上する出生魚なのですね。しかし、なんのために遡上するのか、なぜこんなに大群なのか不思議です。

 

コサギもボラを狙っています。

 

カルガモもいます。カルガモの食性は植物食と言われていますが、消化管からたくさんの魚が出てきたという報告もあるそうなので、やっぱりボラを食べようとしているのかもしれません。

 

入江川せせらぎ緑道のほうは工事中です。生き物の気配はあまり感じられません。


僕の読書ノート「アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス)」

2022-01-22 08:54:29 | 書評(文学)

読んで泣くというより、救いがなくて読んでて苦しかった。

知的障害者のチャーリーは、やさしい心を持ち、向上心もあり、そこそこ幸せに暮らしていた。ある時、大学の研究チームが考案した知的障害の外科的治療法をはじめて受ける被験者になった。手術は成功して、チャーリーのIQはみるみる向上した。それによって記憶能力が高まったために、知的障害者だったころの記憶がよみがえってきた。それは、友達だと思っていた人たちから実はバカにされていたこと、母親から虐待を受けていてついには施設に送られて捨てられたことなど、辛い思い出だった。一方、知的能力が高まっても、人を思いやる心が発達しなかったため、今現在の周りの人たちの欺瞞と自己中心主義が許せなくて、怒りがおさまらない。そして、同じ手術を受けたネズミのアルジャーノンを観察していたら、この治療法の効力は長くは続かないことがわかり、チャーリーはまた昔のような混沌とした世界に戻ることを予見し、それに向けて心の準備を整えていく。

著者のダニエル・キースは本作のもとになる中編小説を書いて出版社に持ち込んだとき、編集者からハッピーエンドにするように求められたが、がんとして受け付けなかったという。そのうちもとのストーリーのままで出版してくれるところが見つかり、世に出ることになった。知的障害は、他人ごとではない。自分や身近な人が、いつ事故による高次脳機能障害になって、あるいは認知症になって、知的障害者のようになるかわからない。でも、今のところ、救う手立ては見つかっていない。ダニエル・キースがこの物語を安易にハッピーエンドで終わらさなかったのは、後世の人たちに救う手立てー医学的にも社会的にもーを見つけてほしいというメッセージを残したかったからかもしれない。


哺乳類進化研究アップデート No.15ー哺乳類のがんリスク比較

2022-01-15 08:01:30 | 哺乳類進化研究アップデート

多細胞生物は腫瘍を生じる可能性があり、下等動物から高等動物に進化するにつれて、そのリスクが高まってくるようです。原始的な海綿では腫瘍の存在は知られていません。それ以外の無脊椎動物では種々の腫瘍が存在しますが、一般に増殖が遅く、自然に転移する例は知られていません。脊椎動物になると悪性腫瘍が見られるようになります(「進化医学 人への進化が生んだ疾患」井村裕夫)。悪性腫瘍のうち上皮組織から発生するのがいわゆる「がん」ですが、哺乳類の種類によって、がん発生リスクに違いはあるのでしょうか?

フランスのモンペリエ大学などのグループによる、最近ネイチャー誌に掲載された論文「(哺乳類全体のがんリスク)Cancer risk across mammals. Vincze, O., Colchero, F., Lemaître, JF. et al. Nature.  Vol 601, 13 January 2022, 263-267」で、そのような疑問点に対して一定の回答が提供されました。動物園で飼育されてきた動物の記録を膨大な量収集して、解析したところがこの論文のポイントです。

大型で長寿の生物は細胞分裂の回数が多いため、体細胞突然変異の可能性が高くなり、がんになりやすさが影響を受けると予測されていました。実際に体格や寿命が大きくなるにつれてがんのリスクが高まることは、種内では証明されていますが、一方で、種間ではそのような関連性がないことが示されていて、ペトのパラドックスとよばれています。しかし、ペトのパラドックスはまだ証拠が不足していて十分には証明されていません。

今回の論文では、動物園の哺乳類の成体(110,148個体、191種)のデータを用いて、がん関連死亡率に関するデータベースを構築・解析し、がん死亡率を哺乳類の系統樹に対応させました。それにより、哺乳類において発がん現象が普遍的であることとを示すとともに、主要な哺乳類目の間でがん死亡率に大きな差があることを明らかにしました(下図。左図は赤い棒の高さ、右図は右に伸びるグラフの形によって、がんによる死亡リスクの動物群ごとの分布を示しています)。イヌ、ネコなど仲間を含む食肉目はがん死亡リスクが高く、ウシ、シカなどを含む偶蹄目はガン死亡リスクが低いことが示されました。

 

そして、ここが重要な発見ですが、がん死亡率の種間分布は食性と関連しており、肉食の哺乳類(特に哺乳類を食べる哺乳類)が最も高いがん関連死亡率に直面していることを明らかにしました。下図において、左から、動物(Animal)、無脊椎動物(Invertebrate)、脊椎動物(Vertebrate)、魚(Fish)、爬虫類(Reptile)、鳥(Bird)、哺乳類(Mammal)を、あまり食べない種たち(灰色で示すグラフ)、よく食べる種たち(橙色で示すグラフ)について、がんによる死亡リスクの分布を示しています。よく食べるとがんによる死亡リスクが上がるのが、脊椎動物、とくに哺乳類であることが示されています。つまり肉食によって、がん死亡リスクが上がっています。その理由としては、肉を介した病原体による発がん、腸内菌叢の多様性の低さ、動物園における運動量の制限などが想定されていますが、明確にはなっていません。

 

さらに、がん死亡リスクは、種を超えて、体重や寿命とはほとんど無関係であることが示され、ペトのパラドックスの明確な証拠を提供しました。これらの結果は、がん抵抗性の確立における進化の重要な役割を明らかにし、がん防御の探求に大きな前進をもたらすものだと結論づけています。

以前から、ヒトにおける大腸がんリスクを高める要因として、赤肉(哺乳類の肉)を食べることが言われています。私自身、2年前に大腸の手術を受けることになり、その後は赤肉を食べる頻度を少なくするようにしています。そして、今回のような哺乳類の多様性レベルでの研究結果を見ると、ますます赤肉食は減らしたほうがいいのだなという思いを持ちました。とは言っても完全に断つのはまだ難しいなというのも本音です。そういえば、元々肉食であるネコも短命ですよね。もしプラントベースのペットフードというものがあれば、それで飼うことで長寿のネコになるのでしょうか?


明治神宮に参拝

2022-01-08 11:34:39 | 遺跡・寺社

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

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2022年1月3日に明治神宮に参拝してきました。明治神宮には前回、2020年12月の暮れに訪問しましたが、そのときの静けさと違って、予想していた通りの大混雑でした。

 

原宿駅前の一の鳥居から入ります。

 

このあたりはそれほどの混雑ではありません。

 

奉納された日本酒の樽。これって神宮関係者が飲むのでしょうか?うらやましい。

 

そしてワインの樽も。

 

二の鳥居。

 

二の鳥居を通ると急に混雑して動かなくなりました。数分停止して、15mくらい進む、の繰り返しです。

 

距離をとってください、と指示されていますが、混んでて距離が取れません。後から押してくる人もいて嫌です。

 

三の鳥居です。

 

南神門です。鳥居と門をくぐりまくって行きます。

 

やっと本殿前の広場にやってきました。9割がた若い人たち(20代)が来ているようです。原宿近くというロケーションもあるのでしょうね。

 

苦労して並んで、ようやく参拝できました。

 

参拝後に、おみくじを引きました。

ここのおみくじは、明治天皇・皇后の詠まれた短歌です。私が引いたのは、


  大御心(おおみごころ)

   昭憲皇太后御歌

     心

むらぎもの心にとひてはぢざらば よの人言はいかにありとも

(意味:自分の良心にきいてみて、少しも恥ずるところがなければ、世間の人は何と言おうと、動揺することはありません。自信を強く持ちましょう。)


自信のない私にはいい歌です。ありがとうございます。

 

原宿の街を少しだけ散歩して帰りました。