wakabyの物見遊山

身近な観光、読書、進化学と硬軟とりまぜたブログ

箱根・千条の滝に行き、来年の干支にも出会う

2018-12-29 22:03:55 | 箱根・湘南・三浦
箱根の小涌谷に泊って、千条(ちすじ)の滝と箱根彫刻の森美術館に行ってきました(2018年12月22・23日)。
まずは、千条の滝行きを紹介します。


町田駅で小田急ロマンスカーVGEに乗ります。


予約して展望席に乗れたのですが、雨で湿度が高いせいか前方のガラスが結露して外が見えません。


途中で車掌さんが窓を拭きに来ました。


それでもまだ曇っていてよく見えない。


終点の箱根湯本駅まできたら曇りが取れてきました。
こんな立派な特急で展望席をウリにしているのだから、結露対策くらいしてくださいね、小田急さん。


さて、箱根湯本駅で箱根登山鉄道に乗り換えて小涌谷駅で下りました。


泊ったのは、四季倶楽部箱根仙泉閣。


夕食は美味しく、


中庭の日本庭園もきれいで、もちろん箱根ならではの温泉もあって、サービスを最小限にすることで料金はお手頃になっていて、とてもいい宿でした。


そして次の日、宿を出て、千条の滝に向かいました。片道20分くらいの軽いハイキングです。
ほんとうは近くの箱根浅間山(802m)まで登りたかったのですが、娘が足首を捻挫していたので断念しました。
道中、こんな斬新なデザインの別荘がありました。温泉の湯けむりが立ってます。このへんの別荘は温泉を引き込んでるんでしょうね。


箱根浅間山も見えました。


千条の滝が見えてきました。


下を流れるのは蛇骨(じゃこつ)川。


千条の滝。




小さいけれど、気持ちのいい滝でした。


駅のほうに引き返す途中、イノシシを発見。まん中の軽トラックの左横にいるのがわかりますか?
危険なので家族を先に行かせます。


私だけイノシシに近寄って、できるだけ驚かさないようにして撮影しました。葉に隠れて写真ではよくわかりませんが、こちらをにらんでいます。
そんなに大きくなくて牙も生えていないので若いメスでしょうか。
以前よく丹沢を歩いていましたが、一度もイノシシは見たことがなかったので、野生のイノシシに遭遇したのはこれが初めてです。
後になって気がつきましたが、来年の干支でしたね。


小涌谷駅のところまで下りてきました。
箱根の山並みが広がっています。真ん中が明神ヶ岳(1169m)。右の山は、


明星ヶ岳(924m)。


左の奥には、金時山(1213m)が見えました。7年前に登ったなあ。もうしばらく山に行っていません。

ネコは死期を悟ると飼主に感謝の気持ちを伝えるという

2018-12-15 22:56:45 | 猫・犬
うちで飼っていたネコのリュウタが、死ぬ直前に別れのあいさつとして(すくなくとも私にはそう感じられた)一晩添い寝してくれたということを、以前紹介しました



この行動はあまりに人間的かつ崇高すぎるように感じられて、なぜネコという動物がこのような行動をしたのか未だに分からないのですが、どうやら他の人たちもネコが死ぬ前になんらかの特別な行動を経験しているらしいのです。
女性セブン2018年12月13日号の記事としてネットに紹介されていましたので、下記にそのまま抜粋させて頂きます。

以下抜粋-------------------------------------------
MSNニュース
2018/12/02 07:00
猫は死期が近づくと姿を消すのは本当か エンジェルタイムの重要性

“猫は死期が近づくと姿を消す”といわれる。なぜそのような行動をとるのか真相は解明されていないが、動物は具合が悪くなると、安心して休めるよう、敵に襲われない安全な場所に身を隠す習性があるという。体力を回復させようと隠れたものの、そのまま死んでしまう場合もあり、それらの行動が飼い主からすると、自分の最期を予感して姿を消したように感じてしまうようだ。

「死に場所を求めて姿を消すのではなく、あくまで回復のために身を隠すだけ。むしろ猫は自分の死期を悟ると、飼い主にいつも以上に甘えたり、最後の力を振り絞って元気な姿を見せるなどの行動をとることが多いんです」とは、往診専門動物病院「わんにゃん保健室」の院長・江本宏平さんだ。その意図は、死期を悟った猫が飼い主に対し、感謝の気持ちを示しているのではないかという。「私はこの飼い主と愛猫の最期の時間を“エンジェルタイム”と呼んでいます。天国へ旅立つ前の大切な時間です」(江本さん・以下同)

◆自分でエサを食べられなかった愛猫が死の直前、元気よくミルクを飲んだ逸話も
 江本さんが行う往診治療では、その特性上、病院へ通うのが困難な末期症状の猫や高齢猫と接することが多い。
「病気の完治を目指した治療はすでに難しく、余命わずかなケースも。生死をさまよう峠を2度越えられる子は多いのですが、3度目は厳しいのが現実です」
 昨年もこんなケースがあったという。20才の愛猫の様子がおかしいと連絡を受け、自宅に駆けつけたが、すでに猫はぐったりと横たわり、心臓の音も弱々しかった。「その場で点滴と高栄養ミルクの強制給餌を行いました。しかし状況は厳しいまま。もしかしたら今夜は越えられないかもとお伝えしました」 翌朝、飼い主から自力で排便するまでに回復したと連絡があったので、その時は峠を越えてくれたと思ったという。しかし、その後また容体は悪化。自力でエサも飲み込めなくなり、食事は飼い主のサポートが必要になったが、それでもなんとか、2度目の峠は越えた。しかも翌日、奇跡が──。それまで全く飲み込めなかったミルクを自力で飲んでいたというのだ。「弱っている体のどこにそんなパワーがあったのか。まるで“私、こんなに元気になったよ”と言っているかのように、ミルクを飲んでいました。その姿を見た時、イヤな予感がし、飼い主にもすぐ伝えました」その予感通り、その翌朝、静かに天国へ旅立った。元気にミルクを飲む姿を見せてくれたのは、飼い主を安心させたい、20年間ありがとうの気持ちを伝えるためだったのだ。

「エンジェルタイムは、飼い主にとっても重要。別れへの心構えができ、臨終に立ち会っても静かな気持ちで送り出せます」
飼い猫がいつもと違う行動をとる。それがすべて死に直結するわけではないが、何かのサインかもしれない、ということを覚えておいた方がいいかもしれない。
-------------------------------------------抜粋以上

そういうことで、死ぬ前に飼主へ感謝をつたえる行動というのはネコ一般に見られることのようなのです。私はそのようなネコの行為を受けて、たしかに静かに死を覚悟することができました。それと同時にそのネコのことがしっかり脳に刻まれて、一生忘れられない思い出として残りました。では、ネコにとってはどういう意味があったのでしょうか?ほんとうに感謝の気持ちを伝えたかったのでしょうか?それによって、安心して死んでいくことができたのでしょうか?しかし、人間だけが他人の幸せを願う心を持つようになったなどとよく言われますが、心を持っているということに関しては動物と人間には連続性があるように思います。ネコに一般的に見られる行動だとすると、ネコの遺伝子が直接・間接的にそうさせているのでしょうか?いろいろとわからないことは残っています。

書評「バンクシー ビジュアルアーカイブ(ザビエル・タピエス)」

2018-12-08 23:16:01 | 書評(アート・音楽)


最近(2018年10月)ニュースで紹介されていたが、サザビーズでのオークションで覆面アーチストであるバンクシーの絵が落札された直後、絵が額縁から下りてきてシュレッダーで半分くらいが縦に裁断されてしまうという事件があった。これはバンクシーが仕掛けたいたずらだったことが本人から表明された。おもしろいことをする現代アーチストがいるものだと思い、興味を持って調べてみたら、バンクシーの正体は、ブリストル出身のマッシブ・アタックというバンドのメンバー、ロバート・デル・ナジャ(3D)である可能性があるということだった。マッシブ・アタックは最近好きでよく聞いているバンドだったので、さらに興味が強くなって、彼のアート作品を見てみたいと思って行き着いたのが本書である。

無許可で建築物の壁に絵を描いたものをグラフィティというらしい。本書には、グラフィティ作家としては著名な現代アーチストの域に達したバンクシーの代表的な作品が、時系列で、描かれた場所、バンクシー本人の言葉や関連するコメント等の説明付きで紹介されている。彼の作品は、政治的であったり、社会状況を風刺するようなメッセージが込められている。絵を見ても意味がすぐにはわからなくても、説明を読むとそのあたりの文脈がわかるようになっているのが親切である。さて、彼の絵を見てみるとストリートで描かれた落書きにしては、クオリティーが高すぎる。これはステンシルという技法が用いられていることによるようだ。つまり、あらかじめ型紙を作っておいて、現場ではそれを壁に当ててスプレーで色を塗るだけで済む。そのため、時間をかけて精巧な型紙を準備することができる。また、現場で絵を描く時間を短くすることができるので、警察に捕まるリスクも減る。モノクロのステンシルにシンプルな彩色をしている作品がほとんどである。
どの絵も味があっていいなと思わせるが、この本の難点を一つだけ挙げさせてもらうと、版が小さくて17.2×13.4cmしかないことである。この大きさでは、ストリートに描かれたグラフィティの迫力がなかなか伝わりにくい。値段(定価\1,800)を倍にしてもいいので、本の大きさをこの2~4倍にしてもらえればとてもよかったのにと思う。


バンクシーが手掛けたCDジャケットとして唯一?であるブラーのシンク・タンク。

バンクシーの正体ではないかと言われているロバート・デル・ナジャのいるマッシブ・アタックは、イギリスの歌姫たちをフィーチャーした作品が多いことも特徴だ。ここでは、エリザベス・フレイザーをボーカリストとして迎えた曲の一つを紹介したい。
Massive Attack - Teardrop


不安症や神経質に関わる遺伝子は進化で残ってきた

2018-12-01 22:40:20 | 脳科学・心理学
脳科学の分野で興味深い研究報告がありましたので、ひさしぶりに紹介します。

ヒトの心の個性や精神疾患に関係する遺伝子が進化の過程でいつ生まれて、どのように現在に至るまで残ってきたかを解析した論文です。こうした遺伝子の存在がヒトという種の存続にとって有害であるとしたら、進化における自然選択の過程で消えていくはずです。でも、実際には多くの人が、心の問題で悩んだり、生きにくさを感じたり、病気にまで進行したりしているというのが現実です。ということは、ヒトという種の存続にとってなんらかの役に立ってきた可能性も考えられます。こうしたことは、人間の本質に関わるすこぶる興味深い課題ですが、これまでほとんど研究が進んでいませんでした。今回の研究報告は、こうした課題に答えを与えてくれる第一歩となる非常に重要なものだと感じています。

東北大学理学部の研究者たちは、精神疾患の関連遺伝子に着目し、哺乳類15種のゲノム配列を用いて、人類の進化過程で加速的に進化した遺伝子を検出しました。また、約2500人分の現代人の遺伝的多型データを用いて、集団中で積極的に維持されている遺伝的変異の特定を試みました。その結果、人類の進化過程で自然選択を受けて加速的に進化してきたことが見出されて注目されたのが、SLC18A1遺伝子。この遺伝子の136番目の座位に2つのヒト特異的なアミノ酸置換が存在し、ヒト以外の哺乳類は全てアスパラギン(Asn)でしたが、ヒトにはスレオニン(Thr)とイソロイシン(Ile)という2つの型がありました。そして、Thr型とIle型はヒト集団中に約3:1の割合で存在していることが明らかになりました(図1)。


図1.SLC18A1遺伝子の136番目のアミノ酸多型の頻度。チンパンジー、ネアンデルタール人、ヒト、そして世界各地のヒトでの比較。

SLC18A1遺伝子は小胞モノアミントランスポーター1(Vesicular Monoamine Transporter 1: VMAT1)をコードしており、神経や分泌細胞において分泌小胞にモノアミン神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンを運搬する役割を果たしています(図2a)。136番目がThr型の方が小胞への神経伝達物質の取り込み効率が低いほか、うつや不安症傾向、精神的個性の一つである神経質傾向はThr型の方が強いことが示されています。また、Thr型は双極性障害や統合失調症などとの関連が指摘されています。Ile型のほうが精神的により頑強な健康的なタイプになるのでしょう。


図2(a).SLC18A1(VMAT1)は、シナプスにおいて一度放出されたモノアミン神経伝達物質を分泌小胞に回収する。

Thr型とIle型はどちらが先に出現したのか、また、なぜうつや不安傾向などに関わる遺伝的変異が集団中に高頻度で存在するのかという疑問が浮かび上がります。そこでこの研究では、Thr型とIle型の進化プロセスの解明、およびこの多型に働く自然選択の検出を試みました。その結果、ネアンデルタール人など古人類の時点で既にThr型は存在していること、Ile型は人類が出アフリカを果たした前後で出現し、有利に働く自然選択を受け頻度を増加させていったこと、一方で、アフリカの集団では、Ile型の頻度は低く、自然選択を受け始めてから十分な時間が経っていない可能性が示されました(図1)。また、ヨーロッパやアジアの集団では、この多型座位の付近で有意に遺伝的多様性が増加しており、多型を積極的に維持する平衡選択が働いていることが明らかとなりました(図1)。つまり、不安傾向や神経質傾向などをより強く示すThr型は、チンパンジーとの共通祖先から人類の進化の過程で、何らかの有利な影響を与えていたと考えられます。その後、ヒトがアフリカ大陸を出て、ヨーロッパやアジアなどに広がった際に、抗うつ・抗不安傾向を示すIle型が、自然選択を受け有利に進化したことが推測されます。しかし、Ile型とThr型は、どちらか一方に完全に置き換わることなく、両方の遺伝子が積極的に維持されるような自然選択が働いていると考えられるということです。

現在の人類において、精神的に健康なIle型より、不安症や神経質、様々な精神疾患に関わるとされるThr型を持っているヒトのほうが多いというのは意外な感じもします。しかし、人類の歴史においては過酷な時代が長かったので、Thr型が敵から逃れるのに役に立ってきたが、ほんの最近になって平和な時代になってからは、ポジティブに生きていけるIle型がより適応するようになったという解釈もできるように思えます。この遺伝子だけで、不安症や神経質、様々な精神疾患になるかどうかが決まるわけではなく、多くの遺伝子の相互作用、そして生育環境がそれらを決める要因になると考えられますが、今回の研究をきっかけにさらに知見が積み重なることで、精神と進化の問題が解明されていくことが期待されます。

文献: Sato, D. X. and M. Kawata (2018) Positive and balancing selection on SLC18A1 gene associated with psychiatric disorders and human-unique personality traits. Evolution Letters.