上野の森を散歩して、国立科学博物館の日本館を見てきました(2023年2月18日)。最近、古生物学の本を読んでいたので、化石や古生物の模型を見てこようと思いたったのがきっかけです。国立科学博物館でも、地球館は何度か行っているけれど、これまでちゃんと見てなかった日本館を今回見に行きました。
日本館の正面。
特別展「毒」をやっていますが、こちらはパスします。
常設展入口から入ります。
デゴイチが鎮座しています。ある時代の科学の粋を体現している美しさです。
日本館は昭和初期に建てられた建築です。この吹き抜けがいいです。
3階から順番に下へと見ていきます。
日本列島の暖温帯の動物たち。
日本列島の冷温帯の動物たち。
日本列島の亜寒帯の動物たち。
有名なフタバスズキリュウの骨格標本。恐竜ではありません。海棲の爬虫類です。
化石のレプリカでしょうね。こんなふうに埋まっていたという。
日本最古の化石だそうです。オルドビス紀だから、古生代前期、4億8~4千万年前のことです。魚類、つまり脊椎動物はすでに出現していたのですね。
巨大なアンモナイトの化石。
日本では、古生代や中生代の哺乳類化石は出てこないのかな?新生代までとんで哺乳類の化石たちの展示があります。日本はもともとアジア大陸の一部だったので、日本とアジア大陸で出土する化石は、同じか近縁の種だということです。
ウマ、ビーバー、ゾウ、サイといった化石、ほとんど顎の骨ですね。今はどの種類の子孫も日本にはいません。
パレオパラドキシア、よく全身骨格が残っていました。系統分類にアフリカ獣類と書いてあります。ゾウもそうですが、アフリカ起源の哺乳類は日本にも住んでいたのですね。
左から、アケボノゾウ、トウヨウゾウ、ナウマンゾウ。このあたりは、過去200万年間に、大陸から日本に渡ってきたそうです。
こちらはナウマンゾウの上顎(左)と下顎(右)。
中央吹き抜けスペースのソファーに座っていたら、手摺下の壁を「ここ、ここ」と指さしていくお客さんがいたので見てみたら、アンモナイトの化石が入っているじゃないですか。博物館の建築に用いられた大理石に化石が入っているという驚きというか面白さがありました。
日本人の展示になります。縄文人のくらしのようす。
縄文と弥生の食生活。縄文は自然から食物を得る狩猟採集生活、弥生はそれに加えて、栽培飼育=農業を行っていたようです。
弥生人のくらしのようす。
古い人骨から、当時の暮らしのようすや病気がわかるということで、おもしろかったです。
虫歯は当時の食生活の豊かさで多い少ないが変化する一方、歯槽膿漏(歯周病)は時代を越えて一定存在してきたということです。
江戸時代は梅毒(骨からわかります)が多くなっていて、その時代の男性比率の多さに関係しているかもしれないと推測されています。そして、近年もまた梅毒感染者が増えているそうです。治療しないとこんなふうに骨がボコボコになってしまう怖ろしい病気です。
クリブラ・オルビタリアは眼窩上部に病変があって、栄養失調や感染症に関係しているらしいです。妊娠痕が骨からわかるので、当時の妊婦数が推定できるといいます。
縄文時代の10代後半の異常に細い骨が見つかっています。小児麻痺のような病気でずっと寝たきりで生活したためと考えられています。そのような病気があっても仲間の手厚い介護があった証拠とされています。狩猟採集生活でも定住はしているので病人を寝かしてお世話する余裕があったこと、病気の人間を親や仲間たちが助ける愛情や利他性といった現代にも通じる精神性をかいま見るのでした。
人と動物の関わり方として、実験動物のことが取り上げられていました。最近は動物実験への批判がきびしくなってきていますが、ここでは動物実験の必要性が主張されています。
江戸時代に西洋から伝わった顕微鏡。
企画展「ワイルド・ファイヤー:火の自然史」は常設展の入館料のみで見れました。
こうやってたまに博物館をのぞいてみると、気晴らしにもなるし、新たな気づきも得られたりして、少しだけ心が豊かになります。お薦めです。