「エイミー・ワインハウス,ダフィー,リリー・アレンにアデル。ここ数年イギリスの若手が席巻していた女性ポップ・ヴォーカル界に,アメリカ,それもディープ・サウスが満を持して送り込んだ刺客が,このダイアン・バーチだ!」
別に任侠映画のファンという訳でもないのだが,もし私が宣伝担当ならば思い切り力んで,こんな文句の一つも使いたくなるような,26歳のSSW(SINGER SONG WRITER)の素晴らしい . . . 本文を読む
スーパー・ファーリー・アニマルズ「ダークデイズ/ライトイヤーズ」
「ポップ」というものを突き詰めて行き,やがてプログレに至る,という何ともSFAらしい挑戦となった2005年の「Love Kraft」。そこでの貴重な経験を踏まえて,ポップフィールドに帰還してきた2007年の「Hey Venus!」。充実したこれら近作の勢いそのままに発表された新作「Dark Days/Light Years」は,両 . . . 本文を読む
メロディー・ガルドー「マイ・オンリー・スリル」2009
湿度の高い夜気を纏っていながら,軽やかで瑞々しい声。文章にするとどうにもイメージを結びにくいのだが,若い頃のジャニス・イアンが,超絶技巧を身に着けてジャズを歌う,という表現が最もしっくり来るかもしれない。
輸入盤店で試聴した時,あれよあれよと聴き進め,結局アルバムを丸々全部聴き通してしまった,インディーズからのデビュー・アルバムも衝撃的だっ . . . 本文を読む
マイスペースにおける記録破りの聴取回数が評判となって,本格デビュー後,一躍トップアイドルの座に躍り出たリリー・アレンのセカンド。ティーン(公式HPによると「特に同姓」)の琴線をくすぐる歌詞に,自由奔放な発言とそれを裏付けるような恋愛遍歴等々,私生活も含めた「人間リリー・アレン」丸ごとの魅力で人気を集めているようだが,本作は熟成されたサウンドプロダクションと練達のメロディ,そしてニュアンスに富んだリ . . . 本文を読む
輸入盤店で,ブリューゲルの名画「ネーデルランドの諺」を用いたCDジャケットを眼にして以来,ずっと気になっていたアルバム。
日本盤が出る気配はなく,試聴する機会も持てないまま数ヶ月。たまたま覗いたAMAZONで廉価になっていたのを見て,サブ・ポップというレーベル名とジャケットだけを頼りに,結局中身を確認しないまま購入したのだが,「たまにはこういうこともあるもんだ」的な当たりとなった。
シアトル出身 . . . 本文を読む
車で聴きながら思わずツッコミを入れてしまった。「交換留学生,集団下校中」って,西高東低かっ?なんて。
不思議系女子高校生の(ような)舌足らずで,音程がスリリングな囁き声が,意味や語感が対をなす(ような気がする)単語の並びが生み出すリズムに乗って,「平熱36度2分」の気分を歌うグループのメジャー・デビュー盤だ。
耳に飛び込んできた音は,一発芸のような扮装をまといながら,確実に「ザ・スミス」から「く . . . 本文を読む
波のない穏やかな海へと出航した音符群が,突如として空中に持ち上げられたかと思うや,その最高点から,風に舞う薄紙のように予測不可能な軌道を描いて,ゆっくりと舞い降りて来るようなメロディ。
「ガウチョ」までのスティーリー・ダンの全てのアルバムにおいて,聴くもの全てを幻惑した魔力が,ウォルター・ベッカーの新しいソロ・アルバムには確かに存在している。
殆ど無視に近かったショウ・ビズ界の扱いが,再結成した . . . 本文を読む
オルタナ・カントリーと呼ばれる分野から,ウィルコやルシンダ・ウィリアムズに続いて,驚嘆すべきアーティストが出現した。
よく馴染んだ革製品のような味を持つメロディが,伸びやかで繊細な声と躍動感溢れる演奏によって綴られる。大地にどっしりと根を下ろした安定感と所々で顔を見せる尖ったアイデアが絡み合い,独特なグルーヴ感を生み出している。昨年暮れに出た作品だが,年内に聴いていれば間違いなく「今年の10枚」に . . . 本文を読む
いつの間にか今年も押し迫って,仕事納めに年賀状に大掃除に送別会にと,何一つきちんと終えられないまま時間に追いまくられる季節がやってきた。
本当はこんな風に今年の音楽を振り返る時間があれば,どれか一つ(送別会は除く)だけでもきちんと為し終えるべきなのだろうけれど,掃除を始めても部屋の隅から出てきた本を,本棚に収める前に読み出してしまうという習性の持ち主は,そんな当たり前のことが出来ずに,こうしてリス . . . 本文を読む
ブライアン・ウィルソンの新しいアルバムが素晴らしい。古い流行歌をモチーフにして,そこから湧き出たインスピレーションを紡いだ物語は,傑作「スマイル」とはまた違った豊穣さを湛えて,聴く度に違った表情で魅了する。メロディとコーラスワークの美しさもさることながら,音楽を創り出す歓びが漲っている声の力は,正に奇跡と呼んでも良いくらいだ。
なので,もう少しそのアルバム「That Lucky Old Sun」に . . . 本文を読む