子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

Melody Gardot「My One And Only Thrill」:確かに「ワン&オンリー」

2009年04月15日 21時48分22秒 | 音楽(新作レヴュー)
メロディー・ガルドー「マイ・オンリー・スリル」2009

湿度の高い夜気を纏っていながら,軽やかで瑞々しい声。文章にするとどうにもイメージを結びにくいのだが,若い頃のジャニス・イアンが,超絶技巧を身に着けてジャズを歌う,という表現が最もしっくり来るかもしれない。
輸入盤店で試聴した時,あれよあれよと聴き進め,結局アルバムを丸々全部聴き通してしまった,インディーズからのデビュー・アルバムも衝撃的だったが,満を持してのメジャー・デビューは,最早貫禄をも感じさせるレヴェルに達している。

声量は決して豊かとは言えないが,リズムを掴まえる独特の感覚が際立っており,ゴージャスな雰囲気を売りにしている囁き声のジャズ・ヴォーカリストにありがちな,自己陶酔的な印象は全くない。
多分まだ24歳くらいのはずだが,音程のコントロールは完璧で,意図的な崩しにも嫌味なひけらかしを感じさせないのが素晴らしい。野球の投手に喩えると,インサイド高めとアウトサイド低めの直球とカーヴだけで勝負する本格派,といった感じだ。勿論,体育会系の極北に佇む存在ではあるけれど。

以前にレヴューしたウォルター・ベッカーのソロに続くラリー・クラインのプロデュースは,ストリングスの導入を始めとして曲のスケールを拡げる方向に力が注がれているが,彼女の声が持つ繊細な魅力は少しも損なわれていない。
19歳の時に遭った交通事故による視覚や記憶障害のリハビリとしてその1歩を踏み出した文字通りの「ベッドルーム・ミュージック」は,その若々しくも艶やかな声の魅力で,当初の意図を大きく越えて世界中の音楽愛好家を慰撫する極上のナイト・キャップとなったが,彼女が誘う夜のスリルはこれから(3作目以降)が本番,という期待を込め,☆ひとつ減らして
★★★★☆


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