「エイミー・ワインハウス,ダフィー,リリー・アレンにアデル。ここ数年イギリスの若手が席巻していた女性ポップ・ヴォーカル界に,アメリカ,それもディープ・サウスが満を持して送り込んだ刺客が,このダイアン・バーチだ!」
別に任侠映画のファンという訳でもないのだが,もし私が宣伝担当ならば思い切り力んで,こんな文句の一つも使いたくなるような,26歳のSSW(SINGER SONG WRITER)の素晴らしいデビュー作だ。
レコード会社のHPを見ると,出身地を意味すると思われる「ニューヨーク発」という記述がある。だがアルバム全体を貫くのは,ザ・ミーターズ,ザ・ルーツ,ギャラクティックと並べた南部の香りぷんぷんのサポート・メンバーから予想される通りの,太くてどっしりとしたグルーブ感だ。
例えば,ヒット中のシングル・ナンバー「Fools」。喧伝されているとおり,キャロル・キングの名曲「It's Too Late」を想起させるようなピアノのリフと静かなメロディで始まるのだが,サビではエッジの効いた鋭いメロディでノックアウトする本家と異なり,力強いホーンをバックにした緩やかで温かいハーモニーで迫ってくる。バンドとしてのアンサンブルを前面に打ち出したそんなサウンドには,新人とは思えない貫禄が漂っている。
シンコペートを効かせた数々の曲をドライヴするのは,繊細さを感じさせながらも,しなやかな強さをも併せ持った声だ。ジェニー・ルイスといい,このダイアン・バーチといい,土の香りを色濃く漂わせた音をベースに,極力声の特徴を活かすようなプロダクションが,イギリス勢に対抗する一つの道として意識されているような印象を受けるが,セカンドも素晴らしかったThe Bird & The Beeに続く若手の台頭が待たれている折,「Fools」が各FMでヘヴィー・ローテーションされ,街中のあちこちで耳にするようになったことは,素直に喜ばしい。
キャロル・キングの「Tapestry」が,照明を落とした小さなホールのライブが似合うアルバムだとしたら,ダイアン・バーチの「Bible Belt」には,大都会のクラブからニューオリーンズのジャズ&ヘリテージ・フェスまで,場所に合わせて響きを誂えてくるユーティリティ溢れるバンドのような逞しさがある。ジャケットの写真(何て細いんだ!)やYou-Tubeで目にしたプロモを見る限り目にも優しく麗しい彼女が,ネヴィル・ブラザースをバックに従えて歌う,なんて凄い光景が,来年のサマソニあたりで実現しないかな,などと夢想しながら聴いている。間違いなく,今年の夏の収穫だ。
★★★★
別に任侠映画のファンという訳でもないのだが,もし私が宣伝担当ならば思い切り力んで,こんな文句の一つも使いたくなるような,26歳のSSW(SINGER SONG WRITER)の素晴らしいデビュー作だ。
レコード会社のHPを見ると,出身地を意味すると思われる「ニューヨーク発」という記述がある。だがアルバム全体を貫くのは,ザ・ミーターズ,ザ・ルーツ,ギャラクティックと並べた南部の香りぷんぷんのサポート・メンバーから予想される通りの,太くてどっしりとしたグルーブ感だ。
例えば,ヒット中のシングル・ナンバー「Fools」。喧伝されているとおり,キャロル・キングの名曲「It's Too Late」を想起させるようなピアノのリフと静かなメロディで始まるのだが,サビではエッジの効いた鋭いメロディでノックアウトする本家と異なり,力強いホーンをバックにした緩やかで温かいハーモニーで迫ってくる。バンドとしてのアンサンブルを前面に打ち出したそんなサウンドには,新人とは思えない貫禄が漂っている。
シンコペートを効かせた数々の曲をドライヴするのは,繊細さを感じさせながらも,しなやかな強さをも併せ持った声だ。ジェニー・ルイスといい,このダイアン・バーチといい,土の香りを色濃く漂わせた音をベースに,極力声の特徴を活かすようなプロダクションが,イギリス勢に対抗する一つの道として意識されているような印象を受けるが,セカンドも素晴らしかったThe Bird & The Beeに続く若手の台頭が待たれている折,「Fools」が各FMでヘヴィー・ローテーションされ,街中のあちこちで耳にするようになったことは,素直に喜ばしい。
キャロル・キングの「Tapestry」が,照明を落とした小さなホールのライブが似合うアルバムだとしたら,ダイアン・バーチの「Bible Belt」には,大都会のクラブからニューオリーンズのジャズ&ヘリテージ・フェスまで,場所に合わせて響きを誂えてくるユーティリティ溢れるバンドのような逞しさがある。ジャケットの写真(何て細いんだ!)やYou-Tubeで目にしたプロモを見る限り目にも優しく麗しい彼女が,ネヴィル・ブラザースをバックに従えて歌う,なんて凄い光景が,来年のサマソニあたりで実現しないかな,などと夢想しながら聴いている。間違いなく,今年の夏の収穫だ。
★★★★