今更ながらアニメーション作品が席巻する日本の興行事情を実感することとなった1年だった。全てのスクリーンに対するアニメ作品の占拠率がどのくらいなのかは分からないが,シネコンのロビーを埋め尽くす若い観客が,目当てのアニメ作品(プラス「トップガン マーヴェリック」も)の開場を告げるアナウンスと共に一斉に入り口へと移動していく光景は,社会がCOVID-19禍から脱出しつつあることを象徴するひとつと言えるも . . . 本文を読む
アメリカの音楽チャートで新しいアルバムの曲が1位から10位までを独占するという偉業を成し遂げたテイラー・スウィフトの歌声がエンド・ロールに流れてきて,改めて全世界で1,500万部が売れたというベストセラーの原作(私は未読)の浸透度と影響の強さを思い知らされた。ただ8月に公開されたアメリカでの興行収入は,ベストテンから陥落した9月上旬時点で1億ドルには達していなかったことから類推すると,小説を読んだ . . . 本文を読む
冒頭,怯える馬の群れを正面から捉えたショットは,正真正銘「ホラー映画」のものだ。それに続く羊小屋の中で一匹の羊が通路に放り出されるショットと共に,観客に「何者か」の存在を見せずに,得体の知れない威圧感を与える,という点では「モンスター映画」としてもパーフェクトな導入部から,A24作品「LAMB/ラム」は始まる。ひと昔前に「アイスランドの有名人(グループ)と言えば,ビョーク,シガー・ロス,グジョンセ . . . 本文を読む
NETFLIXオリジナル作品「ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから」は,複数のマイノリティ要素を背負いながらも,懸命に前を向いて歩み続ける少女の姿を描いて,小品ながら強い光を放つ秀作だった。監督のアリス・ウーがデビュー作「Saving Face」から同作の制作まで16年間というインターバルを要した,という事実からは,監督本人が主人公と同様にアメリカ映画界において苦難の道程を歩んできたのであろう . . . 本文を読む
さかなクンの人生を脚色して映画化した本作に,当のさかなクンが出演している。勿論,本人役ではないが,主人公のミー坊(のん)の人生に大きな影響を与えるキャラクターとして,重要な役割を果たしている。役者として演技をしている訳ではないところがミソなのだが,映画を観ていて「こんな感じの人,昔いたなぁ」と思い出していた。社会的な信用度という点で少々問題ありと評価されがちな「不思議な人」が,実は世の中の健全度や . . . 本文を読む
編集者スティーヴン・ジェイ=シュナイダーがまとめた「死ぬまでに観たい1001本」は,時代が進むに合わせて改訂版が出ており,その度に新しい映画が追加されると同時に,新作映画の追加本数だけ古い映画が削除されているようだ。際限なく作品数を増やすよりも「1001本」という,どうして決めたのかは分からないけれども,それなりに意味のありそうな数字に拘る態度は,映画というジャンルのガイドブックに相応しい行為のよ . . . 本文を読む
福森の2年振りとなる直接FKによる先制点。チームの実質的なエースである小柏の今季初得点を含む4点を奪って,なおかつクリーンシート。今季初の連勝。試合数は違えど,降格圏の16位とは勝ち点で6点のアヘッド。
結果だけ見れば文句なしの快勝といえる試合だが,不安は募る。横浜,川崎,広島等の上位チームとの対戦を多く残す日程においても安全圏とは言えない上に,何より監督の采配に疑問ばかりが残るからだ。
ここま . . . 本文を読む
1970年代のハリウッドを舞台にした若者の恋愛劇,というシンプルなプロットを,あのポール・トーマス=アンダーソン(PTA)が撮ると,ここまで捻れて豊かな物語が現出するものなのか。主人公を演じる二人に新人を充て,トム・ウェイツ,ショーン・ペン,そしてブラッドリー・クーパーというビッグ・ネームを,メイン・プロットから逸れていく横道に配することで,映画ならではの贅沢な空間を生み出す手腕は,まさにPTAな . . . 本文を読む
MARVEL弱者の私にとっては,初見参となるルッソ兄弟のアクション作品。加入者数の減少が話題となっているNETFLIXが,過去最高額の制作費を注ぎ込んだ大作,ということが喧伝されているが,それなのにこのタイミングで「劇場先行公開」という手に出たのは何故なのか。これだけの派手なアクションであれば,是非とも大スクリーンで観たい,という声が上がったことは容易に想像できるが,劇場の興行収入がサブスク会費の . . . 本文を読む
「メタモルフォーゼの縁側」
未読の人気コミックの映画化だが,老若芸達者の共演が実に楽しい。ゲイに対する知識をほとんど持たないように見える老婦人(宮本信子)が,表紙の美しさに惹かれて買い求めたボーイズ・ラヴのコミックを読み進め,巻末で主人公二人がキスをするコマを観て「あら!」と声を上げるシーンが作品のトーンを定める。続きが読みたくて再び訪れた書店のアルバイト店員うらら(芦田愛菜)と徐々に距離を縮めて . . . 本文を読む