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子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「マイ・インターン」:世代を越えた堂々たる人生賛歌

2015年10月25日 11時31分55秒 | 映画(新作レヴュー)
「プラダを着た悪魔」で全世界の働く若い女性たちを勇気付けたアン・ハサウェイが,いつの間にやら会社の社長に。日本にも「資産2,000億円」で女性タレントとの交際が話題となっている社長さんがいるようだが,ITを駆使した流通業界の寵児を演じる働くお母さん役もまた,デビュー作と同様に共感を呼べるかどうかは,ひとえにメリル・ストリープに匹敵するヴェテランのサポートを受けられるかどうかにかかっていた。その点で,アンは運なのか,人柄なのか,はたまた演技力の故なのか,本作でもまた僥倖に恵まれた。お相手はなんとあの「タクシー・ドライバー」で,大統領候補を暗殺すべくピストルを構えながらひとり鏡の前でポーズを取り続けていた男,トラヴィスことロバート・デ・ニーロだった。

ここ数年,出演作が多かったにも拘わらず,「アメリカン・ハッスル」を除けば主演でも助演でもやや精彩を欠いていたデ・ニーロだが,本作では「プラダを着た悪魔」でストリープが演じた鬼編集長役の裏番とも言えるような心優しきメンター役を「インターン」として見事に演じ上げている。実は「タクシー・ドライバー」のトラヴィスがポーズを取ったシーンと,まったく同じショットを本作でも再演しているのだが,社会に敵愾心を燃やしつつ挑発する練習を繰り返していたトラヴィスと異なり,ここでデ・ニーロが演じる70歳のインターン生のベンは,久しぶりの会社勤めに備えて,社会に受け入れて貰うべく何度も「笑顔」を作るのだ。このシーンを単体で見ると,微笑ましくも心温まるものなのだが,実は後半でベンが仕えるジュールズ(ハサウェイ)の夫の秘密を知ってしまい,ジュールズや同僚たちから心配されるシーンで,「タクシー・ドライバー」を知っている観客たちが,ひょっとするとトラヴィスのように堪忍袋の緒が切れて暴走するのではないか,という危惧を抱かせる伏線にもなっている。
手練れのナンシー・マイヤーズ,ただのネズミではない。

70歳のおじいさんは,当然孫娘のようなジュールズには手を出さないが,会社お抱えのマッサージ師とは社会との接点を取り戻す一環として,ちゃんと繋がる展開も好ましい。お相手役を演じるレネ・ルッソは「ナイトクローラー」での怪演に続いて,肉食系熟女(61歳!)の迫力全開で,デ・ニーロとがっぷり四つに組んでみせる。ジム・エイブラムズらによる「フライングハイ」の抱腹絶倒シーンをパロディにした,会社内でのマッサージ・シーンはオリジナルと同様にかなり笑える。

ジュールズが見舞われるトラブルが小ぶりなことや,「プラダを着た悪魔」でのスタンリー・トゥッチに匹敵する会社内のサポーター役の書き込みがやや足りない点など,残念な点もいくつかあるが,総じてハリウッドの底力を見せつける良心作として推薦できる。デ・ニーロさん,次もこの調子でね。
★★★★
(★★★★★が最高)


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