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55歳からのハローライフ

2016年05月14日 | 読書
村上龍の「55歳からのハローライフ」を読んだ。
先週の「オッサンになる人、ならない人」もそうだが、こういうのを読む自分ってホント、オッサンだな。



さて、僕はまだ55歳までもう少し年数があるけど、40過ぎてからの飛ぶような時間の速さを考えると、おそらくアクビしてる間にその歳になってるに違いない。

これはシニア向けの就職活動本ではなく、村上龍の短編小説集だ。
5編の物語の主人公は全員55歳を超えた男女だ。
熟年離婚、早期定年退職、老後の蓄え、退職金の使い道など、まだ見ぬシニアライフが描かれる。
なかでも「空を飛ぶ夢をもう一度」という短編は良かったと思う。

54歳でリストラされた主人公は、その後の再就職も上手くいかず、道路工事の交通誘導のバイトをしている。
妻の収入に頼りながら、預貯金は減る一方だ。
そんな中、中学の同級生とばったり会う。
彼はホームレスだった。
やがて妻も職を失い、主人公は腰痛がひどくなる。
そして、同級生のホームレスが寝泊まりしている簡易宿泊所から、引き取りに来いと連絡がくる。
友情だけではないなにかが主人公を突き動かし、現状からの脱出を試みようとするのだった。

うむ、書いててウンザリするくらい年寄り臭い話だ。

若者と違い、シニアの友情、恋愛、家族愛にはそれまでの人生が付きまとう。
どういう生き方をしてきたか、どういう仕事をして、どういう趣味を持ち、どういう暮らしをしてきたのか。
それらが年輪のように身体に刻みこまれ、シワの如く表面化するのだ。

5編の短編の5人の主人公は、どれも明るい希望の中で物語は終わる。
これを読むと、シニアも案外悪くないのかも、という気になるのだった。
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