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No Music No Life

小田嶋隆「ポエムに万歳!」

2016年06月11日 | 読書
今、日本にはびこるポエム化、それに警笛を鳴らす一冊。
著者の小田嶋氏は、ネット上のコラムなどで、盛んにポエム化の危険性を指摘している。



(以下引用)

「ポエム化の一番の問題点は、目的が抽象的だという点です。
例えば、震災後に政治家やマスコミがこぞって使っていた『被災者に寄り添う』『想いを伝えたい』などのフレーズは耳当たりはいいけれど非常に抽象的ですよね。
ポエム的な言葉は個人の心情や感情をうまく取り入れているから、共感を呼びやすい。
でも、『じゃあ実際には何をするのか』というと、まったく姿が見えてこないんです。
結果、責任範囲の明確さや意味が損なわれるので、グレーゾーンが大きく、具体的には何も提示されていないのに、納得させられてしまう。
こうした感情的なごまかしが生まれるから、ポエムは危険なんです」


(引用終わり)

僕がこの本を読んでみようと思ったのは、やはりポエムっぽいものに違和感を感じていたから。
やたらと仲間、絆、友情なんかを声高に叫ぶ人に限って、すごく薄っぺらいものを感じてしまうのだ。
僕には数十年もの付き合いの友人が何人かいるが、友情なんて言ったことがない。
まさか「俺たち親友だよな?」なんて口が裂けてもいえない。
なので、平気で友情、絆とか、酷いのになると「君とは一生続く友達」とか言ってる人って、この人本当は友達いないんだろうな、と思ってしまう。

この「ポエムに万歳!」には、ポエム問題だけでなく、その他いろいろ現代社会の矛盾や問題点が書かれている。
その中で、僕がちょっと面白い視点だなと思ったのを一つ紹介しよう。

一時期、産地偽装食品や偽ブランドなどが出回る問題があったが、そういう偽装が発生するのは、元々そこにインチキがあるからだという。
「フェイクはフォニーにしか発生しない」
小田嶋氏がいうには、たとえばトヨタ・カローラにはコピー商品は存在しない。
なぜなら、カローラは本物中の本物で、どの業者もあのクオリティのクルマをあの値段で発売することが出来ない、本当にまっとうな商品というのはそういうものだという。
ところが、相手がヴィトンのバッグみたいなものだと話は違ってくる。
腕のある業者なら、ほとんどソックリの偽物を10分の1の価格で作ってしまう。
そもそもの値段の付け方が間違っているため、そこに偽物が入るこむ余地を作っているのだという。
ブランド牛もそうで、味に対して価格があまりに不当で高額なために、そこに偽装が発生するのだ。

ふむふむ、なるほどね。
これはまさにギターにも当てはまることで、80年代当時フェンダーUSAが中身に対してあまりに高額だったため、5分の1くらいの値段の国産コピーギターがあふれた。
そして、それらは本家を凌ぐ完成度だったという。
もし、最初からフェンダーUSAが5万円くらいで発売されてたらこんなことにならなかったのは言うまでもない。

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