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先日千葉県我孫子市の某レストランで食事をしていた時のこと。
大体メインを食べ終わり、デザートに移った時に、次男が「わぁ、これ便利だねぇ」と言ったその手に持たれていたのは写真にある「先割れスプーン」だった。ここ30年の間お目にかかることはなかったのだが、大変お世話になったこの方を忘れることはなかった。お腹が満たされ、疲れていたゆきたんくは白昼夢の世界に入って行った。
ゆきたんく
「いやぁ、先割れさん、お久しぶりですねぇ。」
先割れスプーン
「本当ですねぇ、30年ぶりでしょうか。」
ゆ「そうですねぇ、いつかまたお会いしたいと思っていたんですよ。このような形でお会いすることができると思いませんでした。とにかくうれしいですね。」
さ「そこまで言っていただけるなんて。私は子供の敵として追われた身でしたのでね。」
ゆ「今あなたを使っていたのは私の次男なんですよ。中学生です。その次男があなたを使ってみて便利だねぇと感嘆していたのですよ。」
さ「えっ、それは嬉しいですねぇ。もう学校給食の場では再就職は無理だと思い、レストランのデザートスプーンとして隠れて生きてきました。」
ゆ「そう、あの時はあなたにとって大変な時期でしたね。」
さ「学校給食の場で犬食いをする子供が増えているのはお前のせいだと面と向かって言われましたものね。1年365日として、当時は日曜だけが休日だったので6/7かけて313日、夏休みを40日として273日、冬休みを15日として258日、当時の祝日を10日くらいとして248日ですね。そして給食は昼だけだから3で割って、」
ゆ「そうすると学校での食事は83食じゃないですか。1年で365日×3食で1095食、83/1095で単純計算で0.076、約8%」
さ「その通り、1/10弱ですよね。それなのに犬食いだとか、はしが持てなくなるとかを私のせいにされたんですね。」
ゆ「もっとも、あの頃の給食の主食はパンでした。副菜が洋風でしたから、あなたは必要な存在だったと思います。もっとも、現在では米食とか麺類も出るときがあり、その時にははしの方が適していると思いますが…。批判を受けた部分についてもあなたに原因があるのではなく、家庭での躾に原因があったと思います。」
さ「先ほど学校給食の場での再就職は無理という話をしましたが、実は日本中を見ていると公立学校の三割くらいは私の仲間を使ってくれているところもあるようです。文部科学省の調査結果です。」
ゆ「ねぇ、あなたは悪くないですよ。その証拠に先入観を持っていないうちの息子が喜んでいるじゃないですか。あなたは大変優れた食事用品だと思いますよ。名古屋で有名なすがきやのラーメンは先割れスプーンで食べるそうですね。そして赤ちゃんが離乳食を自分で食べるようになる時、また体の不自由な方や機能障害がある方には重宝なものなんですよ。」
さ「そうですか。私の仲間はそのように役に立っているのですね。」
ゆ「そうです、世の中が様々な変化を遂げている時に、スケープゴートにされてしまったのだと思いますよ。犬食いやはしが上手に持てなかったのは他に原因が・・・。」
「お父さん、帰るよ。」
の声に割れに、いや我に返った。
先割れスプーンとの白昼夢から覚め、現実の世界に戻された。白昼夢の中でえらそうにしゃべっていた私だが、私自身先割れスプーンを蔑視していたことがあったはずだ。それは自分の判断ではなく、世間一般が言っていることを物差しにして、価値観を決めていたからであろう。その判断が多数になれば、実際には違うことでもいつの間にか事実になっている怖さ。先割れスプーンへの評価は冤罪であると思っているのである。実に申し訳なかったと思う。
何でも学校のせいにしてれば親は楽だし。。。
お箸の使い方を知らない人はやはり家庭で教わっていないんでしょうね。