久しぶりに映画を観た。ドイツ人哲学者ハンナ・アーレントが、ナチの親衛隊員でユダヤ人の強制収容に深く関わったアイヒマンの裁判を傍聴しアメリカの新聞社に寄稿し、そのことでユダヤ人社会から厳しく糾弾されるという実話に基づいた映画。
アイヒマンは戦後ドイツから逃亡し偽名を使ってアルゼンチンで生活していたが、戦争犯罪を追及するイスラエルのモサドによって逮捕されイスラエルで裁判が行われる。
その裁判を、ユダヤ人で迫害を逃れアメリカに亡命したハンナが傍聴しするのだが、彼女がアイヒマンから受ける印象は、自分の思想など持たずただ唯々諾々と命令に従っただけの小役人というものだった。その傍聴記をアメリカの新聞社に寄稿するのだが、ユダヤ人社会は極悪人アイヒマンを擁護するものとして彼女を非難し、彼女の周りのユダヤ人たちも彼女から離れていってしまう。
それでも彼女は屈せず、自説を曲げない。彼女は根源的な悪と凡庸な悪は違うものだという。全体主義のなかでは人は自ら考えることを放棄し上からの命令に従って生きることを選んでしまう。それが凡庸な悪なのだという。
哲学的な話も多く堅くて難しいテーマだった。自分だって深く考えることなくなんとなく原発は安全と思い、核のゴミの問題なんか考えてもいなかったし、もし戦争中に生きていれば「鬼畜米英」と叫んでいただろうし。人間としての生き方を考えさせられる作品だった。