ロッコさんの散歩

街を歩く。近くの山に登る。店に入って安くておいしいものを食べる。掘り出し物を見つける。それが散歩の醍醐味。

わたしに会うまでの1600キロ

2015年08月31日 | 映画

このところ秋雨前線が停滞、不安定な天気が続く。高山の山小屋ではすでにストーブが焚かれ夏山シーズンは終了。年によっては9月も猛烈な残暑が続くこともあるが、今年は秋の訪れが早いようだ。あとは天気が安定するのを待つのみ。

ということで家で停滞中なので代わりに、女一人アメリカのロングトレイルを歩く映画を観てきた。原作はシェリル・ストレイドという女性の実話。しかし単純にトレイル歩きを楽しむ映画ではなさそうだ。

アメリカ西部のパシフィック・セントラル・トレイルは全行程4000キロという桁外れのロングトレイル。主人公はそのうち1600キロを歩くためにスタート地点を訪れるが、旅に出るワクワク感とは無縁の悲壮感がただよっている。

初日、これまでしたこともないテント張りに手こずり、燃料を間違えバーナーも使えず湯も沸かせない。決して楽しみのための旅ではなく早くも後悔し始める。そんな彼女が旅に出た事情が回想で語られる。離婚して一人でシェリルと弟を育ててくれた最愛の母を亡くし、自分自身の結婚生活も破綻、セックスとクスリに溺れる日々。自分を見つめ、過去と決別し、再生を図るための旅らしい。

トレイルは森あり、砂漠あり、雪山ありと変化に富んでいるようだがあまり風景の素晴らしさは描かれていない。原題は”WILD"だが、ワイルドな自然に癒されるというより、苦しい状況に身を置き、他人と出会うことで主人公が内省を深めていくことに重きが置かれている気がする。中学生が観てもいいと思うのだが、部分的な性描写のためかR15指定になっているのが惜しい。

私自身はこんなロングトレイルを歩いたことがないし、普段の山行でも「自分を見つめる」などと殊勝なことはあまりしたことがない。それでも一人重い荷物を背負ってゴールした時の達成感はやはり格別なものがある。

遍路道、巡礼道などを歩く人が多いことからするとわざわざ苦しい状況に自分を追い込むことで再生を図ろうとする人がいるのは世界共通のことのようだ。しかしそういうきっかけを掴んだだけで目的の半分くらいは達している気もする。きっかけも見つけられず深い穴に沈んでいく人が多いことも現実か。

映画の原作者はこの旅をやり終え、経験を本にし、無事人生の再生にも成功したようなのでまずはめでたし、めでたし。

 

コメント
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