のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

歓びを歌にのせて / 2004年スウェーデン

2006年01月09日 17時02分49秒 | 映画鑑賞
■ストーリ
 世界を舞台に活躍する著名なオーケストラ指揮者ダニエル。
 彼は過酷な公演スケジュールとプレッシャーの中、病のため
 第一線を退くことになり、生まれ故郷の小さな村に戻った。
 音楽にはもう関わらないと決めていたダニエルだったが、
 ある日、地元の聖歌隊の指揮を依頼される。心から音楽を
 愛する彼らの心に触れ、ダニエルは音楽の素晴らしさを
 思い出していく。
 一方、それぞれの人生に様々な問題を抱えていた村の聖歌隊
 メンバーも、ダニエルと過ごす日々の中で変わろうとしていた。

■感想 ☆☆☆☆☆
 「歌う」ことと「書く」ことはどこか似ている。
 自分の中の思いを外に吐き出すところ。
 自分自身と向き合わざるをえないところ。
 どこかもやもやしたものを形にするという作業。
 普段は何の気なしに聞いていた曲を歌うことで
 初めて歌詞の意味に気づくように。
 楽しかった出来事を書くことで、何が楽しかったのか
 どう楽しかったのか、なぜ楽しかったのかが
 具体的につかめてくるように。

 どちらにもその行為自体にカウンセリング機能が
 あるのだと思う。

 だからダニエルは村人たちに対して、
 歌い方の指導なんてしない。
 抱えている問題にもアドバイスなんてしない。

 彼はただこう伝える。
 「よく聴くんだ。」
 「自分の声(トーン)を掴むんだ。」

 そう、自分の人生を他人がどうにかしてくれるわけがない。
 どんなに辛くてもどんなに迷っていても
 自分で自分の人生を掴むしかない。
 そのためには、自分が何をしたいのか
 自分自身に問いかけ、心に耳をすますしかない。
 心の奥底に眠っている自分も気づいていない望みを
 はっきりと自分で掴み取るしかないのだ。

 コンサートで夫から暴力を受けているガブリエルは
 ソロで歌うことになる。自分に自信がなく
 夫に暴力を受けても抵抗できなかった彼女が
 高らかに歌い上げる曲は、強くまっすぐ私たちに訴えかける。

 「私の人生は私のもの
  生きてる喜びを心から感じたい
  私はそれに値すると誇れる人間だから」

 色々と悩んで泣いてわめいて人とぶつかって
 すぐに問題が解決するわけではない。
 問題は自分だけで解決できるわけではないから。
 人はひとりで生きているわけではないから
 自分の声を掴めてもすぐに美しいハーモニーが
 できあがるわけではない。不満は常に人の胸の中に
 くすぶっている。

 だから人は歌うのかもしれない。
 自分の声(望み)を人に訴えるために。
 だから私たちは聴かなければいけない。歌いながら。
 周囲の人はどんな声(望み)かしら?と真摯に。

 ラストの合唱は圧巻。
 これはぜひ映画館で見て欲しい。
 部屋で見るならば可能な限り音を大きくしてみて欲しい。
 人の声には大きな力がある。
 ひとりではなく多くの人の声と重なれば重なるほど
 その力は強く美しくなる。

ノエル / 2004年米国

2006年01月09日 16時27分47秒 | 映画鑑賞
■ストーリ
 マンハッタン、クリスマス・イブ。
 編集者として成功したローズは、離婚してからすっかり
 男性と縁がなく、アルツハイマーが進む母親の世話に
 明け暮れていた。
 ニューヨーク市警のマイクは、婚約者ニーナに対する
 異常な嫉妬心のせいで彼女とギクシャクしてばかり。
 マイクにつきまとうおかしな老人まで現れ、さらに事態は
 おかしなことに。
 お祭り騒ぎの外側にいるそれぞれの孤独を抱えた人々。
 彼らは幸せなクリスマスを過ごすことができるだろうか?

■感想 ☆☆☆☆
 お正月シーズンも終わりを告げつつある今
 なぜか上映されているクリスマス映画。
 季節的な違和感があるため、見に行こうかどうしようか
 迷ったけれど、「クリスマス」にどうしても弱く、結局鑑賞。
 ・・・見てよかった。

 クリスマスには奇跡がよく似合う。
 他の季節に「奇跡が起こった」などといわれても
 胡散臭さが漂うけれど、クリスマスシーズンならば
 ほんの少しいつもより素直な気持ちで「奇跡」を
 信じることができそうな気がする。

 ただし、奇跡を目にすることができるのはそれを
 待ち望んでいる人たちではなく、奇跡なんて言葉を
 思いつきもしないほど疲れている人、寂しい人。
 クリスマスは町全体が、そしてそこにいるみんなが
 浮かれているシーズン。
 だからこそ、ちょっとした不幸せが耐えられない季節だと思う。
 いつもと同じなのに。昨日も今日と同じような日だったのに。
 寂しさが身にしみる季節。
 だから、いつもは抱えている孤独と
 なんとか折り合いをつけて生きているのに、
 我慢ができずに心の中の澱を吐き出してしまった彼らに
 素直に共感できる。

 みんな幸せな気持ちで過ごすはずのクリスマスになぜ?
 そういう気持ちが爆発してしまうのだと思う。
 そんな彼らに舞い込む小さな奇跡の数々。
 あくまでも小さな奇跡。ニュースにもならないほどの。

 けれど、寒さが厳しいときほど1杯のお茶が
 与えてくれる暖かさは大きいように、この日に小さな奇跡が
 彼らに与えるのは大きな喜び。かけがえのない穏やかな平安。

 ラストシーンでニューヨークの街中に降る雪が
 暖かく感じられるそんな映画だった。

 それにしても、とっても豪華なキャストにびっくり。
 スーザン・サランドンにペネロペ・クルスに
 アカデミー賞受賞俳優(ホームページでも
 内緒にしているので明かせません。)まで!
 それだけの人々が演じたいと思った映画なんだと思う。
 

ほうかご探偵隊 / 倉知淳

2006年01月09日 16時25分40秒 | 読書歴
■ストーリ
 僕のクラスで連続消失事件が発生。僕は四番目の被害者に!
 といっても、なくなったのはもう授業でも使わないたて笛の一部。
 なぜこんなものが!?いらないものばかりが一日おきに
 姿を消すという奇妙な事件が五年三組にだけ起こっている。
 この不可思議な事件を解決してみないかと江戸川乱歩好きの
 龍之介くんに誘われ、僕らは探偵活動を始めることにした。
 僕がちょっと気になっている女子も加わり事件を調べていくのだが…。

■感想 ☆☆☆
 少年少女にもっと本物のミステリーを読んでもらおうと
 企画された「ミステリーランド」の第六回配本。
 つまり児童小説ですのであっという間に読めちゃいます。

 血なまぐさい事件はおきないものの、
 しっかりとした謎解きで飽きずにさくさく読めます。
 そのうえ解決したはずの事件がその後、二転三転。
 そのどんでん返しがいかにも倉知さんらしくて
 人を食ったようなひょうひょうとしたあの先輩の
 笑顔が目に浮かびます。
 
 私も小学校高学年から冒険小説に手を伸ばし
 彼らの活躍する事件に手に汗を握りました。
 私のヒーローはルパン!
 優雅で血を嫌うスマートな彼に憧れてました。
 その後、ホームズに手を広げ、そこからポワロや
 エラリー・クィーンへ。
 思えば最初は海外ものばかりで国内のものには
 まったく目を向けていませんでした。
 江戸川乱歩さんなんて表紙もおどろおどろしかったし。

 なんて、あの頃の図書館の空気を思い出しました。
 
 倉知さんのファンには嬉しいあの先輩も
 ほんの少し登場。(いや、登場はしてませんね。)
 思わずにんまりしてしまいます。

てるてるあした / 加納朋子

2006年01月09日 16時20分17秒 | 読書歴
■ストーリ
 親の夜逃げのために高校進学を諦めた照代。
 そんな彼女の元に差出人不明のメールが届き、女の子の
 幽霊が現れる。これらの謎が解ける時、照代を包む
 温かな真実が明らかになる。不思議な街「佐々良」で
 暮らし始めた照代の日々を、彼女を取り巻く人々との
 触れ合いと季節の移り変わりを通じて鮮明に描いた
 癒しと再生の物語。

■感想 ☆☆☆
 「ささらさや」の続編。
 前作で主役だったさやさんは脇に下がり
 新たに佐々良にやってきた照代の視線で物語は進められる。

 前半、あまりにも不満だらけ、コンプレックスだらけの
 照代の独白に少々うんざりしてしまう。
 小さい頃、親の愛情を感じ取ることができなかったために、
 周囲の人の優しさにも気づけない照代。
 そんな自分が嫌いでたまらない照代。

 そんな彼女を包み込む時が止まっているかのような
 のどかな街とその住民たち。一癖もふた癖もある
 三婆トリオと若い母親連中、そして同じ家にいるらしい
 小学生の幽霊に振り回され、少しずつ人の思いに
 気づき始める照代。

 ラストのほろ苦さはこれまでの加納作品とは
 一線を画する。けれども読後感に残る優しさは、
 いつもの加納作品通り。目頭が熱くなります。