久々に小説を読みました。面白かったな。
やはり私は基本的にノンフィクションより、フィクションが好きなんだよね、としみじみ思いました。
と、言いつつ、今月も小説少なめです。
6.小暮写真館/宮部みゆき
■感想 ☆☆☆*
久々に小説を読みました。宮部さんの作品は、本当に登場人物が暖かく、奇をてらわず、まっとうに人に寄り添ってくれるので、「小説読むには少し疲れてるんです。」という今の私の状態にも穏やかに寄り添ってくれました。登場人物たちがみなお互いにお互いを思いやりあっていて、その描写がとても居心地の良い作品でした。悲しみや傷を抱えているのに、その痛みに囚われず、前を向く主人公の両親の強さに心を打たれました。彼何が大切なのかを迷わない強さ、「大切にする」と決めたものを守るためにしがらみを断ち切る潔さが素敵な両親でした。それだけに、それほどの強さをもってしても、今なお痛みを「過去の出来事」にできず、ふとした拍子にその悲しみを見せる両親、特に母親の描写は胸に迫ってきました。いつもは、飄々とした明るさで包み込んでいるからこそ、余計に胸が痛くなってきました。
主人公の家族もお互いを思いやり、いたわりあっていたけれど、主人公の友人も、お世話になった不動産やさんの店主も、傷ついている主人公たちにそっと寄り添う姿が素敵でした。
7.鍵のない夢を見る/辻村深月
■感想 ☆☆☆
読んでいる間中、普段目をそらしている自分の中のエゴや自意識過剰な部分を突き付けられているようで、「わぁーっ。」と叫びだしたい気持ちになりました。「わかるなぁ。」と思う気持ちと、「わかりたくないなぁ。」と思う気持ち、「私にもこういう部分、あるわ。」と思う気持ちと、「でも、ここまでではない気がする。」という気持ち。そんな気持ちが混ざり合って、ごちゃごちゃになり、紐解くのが大変でした。読み終えたときには、疲れ果てていた気がします。どんなに否定しても、女性にはこういう部分があるんだろうなぁ、と思いました。少なくとも、私にはあるなぁ、と思いました。認めたくないけれど。
8.ふしぎなキリスト教/橋爪大三郎・大澤真幸
■感想 ☆☆☆☆
おもしろかったー!そして、とてもわかりやすかったー!
わたし、曲がりなりにもクリスチャンの端くれだというのに、色々と「そういうことかぁ。」と納得しながら読みました。なんとなく理解していたけれど、改めてすっきり整理できたかな。「キリスト教」という宗教がなかなか日本という国に馴染まない理由も分かった気がします。「キリスト教は結局、自分が『信じる』と選んで行動を起こすことを求められる宗教なんだ」という部分に「そうなんだよねぇ。」と深く頷きました。
9.梅咲きぬ/山本一力
■感想 ☆☆☆
深川の料亭「江戸屋」の女将である四代目秀弥の成長譚。きりりと背筋を伸ばして、前のみを見る秀弥がとてもかっこよく、それでいて義理人情を大切にする姿に今の日本には失われた人のぬくもりを思いました。自分にも他人にも厳しい。けれど、自分のための損得勘定を一切せずに周囲に気を配り続ける。「自己責任」ではなく、「お互い様」。面倒なしがらみも多いし、今以上に大変だったんだろうな、この時代の人たちは、とも思うけれど、でも、やはりご近所さんのこういった繋がりは必要だったんじゃないかな、と思いました。
ヒロイン、秀弥が人生をかけたたったひとつの恋が迎えた結末が切なくて、他人事なのに(そしてフィクションなのに)胸が痛くなりました。お互いに思いあっていても、そして、お互いに思いあっていることが分かっていても、報われない。寄り添うことができない。その切なさを思うと、「人生をかけた恋」になんて、出会わないほが幸せなのかもしれない、と思ってしまうのです。
10.たてつく二人/三谷幸喜・清水ミチコ
11.かみつく二人/三谷幸喜・清水ミチコ
■感想 ☆☆☆
仲良し二人組のラジオ番組を構成しなおしたもの。活字なのに、ふたりの息の合った掛け合いが聞こえてきました。実際に聞くと、なお一層面白いんだろうなぁ。関東の人たちが羨ましい・・・と心底思いました。(・・・あれ?もしかして、福岡でも聞けるのかしら?)
12.古道具ほんなら堂/楠章子
■感想 ☆☆☆*
無愛想な大人が媚を売ることなく、でも、決して突き放さず、その人が一番必要としているサポートをそっと(わかりにくく)行う。そんな話が大好きです。おそらく、この人物像の原点は、私にとってメアリー・ポピンズ。ついつい、「分かりやすい優しさ」に目を奪われてしまうけれど、私はぶっきらぼうに、わかりにくい優しさで誰かの傍に寄り添えられる人に憧れます。そういう優しさにきちんと気付ける人になりたいな、と思います。
13.インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日/中村安希
■感想 ☆☆☆
ユーラシア・アフリカ大陸を旅した684日間の記録。「旅先で何をしたか」ではなく、「旅先でどんな出会いがあったか」に的を絞って、描写しています。あまりにも日本と異なる生活様式に、世界は広いという当たり前のことをしみじみと思いました。けれど、別世界のように思えるこの国の人たちの生活も、私たちと関わっているのだということを、今更ながらに知りました。「先進国」と呼ばれる国々の「支援」がアフリカをどんどん変えていく。良かれと思っての支援だけれど、その「良かれ」という判断は、先進国の人たちの価値観による判断で、結局は、何が幸せなのか、どうかかわりあって、どう支えあうのが正しい姿なのか、それ分からないし、「みんなが幸せ」という世界を作るのは本当に難しいんだろうな、と思いました。
人と人とのかかわり方に正解なんて、きっとないのだと思います。けれど、私は彼女が国際協力に関して書いた「評価されない小さなことを謙虚な姿勢でやっていく。もっともっと評価されずに、それでも淡々とやっていく。」という文章に共感しました。そうかもしれないな、と納得しました。日本は常々、国際社会での立ち回りが下手だといわれてきたけれど、それって素敵なことなんじゃないかな、と思いました。支え合うことに他の国々の評価や、国と国のパワーバランスの変化は必要ない。そう思いました。
私はあまりにも世界のことについて、無知すぎるし、無関心すぎるんだな、ということを実感できた本でした。
やはり私は基本的にノンフィクションより、フィクションが好きなんだよね、としみじみ思いました。
と、言いつつ、今月も小説少なめです。
6.小暮写真館/宮部みゆき
■感想 ☆☆☆*
久々に小説を読みました。宮部さんの作品は、本当に登場人物が暖かく、奇をてらわず、まっとうに人に寄り添ってくれるので、「小説読むには少し疲れてるんです。」という今の私の状態にも穏やかに寄り添ってくれました。登場人物たちがみなお互いにお互いを思いやりあっていて、その描写がとても居心地の良い作品でした。悲しみや傷を抱えているのに、その痛みに囚われず、前を向く主人公の両親の強さに心を打たれました。彼何が大切なのかを迷わない強さ、「大切にする」と決めたものを守るためにしがらみを断ち切る潔さが素敵な両親でした。それだけに、それほどの強さをもってしても、今なお痛みを「過去の出来事」にできず、ふとした拍子にその悲しみを見せる両親、特に母親の描写は胸に迫ってきました。いつもは、飄々とした明るさで包み込んでいるからこそ、余計に胸が痛くなってきました。
主人公の家族もお互いを思いやり、いたわりあっていたけれど、主人公の友人も、お世話になった不動産やさんの店主も、傷ついている主人公たちにそっと寄り添う姿が素敵でした。
7.鍵のない夢を見る/辻村深月
■感想 ☆☆☆
読んでいる間中、普段目をそらしている自分の中のエゴや自意識過剰な部分を突き付けられているようで、「わぁーっ。」と叫びだしたい気持ちになりました。「わかるなぁ。」と思う気持ちと、「わかりたくないなぁ。」と思う気持ち、「私にもこういう部分、あるわ。」と思う気持ちと、「でも、ここまでではない気がする。」という気持ち。そんな気持ちが混ざり合って、ごちゃごちゃになり、紐解くのが大変でした。読み終えたときには、疲れ果てていた気がします。どんなに否定しても、女性にはこういう部分があるんだろうなぁ、と思いました。少なくとも、私にはあるなぁ、と思いました。認めたくないけれど。
8.ふしぎなキリスト教/橋爪大三郎・大澤真幸
■感想 ☆☆☆☆
おもしろかったー!そして、とてもわかりやすかったー!
わたし、曲がりなりにもクリスチャンの端くれだというのに、色々と「そういうことかぁ。」と納得しながら読みました。なんとなく理解していたけれど、改めてすっきり整理できたかな。「キリスト教」という宗教がなかなか日本という国に馴染まない理由も分かった気がします。「キリスト教は結局、自分が『信じる』と選んで行動を起こすことを求められる宗教なんだ」という部分に「そうなんだよねぇ。」と深く頷きました。
9.梅咲きぬ/山本一力
■感想 ☆☆☆
深川の料亭「江戸屋」の女将である四代目秀弥の成長譚。きりりと背筋を伸ばして、前のみを見る秀弥がとてもかっこよく、それでいて義理人情を大切にする姿に今の日本には失われた人のぬくもりを思いました。自分にも他人にも厳しい。けれど、自分のための損得勘定を一切せずに周囲に気を配り続ける。「自己責任」ではなく、「お互い様」。面倒なしがらみも多いし、今以上に大変だったんだろうな、この時代の人たちは、とも思うけれど、でも、やはりご近所さんのこういった繋がりは必要だったんじゃないかな、と思いました。
ヒロイン、秀弥が人生をかけたたったひとつの恋が迎えた結末が切なくて、他人事なのに(そしてフィクションなのに)胸が痛くなりました。お互いに思いあっていても、そして、お互いに思いあっていることが分かっていても、報われない。寄り添うことができない。その切なさを思うと、「人生をかけた恋」になんて、出会わないほが幸せなのかもしれない、と思ってしまうのです。
10.たてつく二人/三谷幸喜・清水ミチコ
11.かみつく二人/三谷幸喜・清水ミチコ
■感想 ☆☆☆
仲良し二人組のラジオ番組を構成しなおしたもの。活字なのに、ふたりの息の合った掛け合いが聞こえてきました。実際に聞くと、なお一層面白いんだろうなぁ。関東の人たちが羨ましい・・・と心底思いました。(・・・あれ?もしかして、福岡でも聞けるのかしら?)
12.古道具ほんなら堂/楠章子
■感想 ☆☆☆*
無愛想な大人が媚を売ることなく、でも、決して突き放さず、その人が一番必要としているサポートをそっと(わかりにくく)行う。そんな話が大好きです。おそらく、この人物像の原点は、私にとってメアリー・ポピンズ。ついつい、「分かりやすい優しさ」に目を奪われてしまうけれど、私はぶっきらぼうに、わかりにくい優しさで誰かの傍に寄り添えられる人に憧れます。そういう優しさにきちんと気付ける人になりたいな、と思います。
13.インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日/中村安希
■感想 ☆☆☆
ユーラシア・アフリカ大陸を旅した684日間の記録。「旅先で何をしたか」ではなく、「旅先でどんな出会いがあったか」に的を絞って、描写しています。あまりにも日本と異なる生活様式に、世界は広いという当たり前のことをしみじみと思いました。けれど、別世界のように思えるこの国の人たちの生活も、私たちと関わっているのだということを、今更ながらに知りました。「先進国」と呼ばれる国々の「支援」がアフリカをどんどん変えていく。良かれと思っての支援だけれど、その「良かれ」という判断は、先進国の人たちの価値観による判断で、結局は、何が幸せなのか、どうかかわりあって、どう支えあうのが正しい姿なのか、それ分からないし、「みんなが幸せ」という世界を作るのは本当に難しいんだろうな、と思いました。
人と人とのかかわり方に正解なんて、きっとないのだと思います。けれど、私は彼女が国際協力に関して書いた「評価されない小さなことを謙虚な姿勢でやっていく。もっともっと評価されずに、それでも淡々とやっていく。」という文章に共感しました。そうかもしれないな、と納得しました。日本は常々、国際社会での立ち回りが下手だといわれてきたけれど、それって素敵なことなんじゃないかな、と思いました。支え合うことに他の国々の評価や、国と国のパワーバランスの変化は必要ない。そう思いました。
私はあまりにも世界のことについて、無知すぎるし、無関心すぎるんだな、ということを実感できた本でした。