旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

三陸海岸をゆく夏 宮古「千兩男山」

2021-07-03 | 日記・エッセイ・コラム

 盛から3つ目の「恋し浜」は太平洋を見渡す高台の駅だ。
ホームには天使のオブジェを背にして「幸せの鐘」が掲げられている。
この鐘、カップルで鳴らすと永遠に結ばれ、一人で鳴らすと素敵な出会いが訪れると云う。
停車と同時に昔のお嬢さんが我先にと「鐘」に殺到してなんだか微笑ましい。 

JR山田線の宮古~釜石間が復旧、そして経営移管を受けリアス線が一つになった。
盛から久慈まで163キロ、風光明媚な三陸海岸をさらに北上する。 

鉄の町釜石のラーメンは程よいコシの極細の縮れ麺、スープは琥珀色に透き通る醤油味。
是非食べておきたいと、乗り換え時間に発祥の店「新華園本店」に飛びこんだ。

気動車は復旧なった旧山田線区間に入る。鳥ヶ沢トンネルを抜けると両石湾が広がった。
沖にはオオミズナギドリ、ヒメクロウミツバメの繁殖地、天然記念物・三貫島が浮かぶ。

日が傾いた頃、三陸鉄道本社が在る宮古に到着する。駅前は思いがけず賑やかだ。
JAZZが流れる「居酒屋大ちゃん」で、地元は菱屋酒造店の "千兩男山" を呑む。
肴は "ホヤ"、"かつお"、そして "ドンコのたたき"、肝を味噌でたたいてとろりと旨い。
すっきりした "千兩男山" の呑口が刺身に合ってご機嫌な宮古の夜なのだ。

つづく

すみれ色の涙 / 岩崎宏美 1981