旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

ディーゼルカーとボタ山と“とろろこぶうどん”と 後藤寺線を完乗!

2023-01-14 | 呑み鉄放浪記

赤地に白く抜いた「快速」の文字も誇らしげに、3531Dは23往復の後藤寺線にあって唯一の快速列車だ。

筑豊の日の出は7時20分、まだ山並みから昇ったばかりの朝日に照らされて、旧い気動車のドアが閉まる。
もはや東日本では見ることが無くなったキハ40系列の2両編成は、唸り声を上げてあくまでも鈍重に動き出した。

左手にカーヴを切って筑豊本線を離れた後藤寺線は、しばらく南東に向かう直線区間を加速していく。
右手に見える3つの三角錐は旧住友忠隈炭鉱のボタ山、その美しい姿から「筑豊富士」とも呼ばれる。

峠とも言えない小さなピークを越えると、今度は左手に岩肌が剥き出して人工的に道付けされた山が現れる。
関の山鉱山に麻生セメント、列をなして走るダンプカーが巻き上げる土埃は白い。なるほど石灰石鉱山だね。

もともと後藤寺線は石炭や石灰石を輸送するための貨物鉄道を、鉄道国有法により国鉄が買収して開通した。
今では石炭鉱山は全て閉山して石灰石鉱山だけが残っている。後藤寺線はすでにセメント輸送を廃止している。

わずか16分、キハ40系列の2両編成は田川後藤寺に終着する。木製の跨線橋がレトロ感いっぱいの雰囲気だ。
この駅は日田彦山線に後藤寺線、さらには糸田線(平成筑豊鉄道)が乗り入れる要衝だが、相互に乗り入れはない。

かつて炭鉱関係者で賑わったであろう田川後藤寺駅前に、昭和の匂いもぷんぷんに「一平食堂」がある。
7時に開店する駅前食堂は老夫婦が切り盛りする。ウインドウにはお惣菜を並べてご老人や単身赴任者の御用達。

ウインドウから “切り昆布” を択んで、スーパードライをグラスに注ぐ。レトロな180mlのコップが泣かせる。
朝飯がわりに “とろろこぶうどん” を注文。うどんが茹で過ぎなのはご愛嬌、しっかりした出汁、とろとろの
昆布が美味しい。何しろ飲み疲れた胃に優しいね。小母ちゃんとの会話を楽しんで、小さな旅を終えるのです。

後藤寺線 新飯塚〜田川後藤寺 13.3km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛の中へ / 渡辺徹 1982