名ばかりのランチルーム

職場にランチルームができた。


昔は立派なランチルームが半地下にあったらしいが、オーナーの意向でそこはレストランになり、

従業員はモール内のイートスペースで、お客様に混じってランチをとっていた。

週末など混みあうときには、座れる場所を探すのも大変だし、ランチルームがあったらいいのにと思っていたから

誰もが期待に胸を膨らませていた。



ランチルーム解禁の日、さっそく様子を見に行った。


おそるおそるドアを開けてみた。



そこは、ルームというには狭すぎる。

縦２ｍ、横１ｍぐらいの窓なしの場所に

電気のヒューズ盤や大きなパイプがうねっていて、

そこに申し訳程度の小さなテーブルが２個、スツールが６個。

まったく見ただけで気が滅入るような場所なのだ。


ここはパイプスペースだ・・・・

いや、ここは独房だ。



モール内の従業員が何人いるのか、オーナーは知らないはずがないだろう。

３人入れば、もう一杯な感じのパイプスペースで、

いったいどうやって寛げというのだ？

しかも、モール内で購入したランチなら従来どおりイートスペースで食べてもいいが、

手持ちのランチは食べられないという規約付。



数日は、何か物を買って、よそで食べていたのだったが、

昨日、初めてそこに行ってみた。

既に３人の人が食べていた。「まだ座れるからどうぞ」と言われて、入り口に近い場所に

３人に背を向ける形で座った（そこにしか椅子がない）

３人との距離は数十センチ。

一人の人が、８年前にご主人を亡くされた話を延々としていて、

残りの二人が涙ぐみながら聞いている。

私はいつも本を読みながらお昼を食べるのだけれど、本に集中できない。

その人には、心から大変だったのだなあと思うけれど、

知らない人の話に加わるタイミングもみつけられず、至近距離で背を向けたままいるのが居心地も悪くて、

２０分かそこらで引き上げてきた。



もう２度と行かない。

あんまりひどすぎやしないか？

明日からは、モールの外のベンチで青空を見ながら食べることにしよう。





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