太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

ママ

2014-01-10 11:33:50 | 日記
その昔、美大の滑り止めに、私立大学の美術科を受けた。

学科と実技と面接と、確か3日間かけて試験が行われた。

その3日の間に仲良くなった人達がいた。

一人は地元東京出身で、あとは私のように地方から受験しに来ていた。


名前は忘れてしまったが、その東京出身の子が

「ママがね」

と、ママを連発する。

当時、私の周囲で母親を「ママ」と呼ぶ人は皆無だった。

家の中ではママと呼んでいる人もいただろうけれど、友人の前では言わない、という感覚があったと思う。

母親が外国人の友人ですら、「おかあさん」と言っていた。




その子と一緒に駅で電車を待っていた。

「ママにお煮しめなんか食べたくないって言ってるのに、ママったら無理に食べさせようとするんだよ」

彼女がママと言うたびに、お尻のあたりがムズムズとする。

「で、パパが酔っ払って遅くに帰ってきたもんだから、ママが怒ってお煮しめの鍋を投げちゃってさー。

食べなくてすんだわけよ」


パパ、が出てきたところで私のムズムズは最高潮に達し、背骨から首の付け根まで痒くなってきた。





私にとって「ママ」とは お人形のリカちゃんのママ である。

本当にいかにもママらしい人や家庭であって初めて「ママ」が板につく。

いかにもなママとは、美しく品があって穏やかで、普段家にいるときでもアクセサリーをつけ、銀座に行くような洋服をきっちりと着ており

夫以外は素顔をみたことがなく、テニスをやったりして優雅に過ごしている。

たぶん、リカちゃんのママはお煮しめを作らないし、パパに鍋を投げたりしない。

そもそも、リカちゃんのパパは酔っ払って帰ってきたりしないだろう。




ママと言って似合うのは、リカちゃんと、漫画「エースを狙え」のお蝶夫人だと思っている。

引用が古くて申し訳ないけれど、

つまり、やたらお金持ち風なのだが、生活感といったものがまったくなく、すべてが謎に包まれている。

(お蝶夫人、という呼び名だって、高校生なのにどうして「夫人」なのかも謎である)





とにかく、試験の3日間、私はお尻をムズムズさせながら、

都会の子は違うなァー、とカルチャーショックを体験したのである。







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