日本食スーパーに行ったら、「おから」があった。
アロハ豆腐のおからなので、たぶん美味しいおからだと思う。
あの味が食べたくなって、買った。
あの味。
お醤油と砂糖の、黄金コンビ。
和食を作らないでいると、お醤油も砂糖も減らない。
子供の頃から食べていたようなものを作ると、ほぼ毎日お醤油と砂糖を使う。
「おから」はちょっとした鬼門。
おからが材料にないクッキーに、思いつきで、しかも大量のおからを
投入したばっかりに、食べるほどに口の中が異常に乾いてゆく、
世にも恐ろしいおからクッキーを作ってしまったのは、6~7年も昔の話。
ホウ酸ダンゴかと思った、ほんと。
念の為、日本の母に電話をしてみる。
「具を先に似てから、炒ったおからを入れるんだよね?」
「おつゆを多めにしないとダメだよ。味もしっかりめにしないとね」
クックパッドは便利だけれど、母のやり方の方が私には合っている。
電話を切って、ふと思う。
聞く母がいてくれることのありがたさ。
私の回りには、もう両親とも他界した人が多い。
私はいつだって、何かあると母に聞いてきた。
「ねえ、御香典いくら包んだらいい?」
「こんな手紙が来たんだけど、どうしたらいい?」
母はいつまでもそこにいて、答えてくれると思っている。
だから、そんな元気な母が、年をとって弱々しくなっていくのを、
私は受け入れることができない。
「弱らせてあげなくちゃいけないんだよね…」
友人が、そう言った。
そうなんだ。
私は自分の都合で、母を弱らせてあげずにいる。
本来であれば、私が母親の立場になるところを、
私はいつまでも子供役のままだ。
母の母親は、母が14の年に亡くなった。
「私が子供達にできることは、できるだけ元気で長生きすること」
いつか母がそう言ったことがある。
こんな時母親がいてくれたら、と母は母の人生で何度思ったことだろう。
「私が苦労をしておけば、あなた達はしなくて済むから」
そういうわけにはいかないんだよ。
そういう考え方をする母に育てられたことで、大変だったこともある。
けれども、私はそんな母が好きで、母を選んで生まれてきたのだろう。
おからは、まあまあ美味しくできた。
一口食べたら、母の顔が浮かんできた。
なぜだか少し目の奥がツーンと痛くなった。
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アロハ豆腐のおからなので、たぶん美味しいおからだと思う。
あの味が食べたくなって、買った。
あの味。
お醤油と砂糖の、黄金コンビ。
和食を作らないでいると、お醤油も砂糖も減らない。
子供の頃から食べていたようなものを作ると、ほぼ毎日お醤油と砂糖を使う。
「おから」はちょっとした鬼門。
おからが材料にないクッキーに、思いつきで、しかも大量のおからを
投入したばっかりに、食べるほどに口の中が異常に乾いてゆく、
世にも恐ろしいおからクッキーを作ってしまったのは、6~7年も昔の話。
ホウ酸ダンゴかと思った、ほんと。
念の為、日本の母に電話をしてみる。
「具を先に似てから、炒ったおからを入れるんだよね?」
「おつゆを多めにしないとダメだよ。味もしっかりめにしないとね」
クックパッドは便利だけれど、母のやり方の方が私には合っている。
電話を切って、ふと思う。
聞く母がいてくれることのありがたさ。
私の回りには、もう両親とも他界した人が多い。
私はいつだって、何かあると母に聞いてきた。
「ねえ、御香典いくら包んだらいい?」
「こんな手紙が来たんだけど、どうしたらいい?」
母はいつまでもそこにいて、答えてくれると思っている。
だから、そんな元気な母が、年をとって弱々しくなっていくのを、
私は受け入れることができない。
「弱らせてあげなくちゃいけないんだよね…」
友人が、そう言った。
そうなんだ。
私は自分の都合で、母を弱らせてあげずにいる。
本来であれば、私が母親の立場になるところを、
私はいつまでも子供役のままだ。
母の母親は、母が14の年に亡くなった。
「私が子供達にできることは、できるだけ元気で長生きすること」
いつか母がそう言ったことがある。
こんな時母親がいてくれたら、と母は母の人生で何度思ったことだろう。
「私が苦労をしておけば、あなた達はしなくて済むから」
そういうわけにはいかないんだよ。
そういう考え方をする母に育てられたことで、大変だったこともある。
けれども、私はそんな母が好きで、母を選んで生まれてきたのだろう。
おからは、まあまあ美味しくできた。
一口食べたら、母の顔が浮かんできた。
なぜだか少し目の奥がツーンと痛くなった。
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