太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

時代劇

2016-01-13 15:58:36 | 日記
お店にみえるお客様で、印象的な話し方をされる方がいる。

70代ぐらいの日本人で、物腰は丁寧だ。

ところが、いったん話し出すと、面食らう。


「おたずねしますが、佐伯泰英ご存知かッ!」


丁寧なんだか横柄なんだかかわかんない。

時代ものの大御所だから知っている。

その場所に案内した。


「居眠りシリーズ、ニューの本をご存知かッ!」


居眠りシリーズのニューはまだない、と言うと


「いつ、あるかッ!」


横柄なんだか、チュウゴク人なんだかわかんない。


入荷はいつになるかはわからない、と言うと

「あったらフォンするかッ!」

入荷したときに電話をしてくれるか、ということなんだが、

そういうサービスはしていない。


「残念!」




時代ものが好きで、時代ものばかり読んでいるからだろうか。

全体に言葉が時代劇調で、しかも時折助詞が抜けて謎のチュウゴク人風でもある。

日本人なんだが、普段あまり日本語を話していないのか、

ハワイ生まれの日本人なのか、

でも日本語の本を読めるとなると、どうも前者ではないかと思われる。



姉妹店から助っ人にきていた日本人の同僚が、

「ハワイなんかいい方だよ、前に住んでたコロラドなんか、もっとすごかった。

ウォールにハングするカレンダーある?って平気で言うもんね」



私はまだハワイに住んで5年だが、

それでもとっさに出てこない日本語はある。

「浴槽」とか、「原子力」とか、「薬局」とか、

会話の中で使う、もののたとえとか。

漢字など、けっこうな勢いで記憶から抜けてゆく。

昨夜など、寝がけになぜだか「蛇」という漢字がわからなくなった。

左側の虫はわかる。

どうしても右側のツクリが出てこない。そこだけボヤーっとしたまま寝た。



失われてゆく日本語に反比例して、英語がうまくなってゆくなら、いい。

しかし、英語は止まったままで、日本語だけが容赦なく壊れてゆく。

唯一、完璧なはずの言語なんだけど・・・



「明日、働くかッ!」

その方が帰りがけに聞いた。明日、あなたは働いているか、というのだ。

働いている、と言うと、満足そうな笑顔を残して出て行った。





にほんブログ村 海外生活ブログ 海外移住へにほんブログ村