太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

おかあさんとよぶな

2017-08-05 08:02:15 | 日記
日本各地を紹介する、日本のテレビ番組を見ていたら、

温泉地にやってきた若いリポーターが、温泉まんじゅうを売る店の男性に

「おとうさんは何年ぐらい温泉まんじゅうを作っているんですかぁ」

と聞いた。その瞬間、ムラムラと怒りがせりあがってきた。


まぁだ言っとるかッ!!


日本の番組を見る機会がなくなって、私は平和だった。

赤の他人を、おとうさんだのおじいちゃんだの呼ぶのは親しみのつもりであろうが、失礼千万である。

この怒りの発端は、何十年もさかのぼる。



当時、私は結婚したばかりで29か30歳ぐらいだった。

住んでいたアパートがある町内会の消防訓練に参加した。

消防士が消火器の使い方を説明するのを、住民が輪になって見ている。

ひととおり説明した消防士が、誰かにやってもらいましょうと言って人々を見回し、私のあたりまできて、

「じゃ、そこのおかあさん、やってもらっていいですか」

と言った。

私は自分のことだとは思わず、黙っていると

「ほら、そこのおかあさんおかあさん

まぎれもなく私を見て、おかあさんを連呼している。

どう見ても私より年上の、だらしなく贅肉がついた短足男が、である。

頭にきたので黙っていた。

「恥ずかしくないですよ、お願いしますよ、おかあさん

私は恥ずかしいんじゃない。怒っているのだ。


「私はあなたのおかあさんじゃありません」


私がそう言うと、小太りの消防士はポカンとした顔をした。

町内の主婦達の目が、私に集まる。


「それに私は誰のおかあさんでもありません」


主婦達の目が、私から小太り短足の消防士にサッと移る。

小太り短足の消防士は、なにかもごもごと口の中で言ったが、私は知らん顔をしていた。

結局、誰かほかの人がやることになったのだが、そのときから私はその類の呼びかけを憎むようになった。




番組の中で、赤の他人をおじいちゃんとかおばあちゃんとか呼ぶのも腹が立つが、

そう呼ばれてニコニコと応対している人々を見て、私の怒りは沸騰する。


「ニコニコ笑ってんじゃない!何とか言ってやれ!」


テレビに向かって怒っている私を、夫が不思議そうに見ている。

この微妙な感覚は、なかなかアメリカ人には伝わらない。

消防訓練の話にしても、「おかあさん」が「MOTHER」や「MOM]になると、なにか違ってしまう。

職場でも、同僚にこの話をしてみたが、いまひとつ伝わらなかった。


もし、日本に行ったときに街頭インタビューを受けて、おかあさんと呼ばれたら

国民の前で私は言ってやるのだ。

「おかあさんとよぶな」

そのときのことを想像すると、わくわくしてくる。

(年に1度行く日本でインタビューを受ける確率もさることながら、万一そうなったとしても

間違いなく放送されないだろうけど)







 にほんブログ村 海外生活ブログ 海外移住へにほんブログ村