太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

同じ船

2018-03-26 18:51:48 | 日記
近所にあるギャラリーで作品のフレームやらマットを頼むので、時々顔を出す。

そこは田舎にしてはなかなかいい作品が揃っている。

ラティーシャというフランス人が、ほぼオーナーのような威厳をもってそこにいる。

何度も会っているうちに気心が知れて、いろいろな話をするようになった。


昨日、仕事の帰りに寄って、マットをオーダーした。

私の携帯電話番号を書きとめるとき、私が「Three(3)」と言うたびに

クスリと笑う。

私の番号には3が4つもあるので、しじゅう笑いどおしで書き終えた。


「なによぅ。私の3の発音でそこまで笑うなんて失礼じゃないよ?」

ラティーシャはさらに笑顔を大きくして、

「違う違う、私も同じだからおかしくなっちゃったのよ」

「3の発音で笑われてるわけ?」

「3だけじゃないけどね」

確かに、ラティーシャの英語はフランス語のような雰囲気がある。

うまく説明できないのだけれど、普通の英語とは違う。

人はそれを「アクセント」と言い、私の英語は日本語のアクセントがあるのだろう。

ただ、それは自分にはわかりにくい。


「顔をつきあわせて話すぶんには何とでもなるけど、電話の会話はダメね。

シンプルなことならいいけど、込み入った内容なんかもう他の誰かに代わってもらうことにしてるわ」


「へえ、ラティーシャも?私もそうだよ。そのうち慣れるよね」


「そうねえー。私はアメリカに住んで28年目だけどね」


「・・・・え・・・28年・・・」


「ホラー!!そんな顔しないの。わたしたち、同じ船の仲間じゃないの」


ラティーシャはそう言って楽しそうに私の肩を抱いた。



そのとき私は思い出した。

友人が勤める会社には、アメリカ人と結婚している日本人同僚がたくさんいるが、

どういうわけか、彼女達の英語が上達するより先に夫のほうが日本語を理解するようになり、

よって彼女達の英語のレベルは一定のところで止まったままだという話を・・・

同僚の一人が電話で、夫が探しているものの場所を説明しているのを聞いていたら、

最初は英語で説明していたが要領を得ず、頭にきた彼女が日本語で

「だからそっちの引き出しの3番目に入ってるんだってば!!」

とまくしたてると、あっさり理解して電話を切ったという。

英語なんか、毎日使っていればそのうちペラペラになるさと舐めていた私は、そうとうショックだった。





母国語以外の国に住む者たちが乗る、その船は、どうやらどこへも行きつかずに

同じ場所をゆったりと旋回しているだけのようである。











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