太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

そんなに急いでどこにゆく

2021-07-05 14:07:33 | 日記
日本の番組を放送するテレビ局がなくなってしまい、残念に思っていたところ、
日本についてアメリカ人が作った番組を放送しているチャンネルを見つけた。
もちろん全部英語で、番組内の日本語も英語の吹き替えだが、
これがなかなかよくできていて、見始めるとずっと見てしまう。

なくなってしまったテレビ局で放送していたのは、
私が知らない芸能人が騒ぎながら旅をするとかいったもので、それも4,5年前なら新しいほう。
繰り返し放送するから、何度も同じものを見せられて、次に言うセリフまでわかる。

発見したこのチャンネルは、古くても昨年に作った、まじめなドキュメンタリー番組が主で、
ニュースは、バイリンガルの日本人キャスターが英語で話す。
熱海市の土砂崩れも、このニュースで知った。


今日みたのは、東京の電車システムについての番組だった。

東京は電車網が血管のように複雑に張り巡らされており、主要路線は2分半間隔で走行している。
秒単位の正確さを保っている陰に、どれだけの人の努力があるのか。
JRのコントロールセンターは、戦場さながらの緊張感。
金沢文庫にある、車両倉庫では、とめる車両の順番のやりくりを、コンピューターではなく人間がやっている。

朝7時半から8時半までの1時間はラッシュで、
駅のホームに入りきらない人々が、階段にまであふれている。
彼らの多くが、乗り換え案内のようなアプリケーションを携帯に入れて使っているという。
目的地に行くのに、どの電車が1番速いのか、何分で到着するのかが一瞬でわかるらしい。

「1分でも余計に待ちたくないですからね、便利ですよ」

中年のサラリーマンらしき男性がそう言った。
改札口では、100%の人がカードを「ピ!」とかざしただけで過ぎてゆく。
誰もが早足で、人とは目を合わせないようにしている。
どうしたって人と接触してしまうほど混み、自分の世界を守らなければならないのだから仕方がない。

日本で東京に行くときは、ラッシュの時間を避けるようにしている。
ラッシュでなくとも、私たちにとっては電車はじゅうぶんに混んでいる。
みんなが持っている「ピ!」とかざすカードを持たないので、毎回切符売り場で表示とにらめっこすることになる。
運賃を気にしないで乗り降りできるし、チャージして使えるから便利だよ、と東京に住む友人が言う。
しかし、どうも何種類もカードがあるようで、静岡県のどの辺まで使えるのかもよくわからない。
それを明らかにしようという意欲もなく、結局切符を買い、何回かに1回は改札でブロックされているのだ。

静岡市の繁華街ですら、人が多くて呼吸が浅くなることがある。
東京の大きな駅などに行くときは、気持ちは戦闘状態になる。
私はハワイでは、「歩くの速いよね」と言われるのだが、東京では人の流れの妨げになるほど遅い。
ハワイと東京では、自動ドアの開閉する速さまで違う。
東京から来た人は、ハワイの自動ドアで、開ききらないうちに通ろうとしてぶつかるだろう。

「日本の都会には、絶対に住めないね」

夫が言った。
私たちなど、日本の都会に放り込まれたら、要領が悪く、ぼんやりしている田舎者。
今朝はいつもと違う鳥が鳴いてるとか、干潮は7時だからそのころに海に行こうとか、
庭のプルメリアが今年は元気に咲いたとか、雨が降ったから庭に水まきしなくて済んだとか、
そんなふうに日々を暮らしていると、2分半間隔で正確に電車が来ることの価値も、1分でも余計に待ちたくない気持ちも、わからなくなる。

狭い日本 そんなに急いでどこにゆく

昔、そんなコピーがあった。
ハワイから見たら、日本はとてつもなく広い。

広い日本 そんなに急いでどこにゆく

ちっさな島で、田舎者はそう思うのである。