七夕の昨日、仔猫たちは引き取られていった。
里親になってくれるのは、同僚の親友夫婦で、初対面だったけれど、どこからみても善人な人たち。
仔猫たちをママ猫から離すことに心を痛めながら、想像以上に愛らしい仔猫たちに目じりが下がりっぱなしだ。
仔猫たちをキャリーケースに入れて、ソフィアと最後のお別れ。
「ママ、バイバーイ」
ソフィアは、シラっとした顔をしていた。
仔猫たちがもらわれてゆくことを話してあったからだろうか。
夜中。
どこかで猫が鳴いている。
にゃー、ではなく、クゥー、クゥー、という声。
「ソフィアかな」私が言うと、
「たぶん違うよ、もっと遠くで聞こえる。しばらく聞こえてるよ」と夫。
気になるので、ソフィアを見に行った。
仔猫たちがいなくなった、やけに広く感じるケージの中の、
お気に入りのトイレ砂の上(なぜかトイレ砂の上が好きなのだ)から、ソフィアはこちらを見ていた。
私はソフィアの斜め前に座った。
「ソフィア。子供たちがいなくなって寂しいね。私も寂しいよ」
夕方までは、あの可愛いこたちがでんぐり返しをしながらここにいた。
おもちゃのネズミや、私が作ったジャングルジムが空虚に残されて、私は泣けてきた。
「ずっとみんな一緒にいられるって、ソフィアは思ってたかもしれないね。
そうしてあげられなくて、ごめんね。でもね、約束する。
子供たちはみーんな、ものすごく良い人生を送るよ。かわいい、かわいいって言われて、大切にされるんだよ」
ソフィアは、ボロボロ泣いている私を見ている。
「大切な子供たちを、私たちに託してくれてありがとう。あのまま野良でいたら、あの子たちは生き延びられなかったかもしれないよ。
ソフィアは若いのに、ひとりで4匹も子供を産んで、7週間も育てて、みんなを幸せにして、偉かったね」
ソフィアが目を閉じる。
「うちにね、猫が2匹いるんだよ。とても良い子たち。
これから、ソフィアと、私たちとその猫たちと一緒に、楽しく暮らしたいと思ってる。ずーっと、ずーーっとだよ。それがあなたの幸せだと信じてるけど、それでいい?」
しばらくそうして泣きながら話かけて、寝室に戻った。
するとまた、ソフィアが泣いている。
クゥー クゥー クォー―ン・・・・・・
子供たちを探してるの。
ヤンママだから母性が薄いかも、なんて言ってごめんなさい。
子供を産んだことのない私に、母性のなにがわかる。
ごめんねソフィア。でも、ありがとう。
私はオイオイ泣きながら寝た。
ソフィアが子供たちを探す声が、静かに降り出した雨に混ざってゆく。