これもフォトエッセイ集です。アラーキーさんの東京ではなく、きままな旅の空の下を撮っています。
人間は登場しないのだけれど、古びたショーウインドウやドーナツや雑貨・食品が並んだ店先に人の気配はかすかにあるのです。
たまに通過するのはいいけれど、暮らすのはちと遠慮したくなるような風景が切り取られています。
花さんの年齢を知ってビックリです。1951年生まれ、そろそろ還暦です。
ご近所さん2人が『富士日記』を読め読めと、私にすすめてくれたのはもう20年以上も前でしょうか。
武田泰淳夫人の武田百合子さんが、山荘で入用な物資の買い物の様子や毎日の献立などをたんたんと書いているのです。
そこに登場してくる一人娘の花さんはせいぜい中学生か高校生といったところです。
それがいまや還暦間近のカメラマンです。
仕事の履歴から想像できる花さんはゆったりと過ぎる時の中で暮らしていたように思えます。
もっとも、ご本人は締め切りや約束事に追われる現代人そのものだったのかもしれませんけどね。