人生案内
3月10日日曜日、読売新聞くらし家庭欄の人生案内は70代男性氏のこんな相談でした。
「会社をリタイアした後、読書を楽しんでいます。ところが、読み終えた本の内容がすぐに記憶から消え去ってしまうことに悩んでいます・・・」
それに対して、作家・出久根達郎さんの回答はこうです。
「・・・小説の筋を忘れるというだけでしたら、心配はいらないと思います。私もよく忘れて、同じ小説を2冊、3冊と買うことがしょっちゅうです。・・・どうも小説というものは、忘れるように作られているようです。・・・」
まぁ、依頼者があまり落ち込まないように気を遣われているところもあるのでしょうが、さらに続きます。
「・・・それからこれは別にお勧めするわけではありませんが、私は感動した小説の一節をノートに書き写しています。小説に限らず書物全般の、なるほどと納得した文章を原文のまま抜き書きします。
そんなノートが200冊近くたまりました。時々これを拾い読みしております。一度読了した本の精髄を再読するようなもので、内容を思い出しますし、楽しいです」
高齢の多くの人は同じように忘れると思います。
私も今読んでいる本の2冊前に読んだ本のことなど、ろくにおぼえていません。
そして、ブログを始める15年前は出久根さんと同じように、面白い箇所、へ~なるほどぉと思ったところを抜き書きしたりしてました。
ブログに1冊分全体のレビューを書き起こすより気楽でした。
ところで、今読んでいる半年前^^の『暮しの手帖』に、「あの夏の日の写真」という特集があります。
その中に樹木希林さんと内田裕也さんが並んだ写真掲載されていました。1990年頃の写真だそうです。
樹木希林さんの文章です。
「ハワイ沖からダイヤモンドヘッドを背景に、夕日が沈むつかのまの写真だ。私共は45年ほど別居したままだ。この頃も勿論別居中。髪は二人とも黒い。このあと数々の事を起こすが、その気配を感じさせる写真だ。
夫と妻の溝は埋まらないまま、二人とも立派に後期高齢者になった。今も先は読めない」
樹木さんはすでに覚悟はあったと思いますが、まさかご自分が年内に世を去るとは思っていなかったでしょう。
それを読んでいる私も不思議な気持ちでいます。で、抜き書きしました。