始めに書いてしまうのはどうかと思いますが、この作品の最後の文章はこうです。
「私はゆっくりと荷台から降り、おむつを着けた不格好な姿のまま、よたよたと崖の方に近付いていった。」
桐野さんの作品をそう多く読んでいるわけではありませんが、血や汚れや泥水といった、清らかとは言えない臭いを感じることがあります。
優しくほのぼのとした気分になる、なんてことはまずありません。もちろん私が読んだ中では、ということですよ。
小説家・マッツ夢井(女性です)のもとに、「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会」という組織から召喚状が届き、海辺の断崖に立つ療養所に収容されます。
そこで、社会に適応した小説を書くようにと命じられます。
彼女はもう一度自由な外の世界にもどれるのならと、恭順する姿勢を見せたりするのですが、療養所のスタッフはかえって反抗するように仕向けてきます。
彼女は結局断崖から身を投げる・・・と思わざるを得ない結末ですが、1%ほどは逃げおおせると思えます。
時の権力を批判する人間や組織は排除されてしまう。そんな不快な思いは誰だってしたくないから、自主規制してしまう今の世の中です。
2020年6月29日づけの読売新聞に、「コロナ感染は自業自得だと思うか」というアンケートの結果が載ったそうです。
アメリカが1%、イタリアで2.51%、中国が4.83%に対して、日本は11.5%が「本人が悪い」と。
社会批判、政権批判が口にできない国は活性化できないと思うんですけどね。
桐野さんにはこれからも、社会を「見る目」を曇らせない、批判精神を育てる作品を世に出していただきたいです。
芸能人やスポーツ選手も次々とコロナに感染した、と報道されています。阪神のピッチャー 西勇輝、斎藤友貴哉、西純矢が感染しました。
芸能人も多数感染しています。いつピークアウトするでしょうか。
球界は沖縄キャンプからしてすでにリスクたっぷりですよね。
2月8日には阪神、日ハムの練習試合が組まれているそうです。
楽しみではあるのですが、もう無茶苦茶な世界になってしまった感が
あります。