馬場あき子選
卒業生の顔忘るまじ今日だけはマスク外させ最後の授業 西尾市 丸山富久治
救出の度に拍手の沸くトルコ拍手沸かざりウクライナには 観音寺市 篠原俊則
一首目、コロナ禍でずっとマスクを外せなかった生徒たち、給食も黙って食べるなんて、本当にかわいそうだったと思います。せめて最後の授業だけは、みんなの顔をしっかり見届けたいという先生の気持ち、そして生徒たちも素顔を見せあって卒業してほしい。こんな時に人生の一番いい時期の青春を過ごしたことは、本当に気の毒でなりません。この歌は佐佐木幸綱氏も選んでいます。二首目、大地震があったトルコと、1年以上戦争が続いているウクライナ。同じ瓦礫でも、こんなに違いがあるなんて。同じ命なのにとつらいです。
佐佐木幸綱選
いつまでも上司のごとく命ずるな妻になじられ後ずさりする 東京都 松本秀男
恐妻家なのでしょうか、ちょっと気の毒なご主人です。がんばれーと言いたくなりますね。
高野公彦選
戦争を知らぬ世代の世となりて「はだしのゲン」の削除を憂う 広島市 吉川徳子
十二年前のわれらに重なりぬトルコ、シリアも戦禍の民も 久慈市 三船武子
広島市が小学校向けの平和教材から外されたことがニュースになりました。原爆投下の広島がなぜ?と、日本中がざわざわしたのではないでしょうか。戦争は風化させてはいけないのです。当時の生の声をもとに作られた「はだしのゲン」には、平和を訴える力があるんです。こんなことでいいのか・・。今回の歌壇ではこの点について多く読まれていました。二首目、3.11から12年です。でも、復興したと言えるのでしょうか?トルコやシリアも大地震で瓦礫となってしまいました。地球で生きている限り、地震から逃げることはできない。でも、戦争は避けられたはずです。とても悔しい。
永田和宏選
教材の「はだしのゲン」を差し替える広島なのに広島なのに 観音寺市 篠原俊則
この歌もはだしのゲンがテーマです。くりかえしの「広島なのに」がとても心に響きますね。私は篠原さんの短歌がとても好きです。