『コロナが変える米軍の姿 日経新聞のDeep Insightから』
ーバランス・オブ・パワーのタイトロープの危機状態は変わらずー
『今までは』ですが、バランス・オブ・パワーの主力は、❶核兵器搭載の空母打撃群 (Carrier Strike Group)・❷戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBM)・❸大陸間弾道ミサイル(ICBM)です。
空母ロナルド・レーガン
ウキペディアから引用
アメリカ海軍の航空母艦。 ニミッツ級航空母艦の9番間である。艦名は第40代アメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガンに因み、存命中の人名がつけられた3番目の空母でもあった。アメリカの空母で唯一海外を母港としている。
ロナルド・レーガンは第5空母打撃群 (Carrier Strike Group 5, CSG-5) の旗艦であり、第5空母航空団 (Carrier Air Wing 5, CVW-5) を搭載する。打撃群は第15駆逐戦隊 (Destroyer Squadron 15, DESRON-15) を含む。
オハイオ戦略ミサイル原子力潜水艦
ウキペディアから引用
オハイオ級の任務は、海中に潜み、アメリカに対して核ミサイルが発射された場合、または発射される恐れがある場合に相手国に核ミサイルを発射することである。
ワクチンの無い状態で、新型コロナウイルス感染症から人間を守る最も平凡でも有効な対策は『三密回避』です。 以前に、表題の記事『コロナが変える米軍の姿』が20200523の日経新聞オピニオンDeep Insightに載っていました。 当初は、この新型コロナウイルス感染症が、もう少し早く終焉の兆しを見せるか、またはワクチン開発の目途がもう少し早くつくかと、「たか」を括っていた面がありました。
記事からの抜粋・引用です。
新型コロナウイルスの感染を防ぐには、三密回避が鉄則だが、どうしてもこのルールを守れない集団が、これが各国の海軍です。 軍艦、空母も潜水艦はいわば『三密』のかたまりです。 体が触れ合うくらい狭い密室で長い月日、衣食を共にします。 当然、感染が蔓延するリスクは高くなります。
3月以降、空母11隻のうち、セオドア・ルーズベルトなど4隻で感染が広がり、任務の中断を強いられた。 その後、3隻は少しずつ任務再開に向かったが、ルーズベルトは5月末まで、グアムで乗員の隔離や消毒に追われた。
米軍が超大国でいられる大きな理由は、最強の海軍をもち、世界の海を支配しているからです。 その主力は1隻あたり数十機の艦載機を抱え、どこでも即座に猛攻撃を仕掛けられる空母です。
ところが、他国を奮いあがらせる空母があっさり新型コロナに麻痺させられてしまいました。 最も『三密』から逃げられない点では、中国海軍も同じです。
中国は、感染の実態を明かしていないが、元自衛隊幹部は『感染が出てない、はずはない』とみている。
パンデミックの脅威は今後、アジア太平洋を巡る米中の海軍競争をどう左右するか、おそらく、米側の受ける方が大きい。 米海軍はこうした課題を精査して、パンデミックに耐えられる姿に進化していこうとするに違いない。
米国防省内の議論から判断して、向こう10~20年以内に速まりそうなのは次のような変化です。
- 空母を軸とした重厚長大型から、小さな艦船からなる分散型の艦隊の比重を高めていく。
- ドローンや無人水上艦、無人潜水艦の導入が速まるほか、AIの活用が進む。
- 演習ではシミュレーター装置などを使った仮想訓練も積極的に取り入れていく。
こうした動きは、コロナ前から出ていた。 中国のミサイルや潜水艦の能力が高まるなか、図体が大きい空母は格好の標的なり、沈められてしまう危険が高まっているからです。
米国海軍は2034年までに総艦数を289隻から355隻にもっていく計画だ。 当初は空母や潜水艦をふやす方向だったが、ここにきて無人・小型化の流れを反映した内容に見直す動きも出てきています。
どこまで、一気に変革が進むかは、余談は許されない。 職を奪われかねないパイロットや艦船の操縦士、軍需産業も反対に回るに違いない。
無人・小型化などの流れは、後ずさりすることはない。 空母を中心とする大型艦隊がミサイルだけでなく、パンデミックにも脆弱なことを、米軍首脳は嫌というほど思い知らされたからです。
艦船は、感染症には一番厳しい密閉空間です。 特に原潜の数十日間潜航を続ける密閉空間は、新型コロナウイルス感染症なしでも、ストレスを鬱積させる極限状態にあります。 この極限状態そのもそを危機とする見方もあります。 対中国を考えれば、東アジアに展開する『戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBM)』が、最大の切り札は変わりません。
アジア太平洋で、米国・日本・韓国・オーストラリアが対中国とのバランス・オブ・パワーを考えると、ますます困難な事態ばかりが思い浮かびます。 この事態の解決をどんどん難しくしている人間の『業』の深さをしみじみと考えさせられます。
(20201130纏め #254)
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